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本編
もう一人の幼馴染
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アリスと会った後、クラリッサには妙な違和感があって、それをクリアにするためにもう一人の幼馴染に相談することにした。ダニエルは、相手がイーサンではないから、と、第二王子の護衛に戻った。
クラリッサのもう一人の幼馴染、と言うのは、母の友人の娘で、ダニエルとは何の関係もない。彼女の兄は優秀さを見込まれて第一王子の側近を打診されたものの、断って、研究者になった変わり者。
彼女自身も才女として有名で、クラリッサが何かに悩んだ時には常に相談に乗ってもらう頼りになる姉のような存在だ。
「ごめんね、フローラ。貴女にしか相談できなくて。」
「いいわよ、貴女なら。いつでも大歓迎。それで、何かトラブルにでも巻き込まれてる?」
「実は、今婚約者と上手くいってないの。」
「ああ、フラン侯爵家のイーサンね。あの幼馴染のアリス、とかいう子爵令嬢の件ね。行方不明になったとかで、大騒ぎしていた。」
「やっぱり話は届いてるのね。」
「ええ、あれほど騒いだらね。それで、それが原因で会えなくなったとか?」
「それはそうなんだけど、ちょっと事態が変わってしまって……」
フローラに、自分の今までのことと、アリスに会った時に感じた違和感を告げると、胸がスッキリした。
「話していると、お腹が空いてしまったわ。」
出されたクッキーをサクサクと食べていると、フローラに笑われる。
「リスみたいで可愛いわ。」
「いつもはもう少し、頑張ってツンとしているのよ。ただここのクッキーは大好物だから。」
「わかってるわ。エイプリルの新作なのよ。彼女も喜ぶわ。」
エイプリルというのは、このクッキーの作者でフローラの侍女をしている。
「話を聞いた限りでは確かに怪しいわね。でも、一番私が気になるのは……貴女、まだあの男と会っているの?」
「あの男って、ダニエル?」
「そう、貴女の幼馴染。ダニエル・ファーリ。この件を調べたのは、ダニエルだったわね。貴女がダニエルを信じているのは何故?彼が嘘をついているかも、とは思わなかった?」
クラリッサの困惑を他所にフローラはダニエルが怪しいという。
「貴女の感じた違和感って、全てそれで辻褄が合うものよ。」
「でも、ダニエルが私に嘘をつく意味なんてある?」
「わからないわ。でも、ないとは言い切れる?もう一度考えてみればわかるんじゃない?
真実の中に嘘を少し混ぜると違和感があっても、どれが嘘か分かりにくい。一番いいのは、もう一人真実を知る人に話を聞くことができれば良いのだけれど。誰かいないかしらね。」
クラリッサが感じた違和感はとりあえず四つ。
まず一つ目には、アリス嬢の状態だ。彼女は痛々しい風貌だった。骨と皮にしか見えなかった。それなのに、カーテシーは完璧だった。カーテシーってそれなりに筋肉が必要で、本当に骨と皮なら、出来ないものだ。これは、そこまで回復してから会ったと言われたらそれまで、の小さな違和感ではあったが。
二つめは、彼女の救出方法。これは偶々アリス嬢のことを探っていたダニエルが偶々彼女を助けようとした侍従を見つけ、匿ったというもの。
確かにその前日に、ダニエルにアリス嬢のことを話したクラリッサだからこそ、その話を信じたのだが。タイミングが良すぎない?
三つ目は、そもそもの話だが、亡くなった侯爵令息は、第二王子のご学友であった記録がないのである。最初はダニエルの言い間違いかと思ったが、そうではなかった。彼は第二王子とは別の学園に通っていたというのに、ご学友というのは些か変ではないのか。
そして四つ目。アリス嬢の保護を王宮内で行っていること。ミリア嬢がまだ見つかっていなくて、危ないから保護した、と言われたが、それなら何故、彼女は隠されていないのか。まるで第二王子の婚約者かのように振る舞う彼女は、奇妙以外の何者でもなくて、クラリッサは動揺した。
彼女はずっと虐げられてきた被害者だから、今の環境にはしゃぐのはわかる。だが、謝りながらも此方を下に見ているような振る舞いには違和感が残る。
「ああいう態度の人を、知ってる気がするのよ。誰だったかな。凄く似てるって思って……」
それはさておき。
彼女の状況を調べたのはダニエル。でもそれが全て嘘ならば、彼はクラリッサをどう利用したいのだろう。そもそもダニエルはあの日、何をしに家に来たのだろう。
クラリッサのもう一人の幼馴染、と言うのは、母の友人の娘で、ダニエルとは何の関係もない。彼女の兄は優秀さを見込まれて第一王子の側近を打診されたものの、断って、研究者になった変わり者。
彼女自身も才女として有名で、クラリッサが何かに悩んだ時には常に相談に乗ってもらう頼りになる姉のような存在だ。
「ごめんね、フローラ。貴女にしか相談できなくて。」
「いいわよ、貴女なら。いつでも大歓迎。それで、何かトラブルにでも巻き込まれてる?」
「実は、今婚約者と上手くいってないの。」
「ああ、フラン侯爵家のイーサンね。あの幼馴染のアリス、とかいう子爵令嬢の件ね。行方不明になったとかで、大騒ぎしていた。」
「やっぱり話は届いてるのね。」
「ええ、あれほど騒いだらね。それで、それが原因で会えなくなったとか?」
「それはそうなんだけど、ちょっと事態が変わってしまって……」
フローラに、自分の今までのことと、アリスに会った時に感じた違和感を告げると、胸がスッキリした。
「話していると、お腹が空いてしまったわ。」
出されたクッキーをサクサクと食べていると、フローラに笑われる。
「リスみたいで可愛いわ。」
「いつもはもう少し、頑張ってツンとしているのよ。ただここのクッキーは大好物だから。」
「わかってるわ。エイプリルの新作なのよ。彼女も喜ぶわ。」
エイプリルというのは、このクッキーの作者でフローラの侍女をしている。
「話を聞いた限りでは確かに怪しいわね。でも、一番私が気になるのは……貴女、まだあの男と会っているの?」
「あの男って、ダニエル?」
「そう、貴女の幼馴染。ダニエル・ファーリ。この件を調べたのは、ダニエルだったわね。貴女がダニエルを信じているのは何故?彼が嘘をついているかも、とは思わなかった?」
クラリッサの困惑を他所にフローラはダニエルが怪しいという。
「貴女の感じた違和感って、全てそれで辻褄が合うものよ。」
「でも、ダニエルが私に嘘をつく意味なんてある?」
「わからないわ。でも、ないとは言い切れる?もう一度考えてみればわかるんじゃない?
真実の中に嘘を少し混ぜると違和感があっても、どれが嘘か分かりにくい。一番いいのは、もう一人真実を知る人に話を聞くことができれば良いのだけれど。誰かいないかしらね。」
クラリッサが感じた違和感はとりあえず四つ。
まず一つ目には、アリス嬢の状態だ。彼女は痛々しい風貌だった。骨と皮にしか見えなかった。それなのに、カーテシーは完璧だった。カーテシーってそれなりに筋肉が必要で、本当に骨と皮なら、出来ないものだ。これは、そこまで回復してから会ったと言われたらそれまで、の小さな違和感ではあったが。
二つめは、彼女の救出方法。これは偶々アリス嬢のことを探っていたダニエルが偶々彼女を助けようとした侍従を見つけ、匿ったというもの。
確かにその前日に、ダニエルにアリス嬢のことを話したクラリッサだからこそ、その話を信じたのだが。タイミングが良すぎない?
三つ目は、そもそもの話だが、亡くなった侯爵令息は、第二王子のご学友であった記録がないのである。最初はダニエルの言い間違いかと思ったが、そうではなかった。彼は第二王子とは別の学園に通っていたというのに、ご学友というのは些か変ではないのか。
そして四つ目。アリス嬢の保護を王宮内で行っていること。ミリア嬢がまだ見つかっていなくて、危ないから保護した、と言われたが、それなら何故、彼女は隠されていないのか。まるで第二王子の婚約者かのように振る舞う彼女は、奇妙以外の何者でもなくて、クラリッサは動揺した。
彼女はずっと虐げられてきた被害者だから、今の環境にはしゃぐのはわかる。だが、謝りながらも此方を下に見ているような振る舞いには違和感が残る。
「ああいう態度の人を、知ってる気がするのよ。誰だったかな。凄く似てるって思って……」
それはさておき。
彼女の状況を調べたのはダニエル。でもそれが全て嘘ならば、彼はクラリッサをどう利用したいのだろう。そもそもダニエルはあの日、何をしに家に来たのだろう。
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