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第68話 伊勢志摩の休日 ②
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「おぉ!?お江姐さん、今日はちょい違うくない?その男だれ?誰なの?教えてよ!」
「ヤッシャセッ!!…あ。
お江姐さん!おはようございますッ!」
「!?………ぅぅあぁぁ…お江さん…」
「お江ちゃんが男を連れてる!?
ちょいと皆!ちょっと来て!大変だよ!」
「おめでとう!遂に……よかった…涙が…」
町を歩けば次々と顔見知りと思われる人達が声を掛けてくるので、その度に足を止めて説明したりで一向に買い物が進まない。
皆が笑顔で、自分の事のみたいに喜び声を掛けてくれる。
これだけで町の人達から、どれだけ慕われる女性なのかが分かる思いだ。
それにしても、一体どれだけ知り合いがいるんだろうか?
町中の人と挨拶したのではとおもっていたが、まだまだ人の列は途切れず、これでは埒が明かない。
「お江さん、こっちへ」
そう言うと大通りから細い路地へお江さんの手を取り、人目を避けるように駆け出す。
「あの……」
このままでは町中に妙な噂が広まってしまう。路地を駆け抜けた先は人通りも少なく、かなり歩きやすい印象を受けた。
「その…すいません、アタシの知り合いが…。ご迷惑だったでしょう?」
少し走ったからだろう、お江さんは顔を紅潮させて謝罪の言葉を口にする。
「とんでもない。お江さんこそ俺なんかと噂になると困るんじゃないですか?」
「いえ…あの、その…」
言い淀む姿は遠慮がちな様子で、初めて会った時は気っ風の良さを感じたのだが、今は随分と違った印象を受ける。
意外と受け身な人なんだろうか?
話の糸口を掴めば会話も弾むと考えた俺は、お江さんの草履に注目すると僅かな綻びを見つけた。
「お江さん、草履が古くなってますね。
良い機会なので買い換えませんか?」
口ごもるお江さんの手を引き、近くの店を覗くと棚には豊富に女性用の物が並んでいる。
「色々ありますね、どうです?」
「え…あぁ、なんだか久しぶりです…。
でも折角なので一つ買おうかな…」
嬉しそうに草履を手に取って選ぶ様子から、少しずつ緊張の糸が解れていくのが分かり安心していると、お江さんの目が一点で止まっているのに気付いた。
手にしようか迷っていたのは、上品な淡い白色の台に紅白の織柄鼻緒の草履だ。
「すいません、これをください」
店員に声を掛けて即決で購入する。
驚いた顔でこっちを見るお江さんに草履をプレゼントすると、彼女は心配するほど紅潮してしまった。
「普段使いにも良さそうですね。
そろそろ宿のお使いに行きましょうか」
「……ひゃい」
本当に可愛らしい人だな。
それにしても…買う物多過ぎじゃね?
塩と酒と味噌と…醤油?他には…。
本当にこんなに切らしているのか?
履き物を替えたお江さんはずっと足元ばかり見ている。
こんなにも喜んでくれると、買った方も自然と笑顔にさせてくれるんだな。
…どこかの鬼娘も見習ってくれ……。
叶いそうにない事を願いつつ、買い物デートはまだまだ続く。
「ヤッシャセッ!!…あ。
お江姐さん!おはようございますッ!」
「!?………ぅぅあぁぁ…お江さん…」
「お江ちゃんが男を連れてる!?
ちょいと皆!ちょっと来て!大変だよ!」
「おめでとう!遂に……よかった…涙が…」
町を歩けば次々と顔見知りと思われる人達が声を掛けてくるので、その度に足を止めて説明したりで一向に買い物が進まない。
皆が笑顔で、自分の事のみたいに喜び声を掛けてくれる。
これだけで町の人達から、どれだけ慕われる女性なのかが分かる思いだ。
それにしても、一体どれだけ知り合いがいるんだろうか?
町中の人と挨拶したのではとおもっていたが、まだまだ人の列は途切れず、これでは埒が明かない。
「お江さん、こっちへ」
そう言うと大通りから細い路地へお江さんの手を取り、人目を避けるように駆け出す。
「あの……」
このままでは町中に妙な噂が広まってしまう。路地を駆け抜けた先は人通りも少なく、かなり歩きやすい印象を受けた。
「その…すいません、アタシの知り合いが…。ご迷惑だったでしょう?」
少し走ったからだろう、お江さんは顔を紅潮させて謝罪の言葉を口にする。
「とんでもない。お江さんこそ俺なんかと噂になると困るんじゃないですか?」
「いえ…あの、その…」
言い淀む姿は遠慮がちな様子で、初めて会った時は気っ風の良さを感じたのだが、今は随分と違った印象を受ける。
意外と受け身な人なんだろうか?
話の糸口を掴めば会話も弾むと考えた俺は、お江さんの草履に注目すると僅かな綻びを見つけた。
「お江さん、草履が古くなってますね。
良い機会なので買い換えませんか?」
口ごもるお江さんの手を引き、近くの店を覗くと棚には豊富に女性用の物が並んでいる。
「色々ありますね、どうです?」
「え…あぁ、なんだか久しぶりです…。
でも折角なので一つ買おうかな…」
嬉しそうに草履を手に取って選ぶ様子から、少しずつ緊張の糸が解れていくのが分かり安心していると、お江さんの目が一点で止まっているのに気付いた。
手にしようか迷っていたのは、上品な淡い白色の台に紅白の織柄鼻緒の草履だ。
「すいません、これをください」
店員に声を掛けて即決で購入する。
驚いた顔でこっちを見るお江さんに草履をプレゼントすると、彼女は心配するほど紅潮してしまった。
「普段使いにも良さそうですね。
そろそろ宿のお使いに行きましょうか」
「……ひゃい」
本当に可愛らしい人だな。
それにしても…買う物多過ぎじゃね?
塩と酒と味噌と…醤油?他には…。
本当にこんなに切らしているのか?
履き物を替えたお江さんはずっと足元ばかり見ている。
こんなにも喜んでくれると、買った方も自然と笑顔にさせてくれるんだな。
…どこかの鬼娘も見習ってくれ……。
叶いそうにない事を願いつつ、買い物デートはまだまだ続く。
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