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従者Side ①

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「父さん…父さん…」

病気で寝たきりになってしまった父…。
医者からは今夜が峠だろうと言われている。
俺は込み上げてくる涙を必死に堪えるながら細くなった父の手を握りしめていると、弱々しく父が俺の手を握り返す。

「アレン…いいか…よく聞くんだ…。お前は私の『後継者』として育ててきた…いずれ…王族に使える従者となる…」
「うん…」
「私達の仕事は…主人となる者を幸せにする事だ…」
「うん…」
「いいか…今から言う事を決して忘れるな…。主人を死なせる・闇堕ち・不幸にしたら…『やり直し』だからな…」
「うん……え?え?」
「まぁ…色々と大変だけど……頑張れ……」
「父さん…?え?父さん?」

最後に父はそう言い残し息を引き取った……。




父が残した最後の言葉の意味が分からないまま俺は13歳になり第二王子の従者に任命された。
実は父も現国王の従者だった。

俺の一族から選ばれた『後継者』は必ず王族の従者につく事になっている。
『後継者』をどの王子につけるかの決定権は国王のみが持っており、その決定は覆す事ができない事になっている。

そして…『後継者』が従者に就く王子は、国王になる確率が高いと言われている。
玉座を狙う者にとっては、『後継者』が自分に仕えるのかはとても大切なことなのだ。


そんな王族にとってはラッキーボーイな俺が仕えるようになった第二王子はまだ10歳と幼い。
だが10歳の割には少し大人びた発言をする場面もあり、ポーカーフェイスであまり愛想はよくない。

王子に仕える為の儀式を終え、俺も他の従者と混じって仕事をしていく。
俺の事はなんだか特別な存在として見られがちだが、一般人とそれほど変わらない能力の俺は普通に仕事をしながら普通に生活をしている。

王家の従者は礼儀などには厳しいが雇われている人数は多いので一人一人の仕事量はそんなには多くない。
慣れてしまえばサボる事も可能!
それなのに給料はいい!

そりゃあ王家の従者を希望する人が多い訳だ…俺は『後継者』って事で厳しい試験や面接を免れて従者になれてしまった。

この時ばかりは『後継者』になれた事を喜んだ。

父さんは色々と大変だとか言ってたけど…思ったよりも楽勝そうじゃん!

そんな呑気な事を考えながら俺は今日も楽しく仕事をする。父さんが言い残した最後の言葉も忘れて…

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