彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

成長期と成長痛 2

「不可能…」
「出来る」
「…？」
「人は緊張していると眠くなることはない」

私の夜だね…

「気持ちが安定せず身体に力が入っている状態で眠くなることはよっぽどでない限りない」

私の夜だね…

「安心感、リラックス、力が抜けるという状態が、眠気を引き起こす要因であるってことはキスにはこの3つの要因を満たす力がある」

学者っぽいね…イケメンヤクザ社長だけど…そう思いながら、すでに眠気を感じる。

「腹いっぱい食って満腹感があると眠くなるように心が満たされると眠くなるものだ。キスをすると幸せな気分でいっぱいになることも眠くなる要因。エロいキスは…別だがな」

うん…悠仁…もっと声を聞かせて…

「キスをすることで脳内に分泌されるホルモンに安心感を与え心身をリラックスさせる」

もうね…悠仁の声と背中を擦る手で、そんな感じ。

「…夜は嫌い…長く…て…永遠なの…」
「ん」
「……寒いの…」
「ん」
「…帰りたいのに…」

帰れないの…目を閉じたまま発した言葉に詰まったとき、悠仁の手が私の頭を抱えた。

「も…何もぃらない…ゆぅ…じんだけで…ぃい…」

私は、自分が意識の遠のく中で呟き一筋の涙を流したことを知らない。



「悠仁」
「ん？」
「…」
「ん？キス？」
「…抱っこ」
「ん」
「ぎゅ…」
「ん」
「…おかしい」
「何が？」
「ヘン」
「ん？」
「なんか…自分が…自分の気持ちがヘン」
「ヘンじゃないだろ？俺のことが好きで、引っ付きたくなって、甘えたくなって当たり前の変化」
「…私…甘えたいの？」
「玖未は急成長してるからな」
「これって…成長？」
「成長だ」

まだ暗い早朝に起きてしまったのだが…何だか寝る前と気分が違うようだ。ぴとっと悠仁の胸に頬をつけてボソボソと話をしながら考える。

「考えることはないぞ、玖未。今みたいにあれこれ俺に言ってろ。それだけで上手に生きていける」
「それって…どういうことだろう？」
「俺と玖未はずっと離れずに生きて行くってことだ」
「…私…悠仁の手が好きって言った」
「ん」
「声も…言葉も好き…体温も安心する」
「それは、もっと安心させてやらないとな…」

ガサッと私の上に覆い被さった彼は

「治るまで待てねぇ…いいか？」

私の頬を大好きな手で包むと、甘い色のフェロモンというのが目に見えるような音色で聞く。

コクン…

「悠仁なら…大丈夫…いい」