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直史先輩の恋人
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短い冬休みが終わり久しぶりに大学へと向かう。
新年を一緒に迎えてからは苳也先輩とはバイトの時に会うくらいだ。
相変わらず先輩はいつも通りだりな感じだが、苳也先輩から触れられる度に俺の心拍数は上がってしまう。
それが一体何を意味するのか……あまり深くは考えないでおこう……。
講義が終わり、サークルの部室へと向かうと声をかけられる。
「チカ~。今からサークル行くのか~?」
直史先輩の声にパッと顔を輝かせながら振り向けば、大好きな先輩の隣には恥ずかしそうに俯く黒髪の青年がいた。
「直史先輩も今からサークルですか?」
「うん。でも、俺は寄るところがあるから、後で顔を出すよ」
直史先輩はそう言うと、チラリと隣にいる青年に視線を向ける。
「チカにはまだ紹介してなかったけど……俺の恋人の奏くんだよ」
「「えぇ!?」」
直史先輩が突然隣にいる青年が恋人だなんて説明するもんだから、俺は驚き声を上げる。そして、恋人だと説明された奏さんも予想外だったのが慌てふためいていた。
「な、な、直史くん! な、なんでバラしちゃうの!」
「あれ? さっき千景に紹介するって言ったからそういう意味だと……」
「ち、違うよ! 友達として僕を千景くんに紹介するもんだと思ってたのに……」
今にも泣き出してしまいそうな奏さんに、慌てて俺がフォローに入る。
「あ、あの! 直史先輩からは恋人ができたって聞いていたんで……。その……男同士でも俺は気にしませんよ」
へへっと奏さんに笑顔を見せれば、少し表情が和らぐ。
「ありがとう千景くん。遅くなったけど、直史くんと同じ学科の奏と言います。どうぞよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
奏さんは丁寧に頭を下げてくるので、俺も慌てて頭を下げる。
ってあれ? 先輩から恋人紹介されたのにあんまり胸が痛くない……。
目の前で奏さんと直史先輩は仲良さそうに話しているのに……。以前なら辛くなって泣きたくなりそうな場面なのになんでだろう……。
「チカ。突然こんなことしちゃってごめんな……」
「いえ、大丈夫ですよ先輩」
いつものように直史先輩に笑顔を見せれば、先輩はなんだか安心した表情を浮かべていた。
直史先輩は奏さんとの用事を済ませてからサークルに顔を出すと言い、俺は先に部室へと向かう。
直史先輩と奏さん幸せそうだったな……。
幸せそうに笑い合い寄り添う二人の姿を思い出しながら部室のドアを開ければ、退屈そうな顔をしてソファーにもたれかかっている苳也先輩の姿が目に入る。
俺の姿を見つけるなり、パッと顔を輝かせるといつものように「千景~」と言ってこちらへやってくる。
「遅かったな! 暇で暇で退屈してたんだぞ~」
「俺が来たって特に楽しい事なんてありませんよ」
「千景がいればそれだけで十分なんだよ」
嬉しそうに俺の隣にやってくる先輩が、最近はなんだか犬に思えてくる。この綺麗な黒髪でキリッとした顔を犬に例えるなら……シェパードかな?
口に出せば怒られてしまいそうな妄想をしながら、今日も俺は苳也先輩の隣で笑顔を浮かべる。
傍から見れば俺と苳也先輩も、直史先輩カップルに負けず劣らず仲良く幸せそうに寄り添っているなんて思われているなど知らずに……。
新年を一緒に迎えてからは苳也先輩とはバイトの時に会うくらいだ。
相変わらず先輩はいつも通りだりな感じだが、苳也先輩から触れられる度に俺の心拍数は上がってしまう。
それが一体何を意味するのか……あまり深くは考えないでおこう……。
講義が終わり、サークルの部室へと向かうと声をかけられる。
「チカ~。今からサークル行くのか~?」
直史先輩の声にパッと顔を輝かせながら振り向けば、大好きな先輩の隣には恥ずかしそうに俯く黒髪の青年がいた。
「直史先輩も今からサークルですか?」
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「チカにはまだ紹介してなかったけど……俺の恋人の奏くんだよ」
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直史先輩が突然隣にいる青年が恋人だなんて説明するもんだから、俺は驚き声を上げる。そして、恋人だと説明された奏さんも予想外だったのが慌てふためいていた。
「な、な、直史くん! な、なんでバラしちゃうの!」
「あれ? さっき千景に紹介するって言ったからそういう意味だと……」
「ち、違うよ! 友達として僕を千景くんに紹介するもんだと思ってたのに……」
今にも泣き出してしまいそうな奏さんに、慌てて俺がフォローに入る。
「あ、あの! 直史先輩からは恋人ができたって聞いていたんで……。その……男同士でも俺は気にしませんよ」
へへっと奏さんに笑顔を見せれば、少し表情が和らぐ。
「ありがとう千景くん。遅くなったけど、直史くんと同じ学科の奏と言います。どうぞよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
奏さんは丁寧に頭を下げてくるので、俺も慌てて頭を下げる。
ってあれ? 先輩から恋人紹介されたのにあんまり胸が痛くない……。
目の前で奏さんと直史先輩は仲良さそうに話しているのに……。以前なら辛くなって泣きたくなりそうな場面なのになんでだろう……。
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「いえ、大丈夫ですよ先輩」
いつものように直史先輩に笑顔を見せれば、先輩はなんだか安心した表情を浮かべていた。
直史先輩は奏さんとの用事を済ませてからサークルに顔を出すと言い、俺は先に部室へと向かう。
直史先輩と奏さん幸せそうだったな……。
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俺の姿を見つけるなり、パッと顔を輝かせるといつものように「千景~」と言ってこちらへやってくる。
「遅かったな! 暇で暇で退屈してたんだぞ~」
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「千景がいればそれだけで十分なんだよ」
嬉しそうに俺の隣にやってくる先輩が、最近はなんだか犬に思えてくる。この綺麗な黒髪でキリッとした顔を犬に例えるなら……シェパードかな?
口に出せば怒られてしまいそうな妄想をしながら、今日も俺は苳也先輩の隣で笑顔を浮かべる。
傍から見れば俺と苳也先輩も、直史先輩カップルに負けず劣らず仲良く幸せそうに寄り添っているなんて思われているなど知らずに……。
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