女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

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第三章

一人での旅立ち

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  とある世界の中心点で、「この宇宙、上手く広がらないんだ」と女神さまがいった。

 創ってから10億年は経つのに、直系1億光年ほどしかないそうだ。
 このままでは縮んで消滅するかもしれないと。
 うーん、スケールが大きすぎて分からん。

 いきなり宇宙空間に連れてこられたエルフとゴブリン、ティルとクルケットはわけが分からず怯えていた。

「女神さまぁーここ何処ですか? 地面がありませんけど」
 こっちがティルで。

「なんですか? 何が起きたですか!?」
 全力でユニコーンに掴まっていたのがクルケット。

 驚く二人の反応が面白くのか、女神さまはとても楽しそう。
 それから女神さまは、黒い球体を浮かべて取り出した。
 これが今いるこの宇宙だそうだ。

「少しだけ拡げてやれば、ここももっと賑やかになるだろう」
 そう言いながら、女神さまは球体にキスして息を吹き込こむ。

 本物の神の祝福を見た。
 手のひらの球体が少し広がると、俺の周りのあちこちで光が生まれる。
 あの光の一つ一つが星になるのかぁ……。

「これでよし!」
 満足した女神さまに連れられて、次の世界に向かう。

 それにしても、これだけの力がありながらなんで……。
 前回の疑問を口に出した。

「女神さま、なんでいきなり力が使えなくなったのです?」
「あれはねえ、あの世界の神が悪いんだ。わたしが行くって伝えてたのに」

「どういうことですかね?」
 他人のせいにする女神に説明を求めてみた。

「わたしの力は無限だけど、狭い世界を壊さずに使うにはちゃんと導線を引いておかないと駄目なの。それをあの世界の神がサボったのだ」

 分かりやすくいうと、財閥本家の令嬢――女神さま――が地方に行ったら、その土地の子会社のそのまた下の担当者が迎えの手配を忘れてた。
 そんな感じらしい。

「神さまって、サボるんですね……」
 俺の感想に、女神さまは意外そうな顔で返事をした
「何を言ってる? 働き者の神なんているわけないじゃないか」と。


 そして……その言葉の通り、女神さまは世界を救うのに飽きた。

「もーやだ。もう一歩も動きたくない! 今回は、ゆうた、お前がいってきて!」
「駄目ですよ。ちょっと行ってひょいっとやれば良いんですから、お願いしますよ!」

「いやだ。だって、洞窟の底に居るんだぞ。虫が出る!」
 宿屋のベッドに落ち着いた女神さまは、てこでも動きそうにない。

 そこへ、ティルが大きな壺を抱えてやってきた。
「女神さまぁ、お言いつけ通りに買って来ましたよ。この世界で一番良いお酒です!」

 別の世界を滅ぼしかけたエルフ娘は、女神さまの下で真面目に働いていた。
 贖罪かと思っていたが、そうでもないらしい。

「この人に気に入られれば、どっかの世界の神くらいなれそうじゃない? ユウタも協力してよね」
 向上心の塊のキャリアウーマンみたいなことを言い出す。
 まあ実際、悪行のほとんどは操られてただけではあるが、変わり身の早さには感激すらする。

 ベッドの上であぐらをかき、酒壺を抱えて茶碗で飲み始める女神さま……。
 神さまが酒好きってのは本当だったんだなあ。

 仕方ない、今回くらい代わりに行ってきますか。
 よっこらせと立ち上がると、ゴブリンのクルケットがじっと見つめてくる。
 こちらの子供に見えるゴブリンは、エルフと違って素晴らしく性格が良い。

「あのー、自分も付いて行きましょうか? 荷物持ちやご飯を作るくらいならできるです」
「大丈夫だよ。クルケットは、ここで女神さまが飲み過ぎないように見ててね」
 心配ですって目をしたクル坊の頭をぽんっと撫でた。

「おー行くか、行ってくれるか! ならこれも持ってけ!」と、女神さまが一振りの剣と槍を創りだした。

「そっちは何でも斬れる剣、そっちの槍はトドメに使う。他にも適当に能力を授けたから頑張ってねー」

 酒をぐいぐい飲んだお陰か、思いもよらぬ大判振る舞い。
 これ、かつて俺が欲しいといってキレた武器じゃないですか。
 それなら最初からくれれば良かったのに……ま、いいか。

 女エルフをはべらせて宴会を始めた女神さまと、せっせとおつまみを作るミニゴブリンを部屋に残して、俺は宿を出る。

 目的地は直ぐそこ。
 町外れにある巨大な塔と穴のセット。
『ウェスタの天塔とエスタの底穴』と呼ばれるもので、この世界の冒険者のメッカだ。

 この穴の一番奥に、他所から来た変なモノが居着いたらしい。
 大きな害になる前に取り除く、それが今回のクエスト。

「やっと異世界冒険らしくなったなあ……一人だけど」
 槍と剣だけを持って、俺は大穴に向けて歩きだした。


 少し経って、俺は宿屋へ戻ってきた。

「すいません女神さま。そんな装備では駄目だと言われて、ダンジョンに入れてもらえませんでした。経費ください、鎧を買います」

 俺の身体の方は、以前貰った力で防御カンスト状態だが、塔と穴を管理する冒険者ギルドはそんなの知ったこっちゃない。
『剣一本で挑むなど認められん』の一言で追い返されてしまったのだ。

 完全に出来上がっていた女神さまは、景気よく空中に宝石をバラ撒く。
 俺が幾つか拾うと同時に、ティルも何個かさっと拾って隠す。

 この性悪エルフめ、お前も穴底へ連れていってやろうか。

 まあいいや、直ぐに解決するだろう。
 今回は、女神の全権代理ってほどの能力をもらったことだし。

「じゃ、いってきまーす」
 実のところ、再び旅立つ俺の心はわくわくしていた。
 最初に想像してたような冒険が待ってる気がしてたから。
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