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三章 悪の華
悪の茶会
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大量の書類に目を通し、サインをする手を動かしながら、時たま「あー、それ覚えてる!」という楽しげな声に耳を傾け、書類から顔を上げる。
書斎の書類机に座り、書類仕事をする俺を尻目に、二葉ちゃんとララルーシャはお茶会中だ。
「俺は仕事しているのに……」
「つまみ出しましょうか?」
俺の横でルカリオンはいつも通りの笑顔で、二葉ちゃんたちに牙をむく気満々の構えである。
「お願い」とも言えないので、首を横に振るしかない。
二人は野ギスの話で盛り上がったり、この世界の話をしたりと忙しいらしく、書斎から見える庭で楽し気にしている。
二人だけで話が済むなら、二葉ちゃんの家もとい、セインの屋敷で仲良く茶会をしてくれればよかったのに……
まぁ、俺が二人の喧嘩を預からせてもらった手前、お茶会を開いたわけだけどね。
「お茶でも淹れましょうか? それともお菓子か何か甘い物でも摘まみますか」
「お茶とお菓子! 休憩にしよう!」
「はい。お疲れ様です」
ルカリオンにお茶とお菓子を頼み、俺は書類の束を執務机の片隅に追いやる。
こんなものは本来ならば、俺には関係の無い仕事なのに、公爵でいるよりも絶対治癒師をしていた方が楽だろう。
「坊ちゃん、ハニーカモミールでいいですか?」
「うん。疲れた時には、甘いハーブティーが良い」
「庭園の脇にある養蜂ハウスから良いハチの巣を砕きましたので、濃厚な甘さになっていると思いますよ」
そういえば、そんな物もこの屋敷にはあったなぁ。
公爵家の庭には、白バラにこだわるルカリオンを筆頭に、意外と野菜だ養蜂だと管理している庭師や、コック長が居るのである。
それにしても、ゲームのイベントがこの世界にもあるというのは、少し由々しき問題かもしれない。
メインシナリオで行けば、幾つかイベントはあるけど、一番ヤバいイベントはルカリオンと俺のヒロイン暗殺事件。
まぁ、これは回避したと思えばいい。
ヒロインの二葉ちゃんが関わるイベントは多そうだけど、俺が二葉ちゃんを苛めていない時点でほぼ起こりようがない。
戦闘の多いゲームだから、ちょこちょこ強いボスはいたはず……
うーん。
「坊ちゃん? 眉間にしわを寄せてどうしました」
「あー、少し考え事」
グイグイと指で眉間のしわを伸ばされて、俺は差し出されたハーブティーを口に含む。
うん、蜂蜜の甘さが濃いけれど、蜜は庭園の厳選された花から採取しているのか、変な味が混じらないまろやかなものだ。
「何を考えていたのです?」
「んーっ、俺というより、二葉ちゃんが関わる事件があるんだけどさ、先回りしなきゃなぁって……」
「ミナさんが片付けなければならない事ならば、坊ちゃんが関わる事はありませんよ」
「いや、でもさ、女の子に押し付けるのはどうかなって」
「彼女は意外に強いですから、大丈夫ですよ」
窓の外を親指で指して、ルカリオンは半目で二葉ちゃんとララルーシャを見る。
二人は何故か窓に張り付いて「ゲッ! 見付かった!」と騒いで、ますますルカリオンに冷たい目で見られていた。
何をしているのやらだ。
「シグマの件が片付きそうだし、そろそろ父上に仕事を押し付けて外を出歩きたいっていうのが本心なんだけどね」
「それには同意しますが、公爵は素直に戻ってくるか怪しいですね」
「俺がこの屋敷を出て、シグマが時期公爵として育つまでは、父上には頑張って欲しいんだけどね」
現在、田舎に引っ込んでしまったフェルミナの父は、困ったことに田舎にある賭博場に手を出しているという話がチラホラ聞こえてきているので、早目に王都に戻ってきてもらわないと困るのだ。
田舎は娯楽が無いからね。賭博にのめり込むのはわかるけれど、シグマにまで借金を引き継がせたりでもしたら、目も当てられない。
「二葉ちゃん、ちょっといい?」
窓を開けて二葉ちゃんに声を掛けると、二葉ちゃんは慌ててララルーシャと紙束を隠した。
あー、見なくてもわかる。
紙に怪しげなイラストが見えたことから、腐った何かを描いて盛り上がっていたのだろう。
「何、お姉様に何か用なの?」
「二葉ちゃん。このゲームってミニゲームがあったよね?」
「ああ、そういえばポーカーとかルーレットとかあったね。それが何か?」
「どうも、俺の父親がそういった賭博でお金を使いまくっているみたいなんだけど、ゲームで賭博に関するイベントって何かあった?」
「あったかなぁ?」
二葉ちゃんが首を傾げると、ララルーシャが口を挟んできた。
「あるわよ。と、言っても……ヒロインのバッドエンドでね」
「「えええっ!?」」
二葉ちゃんと二人で声をあげると、ララルーシャは「知らなかったの?」と不思議そうな顔をした。
知らないと言うより、ヒロインのバッドエンドルートは戦闘不能ぐらいのものじゃなかっただろうか? と、二葉ちゃんと顔を合わせてしまったぐらいだ。
書斎の書類机に座り、書類仕事をする俺を尻目に、二葉ちゃんとララルーシャはお茶会中だ。
「俺は仕事しているのに……」
「つまみ出しましょうか?」
俺の横でルカリオンはいつも通りの笑顔で、二葉ちゃんたちに牙をむく気満々の構えである。
「お願い」とも言えないので、首を横に振るしかない。
二人は野ギスの話で盛り上がったり、この世界の話をしたりと忙しいらしく、書斎から見える庭で楽し気にしている。
二人だけで話が済むなら、二葉ちゃんの家もとい、セインの屋敷で仲良く茶会をしてくれればよかったのに……
まぁ、俺が二人の喧嘩を預からせてもらった手前、お茶会を開いたわけだけどね。
「お茶でも淹れましょうか? それともお菓子か何か甘い物でも摘まみますか」
「お茶とお菓子! 休憩にしよう!」
「はい。お疲れ様です」
ルカリオンにお茶とお菓子を頼み、俺は書類の束を執務机の片隅に追いやる。
こんなものは本来ならば、俺には関係の無い仕事なのに、公爵でいるよりも絶対治癒師をしていた方が楽だろう。
「坊ちゃん、ハニーカモミールでいいですか?」
「うん。疲れた時には、甘いハーブティーが良い」
「庭園の脇にある養蜂ハウスから良いハチの巣を砕きましたので、濃厚な甘さになっていると思いますよ」
そういえば、そんな物もこの屋敷にはあったなぁ。
公爵家の庭には、白バラにこだわるルカリオンを筆頭に、意外と野菜だ養蜂だと管理している庭師や、コック長が居るのである。
それにしても、ゲームのイベントがこの世界にもあるというのは、少し由々しき問題かもしれない。
メインシナリオで行けば、幾つかイベントはあるけど、一番ヤバいイベントはルカリオンと俺のヒロイン暗殺事件。
まぁ、これは回避したと思えばいい。
ヒロインの二葉ちゃんが関わるイベントは多そうだけど、俺が二葉ちゃんを苛めていない時点でほぼ起こりようがない。
戦闘の多いゲームだから、ちょこちょこ強いボスはいたはず……
うーん。
「坊ちゃん? 眉間にしわを寄せてどうしました」
「あー、少し考え事」
グイグイと指で眉間のしわを伸ばされて、俺は差し出されたハーブティーを口に含む。
うん、蜂蜜の甘さが濃いけれど、蜜は庭園の厳選された花から採取しているのか、変な味が混じらないまろやかなものだ。
「何を考えていたのです?」
「んーっ、俺というより、二葉ちゃんが関わる事件があるんだけどさ、先回りしなきゃなぁって……」
「ミナさんが片付けなければならない事ならば、坊ちゃんが関わる事はありませんよ」
「いや、でもさ、女の子に押し付けるのはどうかなって」
「彼女は意外に強いですから、大丈夫ですよ」
窓の外を親指で指して、ルカリオンは半目で二葉ちゃんとララルーシャを見る。
二人は何故か窓に張り付いて「ゲッ! 見付かった!」と騒いで、ますますルカリオンに冷たい目で見られていた。
何をしているのやらだ。
「シグマの件が片付きそうだし、そろそろ父上に仕事を押し付けて外を出歩きたいっていうのが本心なんだけどね」
「それには同意しますが、公爵は素直に戻ってくるか怪しいですね」
「俺がこの屋敷を出て、シグマが時期公爵として育つまでは、父上には頑張って欲しいんだけどね」
現在、田舎に引っ込んでしまったフェルミナの父は、困ったことに田舎にある賭博場に手を出しているという話がチラホラ聞こえてきているので、早目に王都に戻ってきてもらわないと困るのだ。
田舎は娯楽が無いからね。賭博にのめり込むのはわかるけれど、シグマにまで借金を引き継がせたりでもしたら、目も当てられない。
「二葉ちゃん、ちょっといい?」
窓を開けて二葉ちゃんに声を掛けると、二葉ちゃんは慌ててララルーシャと紙束を隠した。
あー、見なくてもわかる。
紙に怪しげなイラストが見えたことから、腐った何かを描いて盛り上がっていたのだろう。
「何、お姉様に何か用なの?」
「二葉ちゃん。このゲームってミニゲームがあったよね?」
「ああ、そういえばポーカーとかルーレットとかあったね。それが何か?」
「どうも、俺の父親がそういった賭博でお金を使いまくっているみたいなんだけど、ゲームで賭博に関するイベントって何かあった?」
「あったかなぁ?」
二葉ちゃんが首を傾げると、ララルーシャが口を挟んできた。
「あるわよ。と、言っても……ヒロインのバッドエンドでね」
「「えええっ!?」」
二葉ちゃんと二人で声をあげると、ララルーシャは「知らなかったの?」と不思議そうな顔をした。
知らないと言うより、ヒロインのバッドエンドルートは戦闘不能ぐらいのものじゃなかっただろうか? と、二葉ちゃんと顔を合わせてしまったぐらいだ。
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