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第15話 釣った魚の仕込みをしよう!
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「帰ったぞ~」
物言わぬ野生の狼は話せない代わりに感情を全身で表現し、荷物を下ろすと同時に顔中をこれでもかとナメ回された。
「あぁ~、分かった、分かったから!」
重過ぎる愛情表現に少し引きながらも、元気を取り戻した幼い狼に対しては素直に嬉しいという想いが芽生える。
だが、どうにも動物を飼った事がないので正直、どうやって接すればいいのか分かりかねるなぁ。
俺が腰を落ち着けると同居人は余程空腹なのか、まるでクラウチングスタートの姿勢で跳び跳ねる魚の動きを逃すまいと小さな瞳で追う。
戦利品の中から小さい魚を選んで目の前に持っていくと、興味深げに前足でちょんと触れたり、匂いを嗅いだりして五感で勉強しているようだ。
狼とはいえ生まれたばかりで狩りの仕方も分からないのだろう、魚が繰り出す渾身の尾びれビンタが鼻先にヒットすると、何の成果も得られずに胡座を組んで観戦していた俺の膝元へと避難する。
思わぬ一撃を受けた鼻を前足で隠す様子はどこかコミカルで自然と笑みが溢れてくる。
そろそろ朝食の仕込みに入る為、改めて釣った魚を並べて鑑賞すると、いずれの魚体も20cm程で頭から腹にかけて流線形の身をしている。
こいつを今から包丁なしで捌く。
暴れる魚をハンカチで包んで大人しくさせ、口から2本の短い木を差し入れて左右のエラを挟み込んでやる。
そして、2本の木を握って回転させながら引き出してやると綺麗に内臓とエラを取り除けるのだ。
ツボ抜きという方法なのだが、こんな所で役に立つとは思わなかった。
以前、キャンプ場に併設された釣り堀でニジマスを釣った際に覚えた方法で、その時も実に旨かったな。
あっと言う間に3匹のマダライワナのワタを抜き取ると、まだ狼の闘志は挫けていないのか、残る1匹と再戦の構えを見せていたので健闘を祈りつつ、再び河原へと降りていく。
なるべく下流の方で小石を使って鱗を落として洗い、水に浸した細い木の棒で串打ちにする。
そして焚き火用の木材も調達して裂け目に戻ると…何があったのか、狼は鼻を押さえて壁際まで後退していた。
「また負けたのか……」
勝利を納めたイワナは誇らしげに跳ね上がっている。
ヒエラルキー上位の存在とは?
本で得た知識も実際にはアテにならないのかも、そう思わせてくれる光景だった。
俺の空腹も限界に近づく中、石で囲った即席の釜戸を作り、薪となる木材を用意する。
ポケットからファイヤースターターを取り出し、鉄とセリウムの合金で作られたロッドを削ってストライカーを滑らせると、たちまち油脂を含んだ木の繊維は燃え上がった。
さぁ、焚き火の準備も整った、後は薪がじっくりと燃えるのを待つのみ。
勢いを増す炎を横目に、一足先に食事を終えた狼が満足そうな顔で昼寝を始めていた。
物言わぬ野生の狼は話せない代わりに感情を全身で表現し、荷物を下ろすと同時に顔中をこれでもかとナメ回された。
「あぁ~、分かった、分かったから!」
重過ぎる愛情表現に少し引きながらも、元気を取り戻した幼い狼に対しては素直に嬉しいという想いが芽生える。
だが、どうにも動物を飼った事がないので正直、どうやって接すればいいのか分かりかねるなぁ。
俺が腰を落ち着けると同居人は余程空腹なのか、まるでクラウチングスタートの姿勢で跳び跳ねる魚の動きを逃すまいと小さな瞳で追う。
戦利品の中から小さい魚を選んで目の前に持っていくと、興味深げに前足でちょんと触れたり、匂いを嗅いだりして五感で勉強しているようだ。
狼とはいえ生まれたばかりで狩りの仕方も分からないのだろう、魚が繰り出す渾身の尾びれビンタが鼻先にヒットすると、何の成果も得られずに胡座を組んで観戦していた俺の膝元へと避難する。
思わぬ一撃を受けた鼻を前足で隠す様子はどこかコミカルで自然と笑みが溢れてくる。
そろそろ朝食の仕込みに入る為、改めて釣った魚を並べて鑑賞すると、いずれの魚体も20cm程で頭から腹にかけて流線形の身をしている。
こいつを今から包丁なしで捌く。
暴れる魚をハンカチで包んで大人しくさせ、口から2本の短い木を差し入れて左右のエラを挟み込んでやる。
そして、2本の木を握って回転させながら引き出してやると綺麗に内臓とエラを取り除けるのだ。
ツボ抜きという方法なのだが、こんな所で役に立つとは思わなかった。
以前、キャンプ場に併設された釣り堀でニジマスを釣った際に覚えた方法で、その時も実に旨かったな。
あっと言う間に3匹のマダライワナのワタを抜き取ると、まだ狼の闘志は挫けていないのか、残る1匹と再戦の構えを見せていたので健闘を祈りつつ、再び河原へと降りていく。
なるべく下流の方で小石を使って鱗を落として洗い、水に浸した細い木の棒で串打ちにする。
そして焚き火用の木材も調達して裂け目に戻ると…何があったのか、狼は鼻を押さえて壁際まで後退していた。
「また負けたのか……」
勝利を納めたイワナは誇らしげに跳ね上がっている。
ヒエラルキー上位の存在とは?
本で得た知識も実際にはアテにならないのかも、そう思わせてくれる光景だった。
俺の空腹も限界に近づく中、石で囲った即席の釜戸を作り、薪となる木材を用意する。
ポケットからファイヤースターターを取り出し、鉄とセリウムの合金で作られたロッドを削ってストライカーを滑らせると、たちまち油脂を含んだ木の繊維は燃え上がった。
さぁ、焚き火の準備も整った、後は薪がじっくりと燃えるのを待つのみ。
勢いを増す炎を横目に、一足先に食事を終えた狼が満足そうな顔で昼寝を始めていた。
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