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3 呪いの指輪
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「な……っ、これっ!」
慌てて指輪を抜き取ろうとしたネフィリアの手首を掴んで、クロヴィスはにっこりと笑いながら首をかしげる。
「油断は禁物だよ、ネフィリア。僕がどれほどきみを手に入れたいと思ってるか、よく知ってるでしょ?きみがなかなかうなずいてくれないからさ、そろそろ少し強引な手段に出ようと思って」
「離し……っ」
息がかかるほどに顔を近づけられて、ネフィリアは逃げるように身体をよじる。だけど、掴まれた手を強く引かれて、あっという間にクロヴィスの腕の中に閉じ込められてしまった。
「や、嫌……っ、指輪、外してっ」
半泣きになりながらネフィリアが訴えると、クロヴィスは楽しそうに目を細めた。
「僕と結婚してくれるって今ここで誓うなら、外してあげてもいいよ」
「それは、無理……っ」
「あはは、強情だね。じゃあ指輪はそのままで。そろそろ効いてきたんじゃない?身体、熱くなってきた?」
クロヴィスの言葉に、ネフィリアは必死に首を振る。
だけど、指輪のはめられた左手から熱いものが体内に流れ込んでくるのが分かる。クロヴィスの瞳によく似た深い紫の石の正体は、魔石。恐らく、強力な催淫作用を持つ呪いがかけられている。
三日前にこの指輪を持ってやってきたクロヴィスを、冷たく追い返したはずなのに、諦めていなかったらしい。
魔女であるネフィリアは、魔法薬には耐性があるけれど、呪いには耐性がない。普通の人間よりは多少強いものの、それでもこの呪いに抗うのはかなりの精神力を必要とする。
「ほら、顔が赤くなってきた。そういう顔も可愛いね、ネフィリア。すごくそそる」
懸命に呪いに抗おうとするネフィリアの集中力を削ぐように、クロヴィスが額や頬などあちこちに口づけを落とす。
「……っ、呪いなんて、卑怯だわ」
「きみが素直に僕を受け入れてくれないから、いけないんだよ。何が不満なのさ。これ以上ないくらい愛してあげるし、きみの仕事を奪うことだってしないよ」
「私、は……っ」
熱にうかされてぼうっとしてきた頭で、ネフィリアは必死に言葉を紡ごうと努力する。
「だって、いつか私を捨てて、いってしまう、もの……」
小さく震えた唇から、こぼれ落ちた言葉。
今はネフィリアを見てくれているクロヴィスだって、きっと近い将来離れていくはずだ。だって、今までネフィリアに愛を囁いてくれた男たちは皆、そうだったから。
愛していると囁かれ、身体を重ねて、将来の約束をしたことだってある。だけど、寿命の長さが違う魔女と人間が、共に生きていくことは難しい。いつだって、男たちはあっという間に新しい人間の恋人を見つけて去っていった。何度も期待して、裏切られて、傷ついて。だからネフィリアは、人間を愛することはしないと決めたのだ。
「時々そういう弱さを見せるから、たまらないんだよね」
小さくつぶやいたクロヴィスは、ひょいっとネフィリアの身体を抱えあげた。行き先は奥の部屋のベッドの上。ついでに表の看板の灯りを消して、閉店扱いにもしておく。
催淫の呪いにおかされたネフィリアは、それでもまだ必死に抗おうとしている。だけど体内の呪いに意識を向けすぎて、自分がベッドに運ばれていることには気づいていないようだ。
しっかりとしているようで、どこか抜けているこの魔女を、クロヴィスは心から愛している。彼女を手に入れるためなら、何だってできるし、何だってしてきた。
きっと彼女は、全く気づいていないだろうけれど。
慌てて指輪を抜き取ろうとしたネフィリアの手首を掴んで、クロヴィスはにっこりと笑いながら首をかしげる。
「油断は禁物だよ、ネフィリア。僕がどれほどきみを手に入れたいと思ってるか、よく知ってるでしょ?きみがなかなかうなずいてくれないからさ、そろそろ少し強引な手段に出ようと思って」
「離し……っ」
息がかかるほどに顔を近づけられて、ネフィリアは逃げるように身体をよじる。だけど、掴まれた手を強く引かれて、あっという間にクロヴィスの腕の中に閉じ込められてしまった。
「や、嫌……っ、指輪、外してっ」
半泣きになりながらネフィリアが訴えると、クロヴィスは楽しそうに目を細めた。
「僕と結婚してくれるって今ここで誓うなら、外してあげてもいいよ」
「それは、無理……っ」
「あはは、強情だね。じゃあ指輪はそのままで。そろそろ効いてきたんじゃない?身体、熱くなってきた?」
クロヴィスの言葉に、ネフィリアは必死に首を振る。
だけど、指輪のはめられた左手から熱いものが体内に流れ込んでくるのが分かる。クロヴィスの瞳によく似た深い紫の石の正体は、魔石。恐らく、強力な催淫作用を持つ呪いがかけられている。
三日前にこの指輪を持ってやってきたクロヴィスを、冷たく追い返したはずなのに、諦めていなかったらしい。
魔女であるネフィリアは、魔法薬には耐性があるけれど、呪いには耐性がない。普通の人間よりは多少強いものの、それでもこの呪いに抗うのはかなりの精神力を必要とする。
「ほら、顔が赤くなってきた。そういう顔も可愛いね、ネフィリア。すごくそそる」
懸命に呪いに抗おうとするネフィリアの集中力を削ぐように、クロヴィスが額や頬などあちこちに口づけを落とす。
「……っ、呪いなんて、卑怯だわ」
「きみが素直に僕を受け入れてくれないから、いけないんだよ。何が不満なのさ。これ以上ないくらい愛してあげるし、きみの仕事を奪うことだってしないよ」
「私、は……っ」
熱にうかされてぼうっとしてきた頭で、ネフィリアは必死に言葉を紡ごうと努力する。
「だって、いつか私を捨てて、いってしまう、もの……」
小さく震えた唇から、こぼれ落ちた言葉。
今はネフィリアを見てくれているクロヴィスだって、きっと近い将来離れていくはずだ。だって、今までネフィリアに愛を囁いてくれた男たちは皆、そうだったから。
愛していると囁かれ、身体を重ねて、将来の約束をしたことだってある。だけど、寿命の長さが違う魔女と人間が、共に生きていくことは難しい。いつだって、男たちはあっという間に新しい人間の恋人を見つけて去っていった。何度も期待して、裏切られて、傷ついて。だからネフィリアは、人間を愛することはしないと決めたのだ。
「時々そういう弱さを見せるから、たまらないんだよね」
小さくつぶやいたクロヴィスは、ひょいっとネフィリアの身体を抱えあげた。行き先は奥の部屋のベッドの上。ついでに表の看板の灯りを消して、閉店扱いにもしておく。
催淫の呪いにおかされたネフィリアは、それでもまだ必死に抗おうとしている。だけど体内の呪いに意識を向けすぎて、自分がベッドに運ばれていることには気づいていないようだ。
しっかりとしているようで、どこか抜けているこの魔女を、クロヴィスは心から愛している。彼女を手に入れるためなら、何だってできるし、何だってしてきた。
きっと彼女は、全く気づいていないだろうけれど。
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