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欲は大罪なのか 12
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灰谷兄妹はいつもと変わりなくソファーの前に珈琲とお菓子、今日はラスクを並べてくれる。私の様子が変だということに気づいて悠仁に電話したり‘逮捕’なんて言葉も聞こえていたはずなのに全くいつもと変わりない。
「ラスク、3種類あるねぇ」
「こういう場合、必ずと言っていいほどプレーンが美味しいですけど…玖未さんも全種類どうぞ」
「それはノルマよ」
あまりの通常運転に
「ぁの…」
「「うん?」」
「逮捕とか…って普通?」
とおかしな質問をしてしまう。
気持ちのほんの一部をこの部屋にあるピンセットで抜き取ったような質問。
「日常的ではないけど須藤の誰かとか、須藤の店の事件でなければ‘悪いことをした人が捕まった’という事実に過ぎないですね」
「悪いことの被害者が必ずいるわけだけれど、私たちが治療で向き合う人の中には…あ、これは須藤に限らず病院でもね、悲惨な事故に合った人やむごたらしい事件に合った人っているのよね」
「この前救急に運ばれて来た人の場合は、90歳の独り暮らしの家に入った強盗が、その老人をぐるぐるキツく縛り上げてあちこち骨折させているんですよ。金を盗るだけ、せいぜいすぐに通報されないように手を縛るくらいでいいと思いませんか?そんなに抵抗出来る人でないのは明らかなのに…あの年齢で複数箇所の骨折は回復する過程で他が弱る」
「死ぬまで不自由なもどかしい思いで生きなきゃなんないのよ。殺してくれた方がマシだと思っていると思うよ?24時間365日すごい苦痛だもの。だから逮捕されて裁かれる人間はいて当の然。玖未ちゃんが何らかのダメージを受けてるのは分かっているけど、若が帰ってくるなら私たちはいつも通りの時間を一緒に共有するだけだよ。明日から毎日の治療はなくなるけど、お茶しに来てくれていいからね」
ああ…優しいってこういうことなんだ‘どうしたの?’‘大丈夫?’っていうのではない優しさ。
「ラスク、3種類あるねぇ」
「こういう場合、必ずと言っていいほどプレーンが美味しいですけど…玖未さんも全種類どうぞ」
「それはノルマよ」
あまりの通常運転に
「ぁの…」
「「うん?」」
「逮捕とか…って普通?」
とおかしな質問をしてしまう。
気持ちのほんの一部をこの部屋にあるピンセットで抜き取ったような質問。
「日常的ではないけど須藤の誰かとか、須藤の店の事件でなければ‘悪いことをした人が捕まった’という事実に過ぎないですね」
「悪いことの被害者が必ずいるわけだけれど、私たちが治療で向き合う人の中には…あ、これは須藤に限らず病院でもね、悲惨な事故に合った人やむごたらしい事件に合った人っているのよね」
「この前救急に運ばれて来た人の場合は、90歳の独り暮らしの家に入った強盗が、その老人をぐるぐるキツく縛り上げてあちこち骨折させているんですよ。金を盗るだけ、せいぜいすぐに通報されないように手を縛るくらいでいいと思いませんか?そんなに抵抗出来る人でないのは明らかなのに…あの年齢で複数箇所の骨折は回復する過程で他が弱る」
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ああ…優しいってこういうことなんだ‘どうしたの?’‘大丈夫?’っていうのではない優しさ。
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