お久しぶりです、元旦那様

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侍女 アリア

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あれ!元旦那様ではありません?やっぱりー、そうだと思ったんですよ。見た目は随分と変わりましたが、わかりますよ。その卑屈そうな歩き方!

同じ貴族なのに奥様とは全く違うんですもの。私正直に言うと奥様付きで良かったとつくづく思っていたんです。

だって旦那様付きだと、後ろからついていくのに、笑いを堪えるのが大変だったんですもの。

歩き方は教師は注意してくれなかったんですか?

不敬だ?いや、そうですね。失礼でしたね。すみません。

謝る気が感じられない?いえ、悪いとは思ってますよ、ええ。すみません。でもずっと思っていたことが言えてスッキリしてるんです。すみませんねぇ。

え?奥様の部屋ですか?

奥様がいらっしゃらないのに、部屋に?馬鹿なこと言っちゃいけませんよ。盗みは犯罪ですよ?

預けていたものを返してもらう?怪しいなぁ。そんなこと言って金目の物を物色したいんでしょう?だってもう何年経ったと思います?離縁されてすぐならともかく、今更ですよ。最近思い出したとか言われても。逃走資金が必要だから、ですか?

あのライラ様でしたっけ。彼女を殺したのは旦那様ですよね。

侯爵家の道楽息子が金蔓の彼女を手放す訳はありませんし、グレーゼル商会も甘い汁を吸っていた側ですし、下手人は搾り取られていた旦那様しかいないと、新聞には書いていましたよ。

あ、そうだ。私、新聞読めるようになったんです。旦那様がいる頃は、読めるには読めたんですけど難しい単語でつかえたりしていたんですが、奥様に教えて貰いまして。侍女の中には、実家が貧しくて学園に通えない者もいましたから。旦那様のお気に入りのアンも、伯爵家に移ってから勉強に励んでいるそうです。

彼女が居なくなって、話相手が減ってしまったんですけど、今は読書の楽しみができました。教育って大事ですよね。人によりますけど。

旦那様は折角高い授業料を払って通った学園でも、お金をドブに捨てるように、全く身につかなかったのですもの。残念でなりません。

最高峰の教育でも、人によっては何の役にも立たないなんて、世知辛い世の中ですよ。

そんな話はいいから中に入れろ?嫌ですよ、そんな一介の侍女にそんな権限あると思います?エルナさんに言えば良いじゃないですか。もう断られたんですか、なら答えは出てるじゃないですか。

私とあなたの仲ですか?気持ち悪い言い方しないでください。今鳥肌が立ちましたよ。怖い怖い。気持ち悪。

旦那様は忘れているかもしれませんが、私、実は子供の頃からこの伯爵家にいるんですよ。母が旦那様付きだったのです。覚えていませんよね。確か幼い頃に、解雇されましたから。

昔のことですが、旦那様が凍った湖に落ちたことがありまして、罰を受けた使用人の中に母がいたのです。今は別の屋敷にて侍女を続けているのですが、一時は大変だったんです。紹介状が出なかったもので。紹介状のない使用人は、貴族は雇いません。痛くもない腹を探られ、ある貴族の方に救って貰わなければ、今頃どうなっていたか。



旦那様が湖に落ちたのは、ライラ様がイタズラ半分で落とした子供に足を掴まれたからとお聞きしました。



旦那様はずぶ濡れで帰ってこられましたが、ライラ様も旦那様ももう一人の子供のことはお話にならなかった。可哀想に彼女は凍った湖の中に閉じ込められ、小さな命を落としました。

覚えていらっしゃいます?覚えていない……そうですか。そうですよね。そうでなければ、こうなりはしませんでしたね。

旦那様と話をしていると疲れます。早く帰って頂けます?まだ仕事があるんです。旦那様と違って暇じゃありませんので。

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