悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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三章 悪の華

悪の華は踊る

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 会場の生演奏がカーテンが閉められたことにより、少しだけ重い音に聞こえる。
 ララルーシャは長い手袋を引き抜き、自分の素肌を俺に見せた。
 その腕は蛇が絡まっているような痕を残しただれている。
 俺にララルーシャは「呪いです」と一言いった。

「呪いは、俺には協力は出来ない。俺に出来るのは、回復と解毒に能力を向上させるだけ」
「ええ。これは呪いを解いた後なのです。ですから、傷あとになると思うのですが、治すことは可能でしょうか?」
「どうでしょう……こうした傷あとは初めてなので……手に口を付けますが、良いですか?」
「ええ」

 きっとルカリオンが耳をそばだてているだろうから、今のこの会話で目を吊り上げているかもしれない。十中八九、眉間にしわを寄せているのは容易に想像できるのが、ルカリオンなのだ。
 ララルーシャの手を取り、回復魔法を唇から指先へ吹き込む。
 薄くなる傷あとに、お互いにホッと息をつく。

「良かったわー……流石、野ギス・・・のフェルミナだわ」
「え……」

 今、野ギスと言わなかっただろうか? 
 ララルーシャを凝視していたら、扇子を広げて口元を隠し目元を弓形ゆみなりにして笑った。
 まさかララルーシャも転生者だろうか。
 でも、野ギスにララルーシャなんてキャラは出ていないはずだ。

「その反応、貴方は転生者なのでしょう?」
「そう、だけど……あんたもか」
「ええ。わたくしをご存じないようですから、簡単に言いますと、製作段階で没になった、元フェルミナの原型キャラですの」
「ええっ!?」

 没キャラ……でも、確かに少しツリ目がちな目元や、気位の高そうな顔つきはフェルミナに似ているかもしれない。それに、没キャラなら俺は知らないし、おそらく二葉ちゃんの反応からして知らないのだろう。
 パチンと扇子をたたみ、ララルーシャは握手を求めるように手を差し伸べる。
 少しだけ躊躇して握手を返す。

「身構えないで下さいな。貴方は、男装でこの世界を上手く乗り切っているようね」
「あ、いや、俺は正真正銘、男なんだけど?」
「え?」
「悪いけど、前世も男。ちなみにヒロインは前世の姉だから、苛めないで貰えると助かるんだけど」
「嘘でしょう? フェルミナよ? 悪役令嬢なのに、なんで性別が変わっているのよ」

 そんな悲観されても、俺だってそこら辺は分からないし、フェルミナを悪役令嬢呼びは止めて欲しい。あの子だって、好きで悪役になったわけではない。
 愛されようとして空回りしてしまった少女に過ぎないのだから。
 フェルミナに生まれ変わって、そこら辺は良く思うし、自分で自分の事を悪役とは言っても、他人に言われるのは少しだけ腹も立つ。
 好きで悪役に生まれてきたと思うなよ! と、いうのが俺の気持ちだ。

「ハァー……ヒロインがお姉さんなのね?」
「そうだけど」
「すごく出来の悪そうな子だから、貴方が『ザマァ』中なのかと手助けしに来たけれど、そうじゃないのね……」
「一応、そういう予定は無いよ」

 二葉ちゃん、酷い言われようだよ。出来が悪い子って、何をしていたのやら……。
 我が姉ながら、破天荒なところは否めないけど、この世界を楽しんでいるだけだと、俺は思っている。
 盛大な溜め息をララルーシャはつき、「腐男子かぁー」とか俺を乙女ゲーム好き扱いしてくるし、この人はこの人で二葉ちゃんといい勝負では無いだろうかと思えてくる。

「まあ、いいですわ。それよりも、貴方たち姉弟はイベントをしなさ過ぎ! どれだけわたくしがイベントを回収して回ったと思っていますの!」
「イベントって、言っても……攻略者の好感度はカンスト状態だし、特にすることはないし……」
「な・に・を、言っていますの!? 季節ごとのイベント! 月ごとのイベント! そういったものを一切していない事を言っていますのよ!」
「あー、そういうのあったかも……」

 一応メインストーリーの他にイベントクエストが月ごとに用意されていて、カードゲームという事もあり、戦闘メインのダンジョン制覇やボスを退治しろなど、あった気がする。
 報酬は攻略者の新しいカードや装備品などだったはずだ。

「貴方たちが片付けないから、わたくしがどれだけ苦労したか……!!」
「んーっ、でも、俺たち学生だし、今は公爵代理で忙しいからなぁ」
「それが、わたくしを元に作られたフェルミナのやる事なの!? ああ、嘆かわしいわ!」

 そう言われても、俺にも俺の生活というものがある。

「そっちだって王族か何かだろ? イベントをしている暇なんてあるのかよ」
「わたくしはいいのです。何せ第六王女ですのよ? 見捨てられた王女。それがララルーシャ、つまりフェルミナになる前の設定なのだから。ただ、貴方たちにクロームは攻略しておいてほしかったですわね。彼、いずれわたくしの夫になりますのよ」
「うわー……ご愁傷様です」

 元フェルミナの原型でも、今は別物だし、ご愁傷様以外の言葉は無い。
 クロームを貰ってくれる先があって、俺としては大変助かるし、二葉ちゃんもそうだろう。
 ムッとした顔でララルーシャがふくれっ面をするが、そんな事は俺には関係ない。

「こんな事なら、もっと早めに貴方に会いに来るべきでしたわ。わたくしも、クローム以外と恋がしてみたかったぁー……」
「まぁ、いいじゃん。クロームは王様にはなるんだしさ」
「なら、貴方が引き取って下さいな」
「それは無理だな。俺にはルカリオンが居るから」
「腐男子ぃぃぃ~っ」
「そこら辺はなんとでも」

 これに関しては否定はしない。
 ルカリオンは俺が攻略したのだから、俺のもの。譲る気は毛頭ない。
 ララルーシャと少しだけ騒いで、会場に戻るとルカリオンが即座に飛んできて、ヴヴヴと低い声でララルーシャを威嚇したりもしたが、二葉ちゃんを交えて今後を相談するという話で、うちの屋敷に招待をした。

「坊ちゃん、平気でしたか?」
「平気だって。どうせ、聞いてたんだろ?」

 耳を後ろに忙しなく下げたり上げたりして、ルカリオンは頷き、自分を落ち着かせるために尻尾をバシバシ揺らしている。

「ほら、ルカリオン。手」
「手?」
「踊るんだろ?」
「……っ! はい!」

 約束通り、まだ演奏が続いていたからルカリオンの手を取って、踊った。
 この世界、男同士でも踊っても普通なところは、乙女ゲームの腐要素なのでは? と、密かに思うところだ。
 でも、ルカリオンが楽しそうにリードしてくれるから、これはこれでいいのかもしれない。
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