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4章 言霊のカタチ
牛タン
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ゆらゆらと森の木漏れ日が心地よく体に染みわたる――気持ちのいい陽だまりにいるような感じがする。
なんだかポカポカと体の中が温かい気がして、目を開けると見慣れた天井が目に映り込む。
「家……?」
ゆっくりと瞬きをする。
頭がぼんやりとして、胸の上がまだ温かい。
手を胸の上に乗せると、ふわふわした小さな毛玉に触れる。
「あ、火車かぁ」
ゴロゴロと喉を鳴らす声に目を細めていたら、香ばしいお肉のような匂いが漂っていた。
台所の方で物音がしていて、キョウさんとダイさんの声がする。
「こんな薄い肉では一口で終わってしまうぞ?」
「もっと厚切りでいいのではないか?」
不満そうな声にクスリと笑って体を起こす。
火車を抱きかかえて台所へ向かうと、狼姿のキョウさんとダイさんが黒いエプロンをして料理をしているコゲツの足元にいた。
「おかえりなさい。コゲツ」
「ただいま、嫁殿。体の方は大丈夫ですか?」
「うん。わたし、学校の帰りだったんだけど……帰ったら、寝ちゃった?」
記憶がおぼろげで首を傾げると、コンロの火を消してコゲツがわたしの頬に手を伸ばして撫でる。
少しだけお肉の匂いがしているけど、優しい手の平の感触だ。
「嫁殿は帰る途中で倒れて、千佳が連れ帰ってきたのですよ。だから、すぐに帰りなさいと言ったでしょう?」
「そうなの? あんまり覚えてない」
「無玄の移動術に嫁殿の体が耐えられなかったのでしょう。それに、いつもは私が側にいますから邪気払いが効いていますが、大量の『何か』の邪気にあてられすぎですね」
「邪気祓い?」
「紫色のお守りとこの家には邪気祓いがしてあると、前に説明したはずですよ」
そういえばそんな事を言っていたかもしれない。
千佳が三灯天神として襲ってきた時に……
「あとはいつも渡している紫陽花のハンカチですね」
「何気にわたしってば、邪気祓いされまくっているような?」
「嫁殿を守ると言ったでしょう? 何人たりとも近寄らせないように用心していますからね」
「そこまでしないでも、大丈夫なのに」
ふぅ。とコゲツが溜め息を吐き、わたしのおでこを指でコツコツとノックするように叩いてくる。
「嫁殿。倒れた人間の言う台詞では無いですよ。まったく、自覚が無いのも困ったものですね」
「う~っ。だって、まさか無玄さんが罠を貼ってるなんて思わないし、それに……あっ!」
「どうしました?」
「桑谷先生はどうなったのか分からないんだけど、コゲツは聞いてる?」
「その話もありますが、先ずは着替えをして夕飯にしましょうか。お昼も食べていないようですからね」
火車を床に下ろして、制服を着替えに二階へと上がる。
スカートは後でアイロンでも書けた方が良さそうだ。まだ衣替えの時期ではないから上着が無くて良かった。
上着があったらアイロンもまたひと手間だからね。
シャツにハーフパンツに着替えて机の上を見れば、学校のカバンの上に花の形をしたメモが置いてあった。
『明日、アイスをおごるように!』
迷惑を掛けてしまったようだし、明日は学校帰りにアイス屋さんに寄り道して千佳に奢っておこう。
カバンからスマートフォンを取り出して、カバンを定位置のクローゼットに仕舞い込む。
机の上にスマートフォンを置いて充電器を差し込み、幾つか作った飾り紐を手にする。
「コゲツ、喜んでくれるかな?」
一番初めに作った物が一番の力作なのだけど、キョウさんとダイさんに念がこもりすぎていると言われたし、無難な物の方が良いだろうか?
でも、気持ちがこもっている物の方がプレゼントには良いと言うし……一番初めに作った物にしよう。と、思いつつも他の飾り紐もやはりポケットに入れていつでも交換できるようにしておく。
一階に下りると、居間のちゃぶ台にはご飯の準備が出来ていた。
薄切りのお肉やステーキのようなお肉に大根と人参のサラダにサンチョに小皿には刻み葱を炒めた物。
それとワカメのスープのようだ。
「本日はお土産の牛タンを中心にしてみましたよ。霜降り牛タンはステーキに、薄焼きの牛タンは刻み葱を巻いて食べか、塩だれ、レモンなどで好きに食べてください」
「うわぁ。牛タンってお家でも食べれるんだね。お肉屋さんでだけかと思ってたよ」
「そのうち焼肉屋にも一緒に行きましょうか」
「主! 我らも!」
「肉屋は美味い!」
「貴方達も連れていきますから、今日はこちらの食卓の牛タンで我慢してください」
レモン汁を浸けて薄切りの牛タンから食べてみると、お肉自体は硬いのに味わいが口いっぱいに広がる。
ステーキの霜降り牛タンなんて食べたことが無かったけれど、周りを焼いただけのミディアムレアで見た目はサーロインステーキのよう。
柔らかくて肉汁がじゅわっと出て食べ応えに満足できる一品。
薄切り牛タンに刻み葱を巻いて食べると、葱独特のシャキシャキと下味わいに塩コショウがお肉の甘味を引き出す。
「ん~っ。美味しい!」
「主! ご飯のおかわりを!」
「我も!」
「主を顎で使うんじゃありませんよ。まぁ、いいですけどね。嫁殿もいりますか?」
「わたしも~」
お茶碗をコゲツに手渡し、ワカメのスープで口の中をリセットする。
お昼ご飯を食べていなかったせいなのか、お土産の牛タンが美味しすぎるせいなのかモリモリとご飯が食べれてしまうのが恐ろしい。
明日は牛タンでビーフシチューを作るのだとかで、それも楽しみな感じで夕飯が終わった。
片付けをコゲツと一緒にして、お茶を淹れて居間であの後のことを説明してもらう。
「無玄の集めた情報で『何か』は、夏休みの間に生徒指導の教師が行き過ぎた指導をしたことで発生してしまったようですね。それを千佳が攻撃し怒らせてしまい、変質させてしまった……と、いうとこです」
「ううっ。わたし達が変質の原因なんだね。でも桑谷先生はいつもあんな感じだと思うんだけど」
「夏休みの学生は解放感から色々やらかしますからね。そんな時に生徒指導などされては面白くないでしょう? 普段ならば、拘束時間も授業等もありますから短い時間で済むところが、夏休みは拘束時間も長い……ときたら、怒りの増加は『何か』を大量発生させるほどの力を持ってしまっても仕方が無いのでしょう」
「そういうもの?」
コゲツが頷きお茶を口に含む。
わたしもお茶を飲んでふぅと息を吐く。
「それで、『何か』はどうなったの?」
「無玄が『何か』が満足するまで喋らせて浄化したようですが、それをずっと聞かされた教師は当分は大人しいままだと思いますよ」
「別に危害を加えたりとか、何かあったわけじゃないのかな?」
「ええ。我々はあくまで祓い屋であり、生身の人間をどうこうするのは仕事ではありませんからね。人ならざる者との交渉をしているようなものです」
「そっか。なら良かった」
当分大人しいということなら、文化祭中は桑谷先生が絡んでくることはないだろう。
あんな風にタール人間状態で心配したけど、なんともないなら良かった。
無玄さんが怖いと感じたのは、移動術のせいだろうし安心……かな?
「嫁殿はあんな教師でも心配するのですね」
「うーん。桑谷先生は嫌な先生だけど、人ならざる者にボコボコにされちゃうのは可哀想だもの」
「私は、あの教師を許してはいませんけどね」
「コゲツってば、意外と恨んじゃうタイプなの?」
へへっと笑って茶化してみると、コゲツは少しだけ首を横に動かす。
「私は嫁殿を泣かした輩に容赦はしませんよ」
「……~っ」
抑揚のない声で言われてしまっては、コゲツがわたしに対して真剣に言っているとしか受け止められない。
恥ずかしいような照れてしまうような気持ちに、絶賛コゲツに恋をしてしまっているわたしは降参する以外の選択肢が出ないようだ。
なんだかポカポカと体の中が温かい気がして、目を開けると見慣れた天井が目に映り込む。
「家……?」
ゆっくりと瞬きをする。
頭がぼんやりとして、胸の上がまだ温かい。
手を胸の上に乗せると、ふわふわした小さな毛玉に触れる。
「あ、火車かぁ」
ゴロゴロと喉を鳴らす声に目を細めていたら、香ばしいお肉のような匂いが漂っていた。
台所の方で物音がしていて、キョウさんとダイさんの声がする。
「こんな薄い肉では一口で終わってしまうぞ?」
「もっと厚切りでいいのではないか?」
不満そうな声にクスリと笑って体を起こす。
火車を抱きかかえて台所へ向かうと、狼姿のキョウさんとダイさんが黒いエプロンをして料理をしているコゲツの足元にいた。
「おかえりなさい。コゲツ」
「ただいま、嫁殿。体の方は大丈夫ですか?」
「うん。わたし、学校の帰りだったんだけど……帰ったら、寝ちゃった?」
記憶がおぼろげで首を傾げると、コンロの火を消してコゲツがわたしの頬に手を伸ばして撫でる。
少しだけお肉の匂いがしているけど、優しい手の平の感触だ。
「嫁殿は帰る途中で倒れて、千佳が連れ帰ってきたのですよ。だから、すぐに帰りなさいと言ったでしょう?」
「そうなの? あんまり覚えてない」
「無玄の移動術に嫁殿の体が耐えられなかったのでしょう。それに、いつもは私が側にいますから邪気払いが効いていますが、大量の『何か』の邪気にあてられすぎですね」
「邪気祓い?」
「紫色のお守りとこの家には邪気祓いがしてあると、前に説明したはずですよ」
そういえばそんな事を言っていたかもしれない。
千佳が三灯天神として襲ってきた時に……
「あとはいつも渡している紫陽花のハンカチですね」
「何気にわたしってば、邪気祓いされまくっているような?」
「嫁殿を守ると言ったでしょう? 何人たりとも近寄らせないように用心していますからね」
「そこまでしないでも、大丈夫なのに」
ふぅ。とコゲツが溜め息を吐き、わたしのおでこを指でコツコツとノックするように叩いてくる。
「嫁殿。倒れた人間の言う台詞では無いですよ。まったく、自覚が無いのも困ったものですね」
「う~っ。だって、まさか無玄さんが罠を貼ってるなんて思わないし、それに……あっ!」
「どうしました?」
「桑谷先生はどうなったのか分からないんだけど、コゲツは聞いてる?」
「その話もありますが、先ずは着替えをして夕飯にしましょうか。お昼も食べていないようですからね」
火車を床に下ろして、制服を着替えに二階へと上がる。
スカートは後でアイロンでも書けた方が良さそうだ。まだ衣替えの時期ではないから上着が無くて良かった。
上着があったらアイロンもまたひと手間だからね。
シャツにハーフパンツに着替えて机の上を見れば、学校のカバンの上に花の形をしたメモが置いてあった。
『明日、アイスをおごるように!』
迷惑を掛けてしまったようだし、明日は学校帰りにアイス屋さんに寄り道して千佳に奢っておこう。
カバンからスマートフォンを取り出して、カバンを定位置のクローゼットに仕舞い込む。
机の上にスマートフォンを置いて充電器を差し込み、幾つか作った飾り紐を手にする。
「コゲツ、喜んでくれるかな?」
一番初めに作った物が一番の力作なのだけど、キョウさんとダイさんに念がこもりすぎていると言われたし、無難な物の方が良いだろうか?
でも、気持ちがこもっている物の方がプレゼントには良いと言うし……一番初めに作った物にしよう。と、思いつつも他の飾り紐もやはりポケットに入れていつでも交換できるようにしておく。
一階に下りると、居間のちゃぶ台にはご飯の準備が出来ていた。
薄切りのお肉やステーキのようなお肉に大根と人参のサラダにサンチョに小皿には刻み葱を炒めた物。
それとワカメのスープのようだ。
「本日はお土産の牛タンを中心にしてみましたよ。霜降り牛タンはステーキに、薄焼きの牛タンは刻み葱を巻いて食べか、塩だれ、レモンなどで好きに食べてください」
「うわぁ。牛タンってお家でも食べれるんだね。お肉屋さんでだけかと思ってたよ」
「そのうち焼肉屋にも一緒に行きましょうか」
「主! 我らも!」
「肉屋は美味い!」
「貴方達も連れていきますから、今日はこちらの食卓の牛タンで我慢してください」
レモン汁を浸けて薄切りの牛タンから食べてみると、お肉自体は硬いのに味わいが口いっぱいに広がる。
ステーキの霜降り牛タンなんて食べたことが無かったけれど、周りを焼いただけのミディアムレアで見た目はサーロインステーキのよう。
柔らかくて肉汁がじゅわっと出て食べ応えに満足できる一品。
薄切り牛タンに刻み葱を巻いて食べると、葱独特のシャキシャキと下味わいに塩コショウがお肉の甘味を引き出す。
「ん~っ。美味しい!」
「主! ご飯のおかわりを!」
「我も!」
「主を顎で使うんじゃありませんよ。まぁ、いいですけどね。嫁殿もいりますか?」
「わたしも~」
お茶碗をコゲツに手渡し、ワカメのスープで口の中をリセットする。
お昼ご飯を食べていなかったせいなのか、お土産の牛タンが美味しすぎるせいなのかモリモリとご飯が食べれてしまうのが恐ろしい。
明日は牛タンでビーフシチューを作るのだとかで、それも楽しみな感じで夕飯が終わった。
片付けをコゲツと一緒にして、お茶を淹れて居間であの後のことを説明してもらう。
「無玄の集めた情報で『何か』は、夏休みの間に生徒指導の教師が行き過ぎた指導をしたことで発生してしまったようですね。それを千佳が攻撃し怒らせてしまい、変質させてしまった……と、いうとこです」
「ううっ。わたし達が変質の原因なんだね。でも桑谷先生はいつもあんな感じだと思うんだけど」
「夏休みの学生は解放感から色々やらかしますからね。そんな時に生徒指導などされては面白くないでしょう? 普段ならば、拘束時間も授業等もありますから短い時間で済むところが、夏休みは拘束時間も長い……ときたら、怒りの増加は『何か』を大量発生させるほどの力を持ってしまっても仕方が無いのでしょう」
「そういうもの?」
コゲツが頷きお茶を口に含む。
わたしもお茶を飲んでふぅと息を吐く。
「それで、『何か』はどうなったの?」
「無玄が『何か』が満足するまで喋らせて浄化したようですが、それをずっと聞かされた教師は当分は大人しいままだと思いますよ」
「別に危害を加えたりとか、何かあったわけじゃないのかな?」
「ええ。我々はあくまで祓い屋であり、生身の人間をどうこうするのは仕事ではありませんからね。人ならざる者との交渉をしているようなものです」
「そっか。なら良かった」
当分大人しいということなら、文化祭中は桑谷先生が絡んでくることはないだろう。
あんな風にタール人間状態で心配したけど、なんともないなら良かった。
無玄さんが怖いと感じたのは、移動術のせいだろうし安心……かな?
「嫁殿はあんな教師でも心配するのですね」
「うーん。桑谷先生は嫌な先生だけど、人ならざる者にボコボコにされちゃうのは可哀想だもの」
「私は、あの教師を許してはいませんけどね」
「コゲツってば、意外と恨んじゃうタイプなの?」
へへっと笑って茶化してみると、コゲツは少しだけ首を横に動かす。
「私は嫁殿を泣かした輩に容赦はしませんよ」
「……~っ」
抑揚のない声で言われてしまっては、コゲツがわたしに対して真剣に言っているとしか受け止められない。
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