どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)

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侯爵家同士の婚約

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リガン侯爵家とバセット侯爵家の婚約はそもそも王命によるものだ。侯爵家同士の婚約とはいえ、その成り立ちも歴史も随分と異なる両家。

その頃はまだ王太子だった第一王子の側近となったノエルの後ろ盾となったのが古くからある、産業の中心にいるバセット侯爵家。ノエルと、エリカが婚約したのは、偶々年が近かっただけで、互いに何の思い入れもないのだけれど、王子の後ろ盾としては些か弱いリガン侯爵家からすれば、バセット侯爵家に頼りきり、という現実は、目を逸らしたい、と思う恥ずべきことだったのだろう。

ノエルが事あるごとに、エリカを馬鹿にしようとすることには気づいていた。コンプレックスの裏返しだと理解していたが、同時に、途轍もなく器の小さい男だと、認識していた。

だからといって、リガン侯爵家は、特に突出した才能はないのである。バセット侯爵家を利用してやろうという気概もなく、ただ羨んでいるだけ。厚かましくも、恩恵を受けたいのか、偶に無茶なお願いをしては、顰蹙を買っていることにすら気づかない。

つくづく、どうしてこんな男を第一王子の側近に選んだかは謎だった。

「一番、丁度良かったんだよ。」
兄曰く、益になるような人物は害にもなる可能性があるが、彼にはそれがない。
「いうことを聞く、お飾りには丁度良いってこと?」
「ああ、王宮でうまく立ち回る必要は彼にはないからね。血筋と強力な後ろ盾が彼の実力をお膳立てしたら、あとは流されるままに操れる軽い神輿で充分なんだよ。」

エリカはそうまで言われる婚約者に少しだけ同情したが、反論はしなかった。確かに、彼個人というより、リガン侯爵家は皆頭がお花畑すぎる、と以前から思っていた。

「リガン侯爵家は、何というか、皆高位貴族の自覚がないように思うわ。」

侯爵家としての歴史が浅いわけでもないのに、何故か政略結婚に関することだけ知識が薄いのは、多分気の所為ではない。

「あの家は皆恋愛結婚だからな。」
「それは……我が家もそうですし……理由になります?」
「奴ら、というかあの家はそう捉えたんだろう。恋愛結婚できないなんて、可哀想。きっとあの女がごり押しして、貴方を望んだのよ、とか何とか。何故あの男が歪んだ自尊心を持ったのか、それは多分、第一王子と似た理由だよ。」
「それしか誇れるものがない。ある意味、自らの能力をちゃんと把握できているってことね。」
「まあ、それでも足りないがな。」

リガン侯爵家が愚かなのは、政略結婚の裏側に自分達がいる、と思い込んでいる点だ。自分達には能力がないとちゃんとわかっているにも関わらず、自分達を求めるのは当たり前、というその態度。残念ながら、彼らには何の魅力も旨味もないというのが、わがバセット侯爵家の見解。

一つだけ旨味があるとすれば、王命を受け入れることで、王家に貸しを作ったことぐらいだろうか。その貸しは、今回の王子妃に纏わる一連の出来事によって大いに膨れ上がってはいるのだけれど。



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