8 / 8
第8話 熱情
しおりを挟む
「……アーヴィンさん……」
「キャシー……キャシー……!」
アーヴィンが欲をキャロライナにぶつける。
キャロライナの蜜壺をまさぐり、そのぬめりを己自身に擦り付け、キャロライナの中にねじ込んだ。
キャロライナは初めての痛みに、涙を流しながら、ずっと渇望していたものが満たされていくのを感じた。
キャロライナの中でアーヴィンの昂ぶりはより一層熱を持つ。その熱にキャロライナも浮かされた。
手探りで行われるそれはとても優しくて、キャロライナはすべてをアーヴィンに任せられた。
キャロライナにももうわからなかった。
自分は誰だろう。アーヴィンが抱いている自分はキャロライナなのだろうか、キャシーなのだろうか。
「……愛しています」
ただ小さくそう呟いた。そうすることしかできぬまま、キャロライナはすべてをアーヴィンに捧げた。
翌朝、キャロライナはアーヴィンの腕の中で目覚めた。
その気配でアーヴィンも目覚める。
「あっ、ああっ!」
アーヴィンは狼狽すると、ベッドの上で不格好ながら土下座をした。
「す、すまない。キャシーさん……看護師という逆らいづらい立場のあなたに……!」
「どうぞ、顔をお上げになって」
キャロライナはそうアーヴィンに声をかけると、唇を奪った。
自分は気にしていない。表情が見えない彼にそう伝えたかった。
「……姫様?」
いつかと同じ感触に、アーヴィンは確信したようにつぶやいた。
「あっ……」
キャロライナは口をふさいだ。しかしもう遅かった。
「……キャロライナ姫様なのですか……? キャシーが? キャロライナ姫? 本当に?」
もはやごまかしきれなかった。
「……は、はい」
「……お、俺はなんということを」
アーヴィンは震えていた。
一国の姫君に欲望をぶつけたのだ。
それはもう大罪に近い。
「いかなる処分でもお受けします。これまで俺を支えてくれたキャシーへの狼藉。姫様への狼藉。どちらもどうか裁いてください」
「わかりました」
キャロライナはアーヴィンに見えていないとしりながらうなずいた。
「……裁きを言い渡します。騎士アーヴィン。あなたは……体を治すことに専念なさい。そして……そして……わ、私と契ってください。一夜限りではなく……永久に共に」
「そ、それは……」
「兄に根回しをしてもらいます。護国の英雄なら目が見えないくらい問題はありません。しかるべき貴族の家に養子として入ってもらいます。そして正式に私の夫になるのです。……私があなたに言い渡せる裁きはそれだけです。それが不服なら、兄にでも父にでも裁きを求めてください」
「……わかりました。その裁き、謹んでお受けします」
アーヴィンは頭を下げた。
それからさらに一年が経った。
キャロライナは東部にある王領の飛び地を、夫と統治することを条件に分け与えられた。
その夫アーヴィンは少しずつ、ぼんやりと影が見えるようになってきた目で、その土地を眺めていた。
「いやあ、まさかキャシーさんがお姫様だったなんて……」
マーサがしみじみとつぶやく。
王宮の侍女に混じって彼女もキャロライナとアーヴィンについてきていた。
「……お幸せですか?」
「はい」
キャロライナは穏やかに微笑むと、愛しい夫の元に駆けていった。
◇◇◇
新作「侍従は老主人の新妻に愛を捧ぐ」を始めました。よろしければ、そちらもご覧になってください。
「キャシー……キャシー……!」
アーヴィンが欲をキャロライナにぶつける。
キャロライナの蜜壺をまさぐり、そのぬめりを己自身に擦り付け、キャロライナの中にねじ込んだ。
キャロライナは初めての痛みに、涙を流しながら、ずっと渇望していたものが満たされていくのを感じた。
キャロライナの中でアーヴィンの昂ぶりはより一層熱を持つ。その熱にキャロライナも浮かされた。
手探りで行われるそれはとても優しくて、キャロライナはすべてをアーヴィンに任せられた。
キャロライナにももうわからなかった。
自分は誰だろう。アーヴィンが抱いている自分はキャロライナなのだろうか、キャシーなのだろうか。
「……愛しています」
ただ小さくそう呟いた。そうすることしかできぬまま、キャロライナはすべてをアーヴィンに捧げた。
翌朝、キャロライナはアーヴィンの腕の中で目覚めた。
その気配でアーヴィンも目覚める。
「あっ、ああっ!」
アーヴィンは狼狽すると、ベッドの上で不格好ながら土下座をした。
「す、すまない。キャシーさん……看護師という逆らいづらい立場のあなたに……!」
「どうぞ、顔をお上げになって」
キャロライナはそうアーヴィンに声をかけると、唇を奪った。
自分は気にしていない。表情が見えない彼にそう伝えたかった。
「……姫様?」
いつかと同じ感触に、アーヴィンは確信したようにつぶやいた。
「あっ……」
キャロライナは口をふさいだ。しかしもう遅かった。
「……キャロライナ姫様なのですか……? キャシーが? キャロライナ姫? 本当に?」
もはやごまかしきれなかった。
「……は、はい」
「……お、俺はなんということを」
アーヴィンは震えていた。
一国の姫君に欲望をぶつけたのだ。
それはもう大罪に近い。
「いかなる処分でもお受けします。これまで俺を支えてくれたキャシーへの狼藉。姫様への狼藉。どちらもどうか裁いてください」
「わかりました」
キャロライナはアーヴィンに見えていないとしりながらうなずいた。
「……裁きを言い渡します。騎士アーヴィン。あなたは……体を治すことに専念なさい。そして……そして……わ、私と契ってください。一夜限りではなく……永久に共に」
「そ、それは……」
「兄に根回しをしてもらいます。護国の英雄なら目が見えないくらい問題はありません。しかるべき貴族の家に養子として入ってもらいます。そして正式に私の夫になるのです。……私があなたに言い渡せる裁きはそれだけです。それが不服なら、兄にでも父にでも裁きを求めてください」
「……わかりました。その裁き、謹んでお受けします」
アーヴィンは頭を下げた。
それからさらに一年が経った。
キャロライナは東部にある王領の飛び地を、夫と統治することを条件に分け与えられた。
その夫アーヴィンは少しずつ、ぼんやりと影が見えるようになってきた目で、その土地を眺めていた。
「いやあ、まさかキャシーさんがお姫様だったなんて……」
マーサがしみじみとつぶやく。
王宮の侍女に混じって彼女もキャロライナとアーヴィンについてきていた。
「……お幸せですか?」
「はい」
キャロライナは穏やかに微笑むと、愛しい夫の元に駆けていった。
◇◇◇
新作「侍従は老主人の新妻に愛を捧ぐ」を始めました。よろしければ、そちらもご覧になってください。
0
お気に入りに追加
46
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。
当て馬令嬢からの転身
歪有 絵緖
恋愛
当て馬のように婚約破棄された令嬢、クラーラ。国内での幸せな結婚は絶望的だと思っていたら、父が見つけてきたのは獣人の国の貴族とのお見合いだった。そして出会ったヴィンツェンツは、見た目は大きな熊。けれど、クラーラはその声や見た目にきゅんときてしまう。
幸せを諦めようと思った令嬢が、国を出たことで幸せになれる話。
ムーンライトノベルズからの転載です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
婚約解消から5年、再び巡り会いました。
能登原あめ
恋愛
* R18、シリアスなお話です。センシティブな内容が含まれますので、苦手な方はご注意下さい。
私達は結婚するはずだった。
結婚を控えたあの夏、天災により領民が冬を越すのも難しくて――。
婚約を解消して、別々の相手と結婚することになった私達だけど、5年の月日を経て再び巡り合った。
* 話の都合上、お互いに別の人と結婚します。白い結婚ではないので苦手な方はご注意下さい(別の相手との詳細なRシーンはありません)
* 全11話予定
* Rシーンには※つけます。終盤です。
* コメント欄のネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
ローラ救済のパラレルのお話。↓
『愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる