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第十四話 8

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「綸、その百貨店は切ることにする。他に是非と言って来ているところが沢山あるから、次に使う百貨店を綸が決めればいい。一緒に行くぞ」
「そう…わかった」
「今日はもう用が済んだのか?」
「まだ」
「なら、今から次に行く」
「お父さん、待って!私もうこのあと約束があるの。だから今度お願いします」

 電話中にバタバタと館の方が走り寄って来ていたが、私は高須のやり方に従うのみだ。

「伊東さん小笹さん、今日はこのまま田嶋さんのところへお願いします」
「「はい」」

 館の外商の方々であろう数人が

「お待ち下さい、高須様」
「高須様、誠に申し訳ございません」

 口々に謝罪や何かを口にする。いやいや、もうお父さんの決定だし…と思っていると

「高須?」

 マネージャーが腕を振りながら誰にともなく聞く。

「橋本っ!何突っ立ってる!?こちら高須の若様のご婚約者だぞ」
「何てことを仕出かしてくれたんだ、橋本っ!」

 皆がマネージャーに向いた時に歩き出すと、また囲まれる。

「高須の父の決めたことです。すみませんが前をあけて頂けますか?」



 そして……

 今は田嶋さんのお店のカウンターにリッキーと並んで座り、午前中の報告をしながら海鮮丼を待つ。

「それはその百貨店、今頃全国の全店舗が激震中だね」

 とリッキーが私と同じ色の髪を揺らして笑う。田嶋さんも笑いながら

「で、他の百貨店は次うちか?どこだ?高須が来るぞ、ってソワソワしてるな」
「おかげで凛ちゃんのもの買いそびれちゃった。でもね」

 私はバッグから包みを取り出し

「リッキーの誕生日プレゼントは準備していたから大丈夫。1日早いけど…お誕生日おめでとう、リッキー」
「ありがとう、綸ちゃん。感激」
「ふふっ、まだ見てないのに感激なの?開けてみて」

 リッキーはおしぼりでもう一度手を拭き、包みを開けながら

「このブランド、正宗たちが行くところだろ?」
「うん。でもプレゼントは私が一人で選んで買ったよ。あの刃物騒動の日だよ」

 騒ぎは国府にも伝わっており、あの翌日にリッキーと一美さんから電話をもらった。

「ああ…無事で良かったよ、ほんと……」

 彼は私の頭をポンポンと撫でてから、そっと箱を開けた。

「………」

 何も言わず、じっと箱の中を見つめる彼に好みでなかったかなと心配になる。

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