幼馴染は不幸の始まり

mios

文字の大きさ
上 下
6 / 30
本編

もう一人の幼馴染

しおりを挟む
アリスと会った後、クラリッサには妙な違和感があって、それをクリアにするためにもう一人の幼馴染に相談することにした。ダニエルは、相手がイーサンではないから、と、第二王子の護衛に戻った。

クラリッサのもう一人の幼馴染、と言うのは、母の友人の娘で、ダニエルとは何の関係もない。彼女の兄は優秀さを見込まれて第一王子の側近を打診されたものの、断って、研究者になった変わり者。


彼女自身も才女として有名で、クラリッサが何かに悩んだ時には常に相談に乗ってもらう頼りになる姉のような存在だ。

「ごめんね、フローラ。貴女にしか相談できなくて。」

「いいわよ、貴女なら。いつでも大歓迎。それで、何かトラブルにでも巻き込まれてる?」

「実は、今婚約者と上手くいってないの。」

「ああ、フラン侯爵家のイーサンね。あの幼馴染のアリス、とかいう子爵令嬢の件ね。行方不明になったとかで、大騒ぎしていた。」

「やっぱり話は届いてるのね。」
「ええ、あれほど騒いだらね。それで、それが原因で会えなくなったとか?」
「それはそうなんだけど、ちょっと事態が変わってしまって……」

フローラに、自分の今までのことと、アリスに会った時に感じた違和感を告げると、胸がスッキリした。

「話していると、お腹が空いてしまったわ。」

出されたクッキーをサクサクと食べていると、フローラに笑われる。

「リスみたいで可愛いわ。」
「いつもはもう少し、頑張ってツンとしているのよ。ただここのクッキーは大好物だから。」
「わかってるわ。エイプリルの新作なのよ。彼女も喜ぶわ。」

エイプリルというのは、このクッキーの作者でフローラの侍女をしている。

「話を聞いた限りでは確かに怪しいわね。でも、一番私が気になるのは……貴女、まだあの男と会っているの?」
「あの男って、ダニエル?」
「そう、貴女の幼馴染。ダニエル・ファーリ。この件を調べたのは、ダニエルだったわね。貴女がダニエルを信じているのは何故?彼が嘘をついているかも、とは思わなかった?」

クラリッサの困惑を他所にフローラはダニエルが怪しいという。

「貴女の感じた違和感って、全てそれで辻褄が合うものよ。」

「でも、ダニエルが私に嘘をつく意味なんてある?」
「わからないわ。でも、ないとは言い切れる?もう一度考えてみればわかるんじゃない?

真実の中に嘘を少し混ぜると違和感があっても、どれが嘘か分かりにくい。一番いいのは、もう一人真実を知る人に話を聞くことができれば良いのだけれど。誰かいないかしらね。」

クラリッサが感じた違和感はとりあえず四つ。

まず一つ目には、アリス嬢の状態だ。彼女は痛々しい風貌だった。骨と皮にしか見えなかった。それなのに、カーテシーは完璧だった。カーテシーってそれなりに筋肉が必要で、本当に骨と皮なら、出来ないものだ。これは、そこまで回復してから会ったと言われたらそれまで、の小さな違和感ではあったが。

二つめは、彼女の救出方法。これは偶々アリス嬢のことを探っていたダニエルが偶々彼女を助けようとした侍従を見つけ、匿ったというもの。

確かにその前日に、ダニエルにアリス嬢のことを話したクラリッサだからこそ、その話を信じたのだが。タイミングが良すぎない?

三つ目は、そもそもの話だが、亡くなった侯爵令息は、第二王子のご学友であった記録がないのである。最初はダニエルの言い間違いかと思ったが、そうではなかった。彼は第二王子とは別の学園に通っていたというのに、ご学友というのは些か変ではないのか。

そして四つ目。アリス嬢の保護を王宮内で行っていること。ミリア嬢がまだ見つかっていなくて、危ないから保護した、と言われたが、それなら何故、彼女は隠されていないのか。まるで第二王子の婚約者かのように振る舞う彼女は、奇妙以外の何者でもなくて、クラリッサは動揺した。

彼女はずっと虐げられてきた被害者だから、今の環境にはしゃぐのはわかる。だが、謝りながらも此方を下に見ているような振る舞いには違和感が残る。

「ああいう態度の人を、知ってる気がするのよ。誰だったかな。凄く似てるって思って……」

それはさておき。

彼女の状況を調べたのはダニエル。でもそれが全て嘘ならば、彼はクラリッサをどう利用したいのだろう。そもそもダニエルはあの日、何をしに家に来たのだろう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

婚約者様は連れ子の妹に夢中なようなので別れる事にした。〜連れ子とは知らなかったと言い訳をされましても〜

おしゃれスナイプ
恋愛
事あるごとに婚約者の実家に金の無心をしてくる碌でなし。それが、侯爵令嬢アルカ・ハヴェルの婚約者であるドルク・メルアを正しくあらわす言葉であった。 落ち目の危機に瀕しているメルア侯爵家であったが、これまでの付き合いから見捨てられなかった父が縁談を纏めてしまったのが全ての始まり。 しかし、ある日転機が訪れる。 アルカの父の再婚相手の連れ子、妹にあたるユーミスがドルクの婚約者の地位をアルカから奪おうと試みたのだ。 そして、ドルクもアルカではなく、過剰に持ち上げ、常にご機嫌を取るユーミスを気に入ってゆき、果てにはアルカへ婚約の破談を突きつけてしまう事になる。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

window
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o)) 10万字未満の中編予定です。投稿数は、最初、多めですが次第に勢いを失っていくことでしょう…。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

学院内でいきなり婚約破棄されました

マルローネ
恋愛
王立貴族学院に通っていた伯爵令嬢のメアリは婚約者であり侯爵令息、さらに生徒会長のオルスタに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかも学院内のクラスの中で……。 慰謝料も支払わず、さらに共同で事業を行っていたのだがその利益も不当に奪われる結果に。 メアリは婚約破棄はともかく、それ以外のことには納得行かず幼馴染の伯爵令息レヴィンと共に反論することに。 急速に二人の仲も進展していくが……?

子供の言い分 大人の領分

ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。 「はーい、全員揃ってるかなー」 王道婚約破棄VSダウナー系教師。 いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。

処理中です...