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感情、知性の複合体 7
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大西さんと津川さんは運転と助手席とをコロコロと日替わりのように交代する。今日は津川さんが運転するようで車を少し出して待っていてくれた。
「お願いします」
「今日は食事に出る予定も聞いてるがスーパーに行くのか?」
車に乗り込むと、すぐにゆっくりと発進しながら津川さんが私に聞く。
「今夜の夕食はいらないけど他はいるし、奈保先生のところの仕事も引き受けたから…まだリハビリで仕事ではないけど」
「新しいことを始めるにはちょうどいい春だな」
津川さんから爽やかな言葉が聞けるのは珍しい…春か。
「…ぼんやりした空だ…」
黒い窓のせいではないだろう。春だと認識して見た窓の外は明るいのにぼんやりして見える。
「春霞ですね」
「…春霞…霞んでいるってこと?」
「その通りです。春の空が白っぽく霞んで見える理由は、気温が上がり水蒸気を含む空気が上昇気流により上空へ昇るためです。水蒸気の他にも花粉や黄砂などを含み舞い上がる季節ですから、より霞んで見えることがありますね」
大西さんはいつも丁寧に分かりやすく物事を教えてくれる。この二人とポツポツ喋ったり、一緒に歩くことにも慣れてきたな。悠仁が言ったように‘須藤の人間’になってきているのかな?
今日のこのスーパーは私の言う‘大きい方’でチェーン店展開している大型スーパーだ。もうひとつの‘小さい方’は売り場面積が小さな‘ミニスーパー’という区分になると大西さんが教えてくれた。
大型スーパーが食品だけでなくドラッグストア並みに何でも扱っているのに対して、ミニスーパーは食品、飲料、調味料の定番のみ扱っている。昔は魚屋さんだったらしいが、それだけでは苦しくなって地域密着のミニスーパーに変わったと聞いた。須藤組では常備野菜などはミニスーパーにお願いしておくのだとも聞いたのだけれど、私が一度だけ行ってみた時には魚がとてもきれいで、しかも切り身にしてないものも多い。
実は私、魚をおろすのが好きだ。だから、包丁が完全に握れると確かめたら…多分もう大丈夫だと思うけど…来週にでも出刃包丁と刺身包丁を買いたいと密かに考えている。
でも今日は大きい方でカートの上下にかごを乗せ、私たち用と灰谷兄妹用に分けて食材を入れる。魚以外は圧倒的に選べる種類が多い。
大西さんと津川さんは私の前と後ろを付かず離れずぶらぶらしている。べったり張り付いて私の買い物を手伝ったりはしないのが楽だ。二人が防犯カメラにどう映っているのだろう、とは少し思うけれど。
「お願いします」
「今日は食事に出る予定も聞いてるがスーパーに行くのか?」
車に乗り込むと、すぐにゆっくりと発進しながら津川さんが私に聞く。
「今夜の夕食はいらないけど他はいるし、奈保先生のところの仕事も引き受けたから…まだリハビリで仕事ではないけど」
「新しいことを始めるにはちょうどいい春だな」
津川さんから爽やかな言葉が聞けるのは珍しい…春か。
「…ぼんやりした空だ…」
黒い窓のせいではないだろう。春だと認識して見た窓の外は明るいのにぼんやりして見える。
「春霞ですね」
「…春霞…霞んでいるってこと?」
「その通りです。春の空が白っぽく霞んで見える理由は、気温が上がり水蒸気を含む空気が上昇気流により上空へ昇るためです。水蒸気の他にも花粉や黄砂などを含み舞い上がる季節ですから、より霞んで見えることがありますね」
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でも今日は大きい方でカートの上下にかごを乗せ、私たち用と灰谷兄妹用に分けて食材を入れる。魚以外は圧倒的に選べる種類が多い。
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