悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

好きとキスの狭間

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 キスをして多分一秒も経っていない、頭の中は瞬時に色々な事がよぎる。
 ルカリオンにキスしてしまったと、心臓が口から出そうな俺と、これじゃクロームと同じいきなりキスした最低な奴に思われているかも、ヤバいじゃん! そう騒ぐ俺がいた。
 いつもみたいに、回復魔術を吹き込めば『クロームと戦って、ケガしてないか回復しておいた』と言って、冗談に出来るだろうか? 早く口から回復魔術を吹き込まないと、でも、もう遅いか? ぐるぐると考えは渦を巻く。
 なんで、俺、咄嗟にルカリオンにキスしてしまったんだろう……ずっと一緒に居られて、心地よい関係。それでいて、ヒロインが出てきたら手を放せる距離が必要だったのに。
 ああ、もう、泣きたい。
 泣く資格は無いのに、ルカリオンに嫌われたらどうして良いか分からない。
 ようやく唇が微かに動いて、首に回した手がぎこちなく解ける。

「……ごめ」
「謝らないで、ね」

 ルカリオンは謝るなと言い、子供に言い聞かせるように優しく「ね」っと、言って自分から唇を重ねて抱きしめてきた。
 唇を合わせるだけのキスが、角度を変えて繰り返されるうちに動悸が激しくなっていく。
 心臓が脈打つたびに息も上がり、酸素を取り入れようとして口を開けば、また唇を塞がれてしまう。
 クロームにされたキスとは違う、熱を持った舌が歯列の合間を割って侵入してくる。
 舌が口腔内で動くと、少し泣きたくなってしまう。
 俺の方が精神年齢は高いはずなのに、キスのやり方ひとつ分からない。
 転生前も彼女いない歴イコール年齢だったけど、ルカリオンも彼女がいたとは思えない……なのに、キスが大人のキスで迷いが無いのは、学園に通っている間に俺の知らない彼女が居たとか?
 それは、嫌だなぁ……
 目をつぶると涙が零れて、しばらくすると口の中から舌も唇も離れて行った。
 視界が滲む中で目を開けば、ルカリオンが少し目を伏せて俺を見つめている。

「嫌、でしたか?」

 抱きしめられた腕から力が抜き去られて、体も距離が出来る。 
 頭を左右にゆらすと、目尻を指で触られた。

「泣いているのに?」
「……ちがぅ……だったから……」

 ボソボソと、声が小さくなりながら「キスが上手だったから」と情けない言葉を口にする。
 自分の言葉の意味を少し遅れて羞恥が込み上げ、顔は項垂うなだれていく。
 クスッと上から笑う声がして、言うんじゃなかった! と後悔した時には、ザブンと派手に音を立ててバスタブに二人共浸かっていた。

「わっ! なっ、ルカリオ……っ!」

 最後の「ン」は、ルカリオンの口の中に吸い込まれていく。
 ずぶ濡れのルカリオンは、唇を離して眉をハの字にして満面の笑みを向ける。

「あなたって人は、本当に、可愛いのだから」
「そんなに、変……かな?」
「可愛すぎて、もう逃がしてあげられないじゃないですか」
「あ……っ」

 前髪を片手で後ろに流し、目を細めて舌でペロリと自分の唇を舐めるルカリオンに、URカードのレベルマックス時の絵柄が変わったバージョンが重なる。
 アニメーションだと、どうなったっけ? あ、これ持ってないやつだ。
 攻略サイトでスクリーンショットだけ見たヤツ。

「どうかしましたか?」
「えと……服、ずぶ濡れだけど、脱いだら?」

 一瞬、ルカリオンが目を丸くして「敵いませんね。仰せのままに」と、俺の手を取って指先に唇を落とす。
 ワンテンポ遅れて、自分の発言に顔から火が出るかと思った。
 俺のアホ―!!
 恥ずかしさついでに、服を脱ぎ捨てるルカリオンの体をマジマジと見てしまう。 
 男同士でも人の体を見る機会は少ないのもあって、好奇心というものだ。
 体術を専門とする獣人らしく、筋肉がボディビルダーとは違う見せる筋肉ではなく、実用的で無駄な筋肉が無い。
 モデル寄りの見せる筋肉にもう少し足したぐらいだろうか?

「お腹が割れてる……」

 ちょっと羨ましい……フェルミナの体は、体力づくりには向かないらしく、筋肉は無いし、運動すれば直ぐに体力がなくなってしまう残念な体なのだ。
 まぁ、前世の俺の体も変わらないけど……ああ、でも姉に追い回されていたので、走るのだけは早かったかもしれない。
 そういえば、他の攻略者たちも、子供の頃はどっこいどっこいの体つきだったのに、いつの間にか背は抜かれるし、重い物も彼等は難なく持ち運びをする事から、筋肉量は確実に違うのだろう。
 トンと指で額を小突かれて意識を戻すと、「何か考え事をしていたでしょう?」と指摘される。
 こうした事にも目ざといんだよなぁルカリオンは。野生の勘だろうか? 

「あなたは、わたしの事だけ考えてくれていたら、いいんですよ。ね?」

 背筋がゾックリとして、もしかして俺は引いてはいけないカードを引き当ててしまったのではないだろうか。
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