48 / 284
仮定の真否 9
しおりを挟む
「今日、玖未が俺たちに話をしてくれたことで日野とは切れる。切る。今は世話してくれるだけ、というのも癖の類いだ。‘先生、先生’と頼られる自分が好きで酔ってる変態」
「…当たってるかも…ぁ…途中でごめんなさい…」
「いいぞ。当たってると思うか?」
一瞬また固まったのは、話を遮ることを怒られたことがこれまでにあったのだろう。
言葉が余計に減ってしまう原因だ。
「…悠仁の話…聞く」
「ん?会話すればいい、嬉しいだけだ。どうして当たっていると思った?」
「…うん…先生、先生って寄って来る子を贔屓するタイプなの…それは小さい子から、男の子も女の子も…」
「学校でもいる、いる。先生って結構そのタイプ多いよな」
右京も玖未の言葉を強く肯定して背中を押す。
「今もたまに電話があって‘困ってないか?’って言われて‘先生、いつもありがとう’って言うと‘大事な子たちだからね。次もちゃんと紹介するから’って言われる」
「そうか。それを聞いて確信した…最低な野郎だな。玖未は世話してくれるだけ、と自分を納得させて前を向いて生きてきたんだ。その気持ちを否定するつもりは全くない。そこは分かるか?玖未は精一杯、頑張って、頑張って、頑張り過ぎるほど頑張ってきた」
俺がそう言うと彼女の瞳が揺れる。
「だが、今この瞬間それは終わりだ。そいつと関わる度に嫌な記憶とか、他の子どもへの思いが沸き上がるだろ?だからもう切れ。そいつの紹介した仕事も部屋も自分から捨ててやれ。ゲンさんからそいつに連絡が入れば玖未に連絡してくるだろう。そこで終わりだ。過去を捨てるぞ、玖未」
揺れる瞳は潤むだけで水滴を作り出すことはなかった…出来ないのだろう。
「…分かるけど…」
「ん?」
「捨て…る…という…意味は分かるけど…じゃあ…現在とか未来は…?」
「優秀な質問です、玖未さん」
「野沢の言う通り…優秀だな、玖未」
涙を流せない目尻を親指でなぞってから不思議そうな顔に答えてやる。
「流れに身を任せ人任せにすれば楽だが、玖未は自分の位置と方向をちゃんと把握しようとしてる。そこが優秀で尊敬できる大人だ。しっかり自分で歩いてきた証だな…だから凛と美しい」
玖未はまだ不思議そうな顔で、俺の言うことを理解出来たのは野沢と右京だけのようだったがかまわない。
何度でも伝えるから。
「…当たってるかも…ぁ…途中でごめんなさい…」
「いいぞ。当たってると思うか?」
一瞬また固まったのは、話を遮ることを怒られたことがこれまでにあったのだろう。
言葉が余計に減ってしまう原因だ。
「…悠仁の話…聞く」
「ん?会話すればいい、嬉しいだけだ。どうして当たっていると思った?」
「…うん…先生、先生って寄って来る子を贔屓するタイプなの…それは小さい子から、男の子も女の子も…」
「学校でもいる、いる。先生って結構そのタイプ多いよな」
右京も玖未の言葉を強く肯定して背中を押す。
「今もたまに電話があって‘困ってないか?’って言われて‘先生、いつもありがとう’って言うと‘大事な子たちだからね。次もちゃんと紹介するから’って言われる」
「そうか。それを聞いて確信した…最低な野郎だな。玖未は世話してくれるだけ、と自分を納得させて前を向いて生きてきたんだ。その気持ちを否定するつもりは全くない。そこは分かるか?玖未は精一杯、頑張って、頑張って、頑張り過ぎるほど頑張ってきた」
俺がそう言うと彼女の瞳が揺れる。
「だが、今この瞬間それは終わりだ。そいつと関わる度に嫌な記憶とか、他の子どもへの思いが沸き上がるだろ?だからもう切れ。そいつの紹介した仕事も部屋も自分から捨ててやれ。ゲンさんからそいつに連絡が入れば玖未に連絡してくるだろう。そこで終わりだ。過去を捨てるぞ、玖未」
揺れる瞳は潤むだけで水滴を作り出すことはなかった…出来ないのだろう。
「…分かるけど…」
「ん?」
「捨て…る…という…意味は分かるけど…じゃあ…現在とか未来は…?」
「優秀な質問です、玖未さん」
「野沢の言う通り…優秀だな、玖未」
涙を流せない目尻を親指でなぞってから不思議そうな顔に答えてやる。
「流れに身を任せ人任せにすれば楽だが、玖未は自分の位置と方向をちゃんと把握しようとしてる。そこが優秀で尊敬できる大人だ。しっかり自分で歩いてきた証だな…だから凛と美しい」
玖未はまだ不思議そうな顔で、俺の言うことを理解出来たのは野沢と右京だけのようだったがかまわない。
何度でも伝えるから。
116
あなたにおすすめの小説
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる