彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

感情、知性の複合体 8

レジではかごごとに会計をお願いして、悠仁から預かっているお金と、灰谷兄妹から預かっているお金からそれぞれ支払いを済ませる。

ちなみに、灰谷兄妹から預かっているお金は奈保先生セレクトの緑のがま口財布に入っている。猫が一面に描かれた手のひらサイズのがま口に1万円札を折り畳んで入れてくれているので、お釣とレシートをそこに入れてお返しすると、また1万円が入れてある…というシステムだ。

買い物を終えて自分たち用の荷物を片付けたあと、灰谷兄妹の部屋へ降りる。たまに不規則な勤務をしている二人だが、私に鍵も預け非常勤が決まると私に連絡を入れてくれる。

今日は二人とも夜勤明けなので短く仮眠中で、もうすぐ起きてお昼を食べるはず…と…

「ただいまぁ、最悪、今だよ、今…」
「…今…おかえり？」
「そうなの玖未ちゃぁん。激務よ…もしかして買い物行ってくれた？」

コクン…

「シャワーしてくる間に何か作ってくれる？患者より先に私の命が危ないわ」

コクン、コクン…ドタドタと体を引きずるように音を立ててバスルームに消えた奈保先生と入れ替わるように

「相変わらず、うるさい妹だな…おはようございます、玖未さん」

と灰谷兄先生も起きてきた。まだご飯を炊いてもないから、まいたけとベーコンで和風パスタを作ることにする。サラダを作る時間もなさそうなので

「すぐ戻ります」

と上に帰って、食用ハーブのスペアミントを買って来てたのを少し摘まんで下に戻ると、プレーンヨーグルトにハチミツを混ぜ、カットしたイチゴをたっぷりと、ミントの葉を乗せて簡易デザートを作った。これは私たちの明日の朝食にも登場予定だ。

「もうね、このニンニクの匂いだけで生き返るわ。いただきます」

奈保先生は髪にタオルを巻いたまま、お箸でパスタを頬張る。

「うっまっ…リハビリでこれって雇う価値ありだわ、玖未ちゃん」
「ほんと、ほんと。美味しい。店の気取ったパスタより断然こっちが僕の好みです」

すごく簡単な物だけど、二人はよほど酷い食生活をしていたらしい。気取ったパスタか…今夜はそういうものが出てくるのかな？