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4章 言霊のカタチ
無玄
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意気消沈中のわたし達に対して、祓い屋さん――無玄さんはニヤニヤしている。
この無玄さん。コゲツからの依頼で『何か』を祓いに来た人だった。
しかも、コゲツと同じ年齢の二十七歳。
一家より少し格下の祓い屋ではあるものの無玄さんは、コゲツも認める実力者なのだとか。
まぁ、本人が言っているだけでコゲツが言った訳じゃないから、真偽のほどは分からない。
「春先に嫁を娶ったとは聞いたけど、まさか女子高生とはねぇ」
「あんまりそういう目で人を見ていると、便利な道具を全部ダメにしてやりますよ」
出来るかどうかは分からないけど脅しとしては有効なようで、無玄さんはわたしから少し離れて歩く。
無玄さんと電話していたのはコゲツで、わたし達は無玄さんのせいでバレたと言っても過言ではない。
なのでわたし達は無玄さんを恨めしそうに見てしまっても仕方がない訳だ。
「一家の八代目が結婚しないもんだから、この界隈では色んな名門が花嫁候補を選出していたのに、今は落ち目の水島家から花嫁を貰ったって話だったけどなぁ。まぁ、面白いお嬢さんではあるよな。さすが一家だ」
「褒められている気が全然しない」
「女子高生嫁かぁ。羨ましいと思うには、中途半端に子供なんだよなぁ」
「てりゃっ!」
「痛ーっ!」
確かにまだ子供だけどあからさまに小馬鹿にされたことに頭に血がのぼって、気が付けばローキックで無玄さんの脛を蹴っていた。
「小僧が悪いぞ」
「そうだぞ。小僧はもう少し考えるべきな」
「ニィー」
「あたた……。それじゃ、君等はここで帰ってね。またね、嫁子ちゃん」
学校に侵入した林に戻されヒラヒラと手を振る無玄さんに見送られて、わたし達はフェンスを乗り越えて家路に着かされてしまった。
元々早く帰りたかったのはあったんだけど、コゲツが無玄さんに学校の敷地内からわたし達が出るのを見送って欲しいとお願いしたからだ。
信用という文字がコゲツの中ではどうなっているのか……!!
「ただいー……あっ、コゲツの式紙だ」
玄関を入ると居間から白い紙で出来た人型の式神が顔を出した。
『帰ってきましたね。嫁殿、手洗いうがいをしてください』
「言われなくても分かってるよ。もう、心配性なんだから」
『キョウ、ダイ。貴方達には説教です。そこで待ちなさい』
「うっ!」
「主、これはその」
『言い訳は無用です』
洗面所へ向かって手を洗っていると、コゲツの声が耳に届く。
キョウさんとダイさんは情けない声を出しているけれど、声のトーンからそこまでは怒っていない気もする。
この無玄さん。コゲツからの依頼で『何か』を祓いに来た人だった。
しかも、コゲツと同じ年齢の二十七歳。
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まぁ、本人が言っているだけでコゲツが言った訳じゃないから、真偽のほどは分からない。
「春先に嫁を娶ったとは聞いたけど、まさか女子高生とはねぇ」
「あんまりそういう目で人を見ていると、便利な道具を全部ダメにしてやりますよ」
出来るかどうかは分からないけど脅しとしては有効なようで、無玄さんはわたしから少し離れて歩く。
無玄さんと電話していたのはコゲツで、わたし達は無玄さんのせいでバレたと言っても過言ではない。
なのでわたし達は無玄さんを恨めしそうに見てしまっても仕方がない訳だ。
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「てりゃっ!」
「痛ーっ!」
確かにまだ子供だけどあからさまに小馬鹿にされたことに頭に血がのぼって、気が付けばローキックで無玄さんの脛を蹴っていた。
「小僧が悪いぞ」
「そうだぞ。小僧はもう少し考えるべきな」
「ニィー」
「あたた……。それじゃ、君等はここで帰ってね。またね、嫁子ちゃん」
学校に侵入した林に戻されヒラヒラと手を振る無玄さんに見送られて、わたし達はフェンスを乗り越えて家路に着かされてしまった。
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信用という文字がコゲツの中ではどうなっているのか……!!
「ただいー……あっ、コゲツの式紙だ」
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『キョウ、ダイ。貴方達には説教です。そこで待ちなさい』
「うっ!」
「主、これはその」
『言い訳は無用です』
洗面所へ向かって手を洗っていると、コゲツの声が耳に届く。
キョウさんとダイさんは情けない声を出しているけれど、声のトーンからそこまでは怒っていない気もする。
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