【完結】大好きな先輩に恋人ができたと知った夜、俺は大嫌いな先輩の親友に何故か抱かれていました。

赤牙

文字の大きさ
上 下
23 / 38

直史先輩の恋人

しおりを挟む
短い冬休みが終わり久しぶりに大学へと向かう。
新年を一緒に迎えてからは苳也先輩とはバイトの時に会うくらいだ。
相変わらず先輩はいつも通りだりな感じだが、苳也先輩から触れられる度に俺の心拍数は上がってしまう。

それが一体何を意味するのか……あまり深くは考えないでおこう……。

講義が終わり、サークルの部室へと向かうと声をかけられる。

「チカ~。今からサークル行くのか~?」

直史先輩の声にパッと顔を輝かせながら振り向けば、大好きな先輩の隣には恥ずかしそうに俯く黒髪の青年がいた。

「直史先輩も今からサークルですか?」
「うん。でも、俺は寄るところがあるから、後で顔を出すよ」

直史先輩はそう言うと、チラリと隣にいる青年に視線を向ける。

「チカにはまだ紹介してなかったけど……俺の恋人の奏くんだよ」
「「えぇ!?」」

直史先輩が突然隣にいる青年が恋人だなんて説明するもんだから、俺は驚き声を上げる。そして、恋人だと説明された奏さんも予想外だったのが慌てふためいていた。

「な、な、直史くん! な、なんでバラしちゃうの!」
「あれ? さっき千景に紹介するって言ったからそういう意味だと……」
「ち、違うよ! 友達として僕を千景くんに紹介するもんだと思ってたのに……」

今にも泣き出してしまいそうな奏さんに、慌てて俺がフォローに入る。

「あ、あの! 直史先輩からは恋人ができたって聞いていたんで……。その……男同士でも俺は気にしませんよ」

へへっと奏さんに笑顔を見せれば、少し表情が和らぐ。

「ありがとう千景くん。遅くなったけど、直史くんと同じ学科の奏と言います。どうぞよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」

奏さんは丁寧に頭を下げてくるので、俺も慌てて頭を下げる。

ってあれ? 先輩から恋人紹介されたのにあんまり胸が痛くない……。
目の前で奏さんと直史先輩は仲良さそうに話しているのに……。以前なら辛くなって泣きたくなりそうな場面なのになんでだろう……。

「チカ。突然こんなことしちゃってごめんな……」
「いえ、大丈夫ですよ先輩」

いつものように直史先輩に笑顔を見せれば、先輩はなんだか安心した表情を浮かべていた。



直史先輩は奏さんとの用事を済ませてからサークルに顔を出すと言い、俺は先に部室へと向かう。

直史先輩と奏さん幸せそうだったな……。

幸せそうに笑い合い寄り添う二人の姿を思い出しながら部室のドアを開ければ、退屈そうな顔をしてソファーにもたれかかっている苳也先輩の姿が目に入る。
俺の姿を見つけるなり、パッと顔を輝かせるといつものように「千景~」と言ってこちらへやってくる。

「遅かったな! 暇で暇で退屈してたんだぞ~」
「俺が来たって特に楽しい事なんてありませんよ」
「千景がいればそれだけで十分なんだよ」

嬉しそうに俺の隣にやってくる先輩が、最近はなんだか犬に思えてくる。この綺麗な黒髪でキリッとした顔を犬に例えるなら……シェパードかな?

口に出せば怒られてしまいそうな妄想をしながら、今日も俺は苳也先輩の隣で笑顔を浮かべる。



傍から見れば俺と苳也先輩も、直史先輩カップルに負けず劣らず仲良く幸せそうに寄り添っているなんて思われているなど知らずに……。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

始まりの、バレンタイン

茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて…… 他サイトにも公開しています

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

処理中です...