彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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大切な枝葉たち 13

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「北さんからで、女が黒に近いと。森川兄弟が盗聴器チェックに向かったそうです。確認次第、つまみ出して来ます」
「ん」

野沢さんも立ち上がり3人が出て行くと

「北さんは分かるな、玖未?」

悠仁が音色を変えずに聞いてくる。状況を説明してくれるのだろうと

「ん」

としっかり頷いた。北さんはお父さんのところの情報さんだと聞いている。何度か会ったけれど、基本的にはずっと一人でいるのが好きな人らしくあまり部屋から出て来ない。

「親父たちはおそらく…北さんと電話を繋ぎながら女の名前などを聞き出していた。それを北さんと森川兄弟が即調べて何か怪しい女だったってことだろうな。女の所持品に盗聴器がないかを調べてつまみ出す、ってことだ」

悠仁の説明を聞く私の視界に、大きな大西さんが珈琲カップを集めてくれる姿が入る。悠仁も大西さんもいつもと同じで慌てている様子はないから大丈夫だ。

「悠仁、今からここで仕事?」
「ん…会社の仕事のつもりだったが、親父の話を聞いてからだな」
「若、私に出来ることは表、裏に関係なく回して下さい」

大西さんはそう言って空いたカップでいっぱいのトレイを持ってキッチンへ行く。

「悠仁、大丈夫?」
「大丈夫だ…親父もな。表も裏も大きくなれば利用しようと考える者は出てくる。それはうちだけでなくどこも同じだ」
「ん」
「だから厄介者の登場くらいで驚きもしなけりゃ、慌てることもねぇよ」

そう言った彼はチュッと私に口づけ

「飯、作ってくれるのか?それとも、何か買って来てくれたか?」

と頬を撫でた。

「…今から和風ロールキャベツ作る…もうカボチャ煮は出来てる」
「和風ロールキャベツか。初めてだな」
「お腹減らしておいてね」
「ん」

チュッともう一度口づけた悠仁は広くなったテーブルにパソコンを開ける。私も大西さんのいるキッチンへ行き、レンジで木綿豆腐の水切りを始めるとお父さんと太郎、次郎が戻って来た。

「暑い…」

そう吐き出しながら悠仁のいるリビングのソファーに座ったお父さんは、太郎たちにも座るように言っている。私たちがすっかり休憩している間ずっとエアコンのない玄関にいたんだもの…暑いよね。

冷蔵庫から麦茶を出して4つのグラスに入れて持って行くと

「青えんどうの甘納豆、食べる?買って来たよ?」

とお父さんの好きなお菓子を言ってみる。

「もらう。玖未のおかげで一気に疲れが取れるな」
「実は…2袋買っておいたよ?」
「ははっ、ますますいい」

私はお父さんが明るく笑うのを聞きながらお皿に甘納豆を出して、こっそり2粒つまみ食いをした。うん…何もかも大丈夫。
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