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第32話 狼の名付け親
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「何をウジウジしとるか、男子らしくない!しっかりいたせ、あしな」
「虫……今のアタシは虫けらなの…」
年端もいかない少女に完膚なきまでに敗北した事で一人称まで失くし、ホームの隅で膝を抱えて横になっていると、子狼が心配そうな声で気遣う。
「お前だけ……アタシの心を支えてくれるのは、お前だけなんだよ…」
見る影もなくテンションが下がった主に困惑しているのか、狼は抱かれた腕の中で必死にもがくと初音の所へと避難する。
「おお!こやつタテガミギンロウの子か?
これは大層めずらしや、人には決して懐かぬと聞いていたんじゃがの~」
「そうなん?でも20000Pだしな」
おっと、Awazonについて初音には黙っておこう、何か嫌な予感がするのでな。
それに沈黙は金とも言う、必要な場面までは表に出さない方が良い。
見れば初対面だというのに狼は初音に甘えるように尻尾を振り、全力の可愛いアピール攻撃を仕掛けていた。
「これは…愛いのぅ!
ははは、これ!よさぬか」
狼は得意のペロペロ攻撃で一気に畳み掛ける、これを受けて落ちない人間はいない。
かく言う俺もその一人である。
「よしよし、お前の名はなんと言う?
もう決まっておるのじゃろ?」
「え?狼だけど?」
途端に初音の細い眉が下がり、不満げな顔で俺に抗議を始める。
「それは名ではなかろう、全く甲斐性のない奴じゃのう~。よしよし、ワシが飛びっきりの名を与えてやるわ!」
そう言うと初音は狼の周囲を回って全身隈無く観察すると、しばらくの間考え込むような仕草をした後に何かを思い付く。
「うむ、ギンレイというのはどうじゃ?
お前の銀白色の毛から雪が降り積もり、白銀に輝く御山を連想したぞ」
「銀嶺ね、いいんじゃね?」
「そうじゃ、お前にこれを授けよう。大事にいたせよ」
そういうと身につけた装飾品の中から銀製の鈴を取り外すと、ギンレイの首に光沢を帯びた絹紐でくくりつける。
やはり初音は高い教養を備えているようだ。
短い間にタテガミギンロウの特徴から名前を付け、更に二重の意味である銀鈴まで思いつくとは。
遂に名前と首輪をもらったギンレイは分かっているのか、先程よりも更に激しく尻尾を振って喜びを表している。
あれ?唯一の心の支え、早速取られてね?
もはや俺には何も残されておらず、またもや膝を抱えて完全なヘラモードに移行する。
「何をしておるか!ワシは腹が空いておる、早う朝餉の用意をいたせと言うに」
やれやれ、騒がしい奴が増えた。
俺は起き上がると2人と1匹の朝食を確保する為に、釣竿を手に河原へと向かった。
「まぁ、退屈にはならないだろうなぁ」
食い扶持が増えたのは懸念すべきだが、今日から話す相手が出来たのは素直に喜ぶところなのだろう。
河原への道すがら、そんな考えが頭に浮かぶと自分が久しぶりに心から笑っているのに気付き、思わず苦笑いを浮かべる。
「虫……今のアタシは虫けらなの…」
年端もいかない少女に完膚なきまでに敗北した事で一人称まで失くし、ホームの隅で膝を抱えて横になっていると、子狼が心配そうな声で気遣う。
「お前だけ……アタシの心を支えてくれるのは、お前だけなんだよ…」
見る影もなくテンションが下がった主に困惑しているのか、狼は抱かれた腕の中で必死にもがくと初音の所へと避難する。
「おお!こやつタテガミギンロウの子か?
これは大層めずらしや、人には決して懐かぬと聞いていたんじゃがの~」
「そうなん?でも20000Pだしな」
おっと、Awazonについて初音には黙っておこう、何か嫌な予感がするのでな。
それに沈黙は金とも言う、必要な場面までは表に出さない方が良い。
見れば初対面だというのに狼は初音に甘えるように尻尾を振り、全力の可愛いアピール攻撃を仕掛けていた。
「これは…愛いのぅ!
ははは、これ!よさぬか」
狼は得意のペロペロ攻撃で一気に畳み掛ける、これを受けて落ちない人間はいない。
かく言う俺もその一人である。
「よしよし、お前の名はなんと言う?
もう決まっておるのじゃろ?」
「え?狼だけど?」
途端に初音の細い眉が下がり、不満げな顔で俺に抗議を始める。
「それは名ではなかろう、全く甲斐性のない奴じゃのう~。よしよし、ワシが飛びっきりの名を与えてやるわ!」
そう言うと初音は狼の周囲を回って全身隈無く観察すると、しばらくの間考え込むような仕草をした後に何かを思い付く。
「うむ、ギンレイというのはどうじゃ?
お前の銀白色の毛から雪が降り積もり、白銀に輝く御山を連想したぞ」
「銀嶺ね、いいんじゃね?」
「そうじゃ、お前にこれを授けよう。大事にいたせよ」
そういうと身につけた装飾品の中から銀製の鈴を取り外すと、ギンレイの首に光沢を帯びた絹紐でくくりつける。
やはり初音は高い教養を備えているようだ。
短い間にタテガミギンロウの特徴から名前を付け、更に二重の意味である銀鈴まで思いつくとは。
遂に名前と首輪をもらったギンレイは分かっているのか、先程よりも更に激しく尻尾を振って喜びを表している。
あれ?唯一の心の支え、早速取られてね?
もはや俺には何も残されておらず、またもや膝を抱えて完全なヘラモードに移行する。
「何をしておるか!ワシは腹が空いておる、早う朝餉の用意をいたせと言うに」
やれやれ、騒がしい奴が増えた。
俺は起き上がると2人と1匹の朝食を確保する為に、釣竿を手に河原へと向かった。
「まぁ、退屈にはならないだろうなぁ」
食い扶持が増えたのは懸念すべきだが、今日から話す相手が出来たのは素直に喜ぶところなのだろう。
河原への道すがら、そんな考えが頭に浮かぶと自分が久しぶりに心から笑っているのに気付き、思わず苦笑いを浮かべる。
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