111 / 284
現実と事実と真実と 11
しおりを挟む
「そりゃ、お前らの聞きようが悪いんじゃねぇか?もっと言わせるようにすればいいだろ?」
「精進してまいります」
何だか雲行きが怪しい…子どもの振る舞いというものを期待されているようだ。そっと左手を最中に伸ばし、一番に取っちゃえ…
「…いただきます」
私が取ると皆の手も伸びる。正解だったようだ。
「美味し…」
スーパーやコンビニの日持ちする最中とは全然違う…つぶあんがふわふわだ。隣の悠仁を見ると私の頭を撫でるだけで、彼は食べない。おはぎの時に聞いた。
「悠仁、あんを食べないよね。他にもあるって言ってたよ?いる?」
「いらねぇ…さっきの甘い名前の列挙で胸焼け気味だ」
「玖未、悠仁は悠仁、古原は太郎、桝井は次郎だろ?俺は、お父さんかパパかのどちらかで頼む」
さすが親分、無茶ぶりだよ…初対面でお父さんかパパと呼べ、と。
「親父、パパは無しだ」
「何故?」
「妙なニュアンスを含んで聞こえる場合がある」
「それじゃ、お父さんになるだろ」
「ダメなのか?」
「選択肢がないのはいけねぇな。玖未が決めるってのが大事なんだ」
「それはそうだな」
「お父さんか…ダディ…いっそ仁太でもいいか…」
真剣な親分の顔は、周りがあきれ果てていることに気づいていない。
「玖未、決めたか?」
「……最初の…」
「いいぞ、お父さんだな?何年ぶりに呼ばれる‘お父さん’だ…20年くらいか?いや、30年の方が近いか」
「あれもまだはっきり‘お父さん’とは言えてませんでしたから、玖未さんが初めてですね」
「そうだな、言えてなかった。玖未は悠聖のことを聞いてるか?」
コクン…悠仁から聞いた、ふたつ年下の弟のこと。
その悠聖くんは気管支喘息がひどかったらしい。悠仁のお母さんは悠聖くんを空気のきれいな田舎で育てると言い連れて出て行ったまま、そこから‘体の弱い子を組のような物騒なところで育てられない’と離婚を申し出て悠聖くんの親権だけを主張した。
「以前は都会に多く空気のきれいな田舎は少ないといわれていた子どもの喘息も有病率の地域差がなくなってきていたことは分かっていたんだが、ここが特殊であることは確かだからな。無理に置いておく訳にはいかない」
親分はそう言うと
「玖未が無理強いされたのでなければ、マンションだけでなくここも玖未の家だ。大家族だがよろしく頼む」
膝に手を置きゆっくりと頭を下げた。
「精進してまいります」
何だか雲行きが怪しい…子どもの振る舞いというものを期待されているようだ。そっと左手を最中に伸ばし、一番に取っちゃえ…
「…いただきます」
私が取ると皆の手も伸びる。正解だったようだ。
「美味し…」
スーパーやコンビニの日持ちする最中とは全然違う…つぶあんがふわふわだ。隣の悠仁を見ると私の頭を撫でるだけで、彼は食べない。おはぎの時に聞いた。
「悠仁、あんを食べないよね。他にもあるって言ってたよ?いる?」
「いらねぇ…さっきの甘い名前の列挙で胸焼け気味だ」
「玖未、悠仁は悠仁、古原は太郎、桝井は次郎だろ?俺は、お父さんかパパかのどちらかで頼む」
さすが親分、無茶ぶりだよ…初対面でお父さんかパパと呼べ、と。
「親父、パパは無しだ」
「何故?」
「妙なニュアンスを含んで聞こえる場合がある」
「それじゃ、お父さんになるだろ」
「ダメなのか?」
「選択肢がないのはいけねぇな。玖未が決めるってのが大事なんだ」
「それはそうだな」
「お父さんか…ダディ…いっそ仁太でもいいか…」
真剣な親分の顔は、周りがあきれ果てていることに気づいていない。
「玖未、決めたか?」
「……最初の…」
「いいぞ、お父さんだな?何年ぶりに呼ばれる‘お父さん’だ…20年くらいか?いや、30年の方が近いか」
「あれもまだはっきり‘お父さん’とは言えてませんでしたから、玖未さんが初めてですね」
「そうだな、言えてなかった。玖未は悠聖のことを聞いてるか?」
コクン…悠仁から聞いた、ふたつ年下の弟のこと。
その悠聖くんは気管支喘息がひどかったらしい。悠仁のお母さんは悠聖くんを空気のきれいな田舎で育てると言い連れて出て行ったまま、そこから‘体の弱い子を組のような物騒なところで育てられない’と離婚を申し出て悠聖くんの親権だけを主張した。
「以前は都会に多く空気のきれいな田舎は少ないといわれていた子どもの喘息も有病率の地域差がなくなってきていたことは分かっていたんだが、ここが特殊であることは確かだからな。無理に置いておく訳にはいかない」
親分はそう言うと
「玖未が無理強いされたのでなければ、マンションだけでなくここも玖未の家だ。大家族だがよろしく頼む」
膝に手を置きゆっくりと頭を下げた。
91
お気に入りに追加
257
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる