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秘密の関係
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秘密、というのは往々にして、秘密と思っているのは一部の人間だけで周りには知られていると言うことはよくある。
王太子妃になった元男爵令嬢を囲んでいた彼らは皆周りからは「あんな女に骨抜きにされて可哀想(笑)」だと思われていた。彼らは皆一様に「彼女は王子の愛する方で、私とは友人である。」と言っていたが、その表情や態度からそれが真実ではないと、読み解かれていた。
元男爵令嬢は、学園にいた頃から、女性の友人はいなかった。それは王子妃になってからも変わらない。お茶会を開こうにも、招待客からは断られ、咎めると、苦情が届く。それは学園時代にやりたい放題をしていたことからの結果なのだが、やられた方は覚えていても、やった側が覚えていないもの。いつものやり方といえば、王子に泣きつくばかり。
王子は学園時代には彼女に溺れていても、だんだん日が経つにつれ、冷静になって来た。自分が立っている場所が薄氷の上だと漸く気がついた。
気がついたところでどうにもならないのは、彼がしてきた、いやしてこなかった結果といえよう。
面倒なことは全て当時の婚約者に任せて自分はただひたすら流されてきた。その末路と思えば、自分が今更どうあがこうとも王太子に返り咲くどころか、王子のままですらいられないことはわかっていた。
「第一王子の処分として、王太子位を剥奪すると同時に子種の処理をした。」
それは新たに王太子となった元婚約者の兄から言われた言葉。
余程のことがなければ王子のまま、飼い殺されるぐらいで済んだのに、何故か妻は妊娠した。
自分の子ではない。だって自分にはもう子は持てない。
思い当たる男はいくらでもいた。貴族令嬢なら婚約者以外の男とは深く交流をしない。彼女の気さくで令嬢らしくない部分は長所でもあったが、こうなると、それが浅はかな考えであったとわかる。
婚姻時には妊娠していなかった彼女の相手は限られていた。リガン侯爵家のノエルは、当時の婚約破棄事件で唯一、婚約破棄を免れた人物だった。
自分を含め、男爵令嬢を巡り、多くの婚約が解消や破棄の憂き目にあった。そこにいて、バセット侯爵家は静観を決め込んでいた。エリカ・バセット侯爵令嬢は、その昔、王子の婚約者候補に選ばれたこともある才女だ。その後、今の王太子が婚約の打診をしようとしている事実を知り、急いでリガン侯爵家との婚約を王命を使ってまで阻止した、というのに。
産まれた子はやはり、ノエル・リガンによく似ていた。彼女はその事実を知ってか知らずか腹を痛めて産んだ子だというのに、興味を失くしたように見える。赤子は可愛いとは思うものの、子を見ればノエルの顔を思い出してしまい、怒りで抑えが効かなくなる。
思えばあの時、気づくべきだったのだ。ノエルを王子妃に引き合わせた人間がいたことに。彼らは明確な悪意を持って、此方を陥れようとしたことに。
驚くことに、それから半年も置かず、また彼女は妊娠した。ノエルは、王命で婚約破棄をしてからは登城していない。思い当たる人物は、二人。どちらも、学園時代、自分に隠れて彼女と口付けを交わしていた男である。彼らの婚約者は既に別の男と結婚し、幸せに暮らしていると聞く。彼らには婚約者はいない。嫡男ではあるが、兄弟に後継を奪われ、今は補佐に甘んじている彼らが何故王子妃に逢えたのか。
王子は嫌な予感に包まれた。
王太子妃になった元男爵令嬢を囲んでいた彼らは皆周りからは「あんな女に骨抜きにされて可哀想(笑)」だと思われていた。彼らは皆一様に「彼女は王子の愛する方で、私とは友人である。」と言っていたが、その表情や態度からそれが真実ではないと、読み解かれていた。
元男爵令嬢は、学園にいた頃から、女性の友人はいなかった。それは王子妃になってからも変わらない。お茶会を開こうにも、招待客からは断られ、咎めると、苦情が届く。それは学園時代にやりたい放題をしていたことからの結果なのだが、やられた方は覚えていても、やった側が覚えていないもの。いつものやり方といえば、王子に泣きつくばかり。
王子は学園時代には彼女に溺れていても、だんだん日が経つにつれ、冷静になって来た。自分が立っている場所が薄氷の上だと漸く気がついた。
気がついたところでどうにもならないのは、彼がしてきた、いやしてこなかった結果といえよう。
面倒なことは全て当時の婚約者に任せて自分はただひたすら流されてきた。その末路と思えば、自分が今更どうあがこうとも王太子に返り咲くどころか、王子のままですらいられないことはわかっていた。
「第一王子の処分として、王太子位を剥奪すると同時に子種の処理をした。」
それは新たに王太子となった元婚約者の兄から言われた言葉。
余程のことがなければ王子のまま、飼い殺されるぐらいで済んだのに、何故か妻は妊娠した。
自分の子ではない。だって自分にはもう子は持てない。
思い当たる男はいくらでもいた。貴族令嬢なら婚約者以外の男とは深く交流をしない。彼女の気さくで令嬢らしくない部分は長所でもあったが、こうなると、それが浅はかな考えであったとわかる。
婚姻時には妊娠していなかった彼女の相手は限られていた。リガン侯爵家のノエルは、当時の婚約破棄事件で唯一、婚約破棄を免れた人物だった。
自分を含め、男爵令嬢を巡り、多くの婚約が解消や破棄の憂き目にあった。そこにいて、バセット侯爵家は静観を決め込んでいた。エリカ・バセット侯爵令嬢は、その昔、王子の婚約者候補に選ばれたこともある才女だ。その後、今の王太子が婚約の打診をしようとしている事実を知り、急いでリガン侯爵家との婚約を王命を使ってまで阻止した、というのに。
産まれた子はやはり、ノエル・リガンによく似ていた。彼女はその事実を知ってか知らずか腹を痛めて産んだ子だというのに、興味を失くしたように見える。赤子は可愛いとは思うものの、子を見ればノエルの顔を思い出してしまい、怒りで抑えが効かなくなる。
思えばあの時、気づくべきだったのだ。ノエルを王子妃に引き合わせた人間がいたことに。彼らは明確な悪意を持って、此方を陥れようとしたことに。
驚くことに、それから半年も置かず、また彼女は妊娠した。ノエルは、王命で婚約破棄をしてからは登城していない。思い当たる人物は、二人。どちらも、学園時代、自分に隠れて彼女と口付けを交わしていた男である。彼らの婚約者は既に別の男と結婚し、幸せに暮らしていると聞く。彼らには婚約者はいない。嫡男ではあるが、兄弟に後継を奪われ、今は補佐に甘んじている彼らが何故王子妃に逢えたのか。
王子は嫌な予感に包まれた。
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