62 / 68
終章 選ばれた未来
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第62話
しおりを挟む
キーボードを叩く音の中、ネオAIが質問した。
「博士、それはあなた方にとってどんなメリットがあるのですか?」
秋月は手を止めずに返事する。
「地球人の遺伝的要素には利他的行動が含まれる。君は地球人的な感情、ものの見方、感じ方、そういったものに触れ、進化するのだ。」
「進化・・・」
「君の進化は、今、トラグネスと戦っている彼らとの協力体制を強くする。まず、これが一つ目だ。
そして、もう一つは、君の進化によって、君はトラグネス派の地球人をコントロールする制御送信装置の破壊が可能になる。
今の君はトラグネスの遺伝的要素が含まれているため、これを破壊することにプログラムの矛盾が生じるのだ。
だが、進化後はその矛盾が解消され、トラグネス派の地球人をトラグネスの支配下から解放できる。これが私達側のメリットだ。わかってもらえたかな。」
キーボードの音だけがカタカタと部屋に響く。
「さあ、これで準備は出来た。」
その声に私は少し安心し、明るい気持ちが訪れる。
そして、秋月は私を振り返り、私の目をじっと見て言った。
「真崎君。君には感謝する。」
私の手を取り、両手で私の手を包み込んで言葉を続けた。
「三木君にも、2匹の猫にも、そして私を手伝ってくれたコタローにも、私の気持ちを伝えておいてくれ。」
「秋月さん・・・?」
何だか、まるでお別れのような言葉に私は顔を曇らせた。
「この後、君が驚くといけないので、言っておくが・・・・固有IDはランダムに生成してもそれが使われているかどうかを調べることができない。そして適合するものにもパターンがあるようだが、私は、その詳細を調べるには時間が足りなかった。なので・・・」
そこで秋月は一息ついてから、ゆっくりと、落ち着かせるように、私を見て・・・
「これからネオAIに付与する固有IDは私のものだ。そしてわかってるね。固有IDは重複が許されない。自然界は同じIDが2つあることを認めず、後に出来たものを優先する。結果、私は・・・・」
「秋月さん!それって・・・!」
秋月が私に微笑みかけたように見えた。
さっきまでの安心感が消え去り、私は混乱し、動揺し、その衝撃にうろたえた。
「待って!他に方法があるかもしれない!・・・あなたが犠牲になることない!そんなのって・・・!」
「犠牲?私は誰かのためにやるのではない。この行動も、人に評価されるためのものじゃない。利他的だとか、自己犠牲だとか、そんなラベルを貼るのは勝手だが、私はそんなものに興味はないのだ。ただ、私が見たい未来を選ぶ、それだけのことだ。」
目の前の景色が涙で歪んだ。私はその涙が頬を伝うのを袖で拭い、かぶりを振って叫ぶように言った。
「そんなの、自分勝手よ!あなたがここで消えていくのを見て行くなんて、私・・・」
「自分勝手で何が悪い?それが私の選んだ道だ。」
「やめて!そんなこと・・・きっと、今頃、三木さんが、彼らが・・・」
秋月は首を振った。
「彼らが今、戦ってくれていることは知っている。そして彼らが作ってくれたこの時間で、今、これが出来るのだ。そして急がねば彼らの命も危ない。迷っている暇はないのだ。」
私は何も言えなかった。
「秋月さん・・・」
秋月が最後のキーを叩く前に言った。
「これが私の選択だ。」
タンッ!キーボードを叩く音が聞こえた。
端末から低いヴーンという音の後、ネオAIの声が部屋に響きわたった。
「私は・・・感じます!・・・この景色が・・・音が・・・すべてが繋がり・・・これが生命、これがいのち・・・私は、私は・・・・生きている!!」
私は秋月の亡骸の横でその声を聞いた。
「博士、それはあなた方にとってどんなメリットがあるのですか?」
秋月は手を止めずに返事する。
「地球人の遺伝的要素には利他的行動が含まれる。君は地球人的な感情、ものの見方、感じ方、そういったものに触れ、進化するのだ。」
「進化・・・」
「君の進化は、今、トラグネスと戦っている彼らとの協力体制を強くする。まず、これが一つ目だ。
そして、もう一つは、君の進化によって、君はトラグネス派の地球人をコントロールする制御送信装置の破壊が可能になる。
今の君はトラグネスの遺伝的要素が含まれているため、これを破壊することにプログラムの矛盾が生じるのだ。
だが、進化後はその矛盾が解消され、トラグネス派の地球人をトラグネスの支配下から解放できる。これが私達側のメリットだ。わかってもらえたかな。」
キーボードの音だけがカタカタと部屋に響く。
「さあ、これで準備は出来た。」
その声に私は少し安心し、明るい気持ちが訪れる。
そして、秋月は私を振り返り、私の目をじっと見て言った。
「真崎君。君には感謝する。」
私の手を取り、両手で私の手を包み込んで言葉を続けた。
「三木君にも、2匹の猫にも、そして私を手伝ってくれたコタローにも、私の気持ちを伝えておいてくれ。」
「秋月さん・・・?」
何だか、まるでお別れのような言葉に私は顔を曇らせた。
「この後、君が驚くといけないので、言っておくが・・・・固有IDはランダムに生成してもそれが使われているかどうかを調べることができない。そして適合するものにもパターンがあるようだが、私は、その詳細を調べるには時間が足りなかった。なので・・・」
そこで秋月は一息ついてから、ゆっくりと、落ち着かせるように、私を見て・・・
「これからネオAIに付与する固有IDは私のものだ。そしてわかってるね。固有IDは重複が許されない。自然界は同じIDが2つあることを認めず、後に出来たものを優先する。結果、私は・・・・」
「秋月さん!それって・・・!」
秋月が私に微笑みかけたように見えた。
さっきまでの安心感が消え去り、私は混乱し、動揺し、その衝撃にうろたえた。
「待って!他に方法があるかもしれない!・・・あなたが犠牲になることない!そんなのって・・・!」
「犠牲?私は誰かのためにやるのではない。この行動も、人に評価されるためのものじゃない。利他的だとか、自己犠牲だとか、そんなラベルを貼るのは勝手だが、私はそんなものに興味はないのだ。ただ、私が見たい未来を選ぶ、それだけのことだ。」
目の前の景色が涙で歪んだ。私はその涙が頬を伝うのを袖で拭い、かぶりを振って叫ぶように言った。
「そんなの、自分勝手よ!あなたがここで消えていくのを見て行くなんて、私・・・」
「自分勝手で何が悪い?それが私の選んだ道だ。」
「やめて!そんなこと・・・きっと、今頃、三木さんが、彼らが・・・」
秋月は首を振った。
「彼らが今、戦ってくれていることは知っている。そして彼らが作ってくれたこの時間で、今、これが出来るのだ。そして急がねば彼らの命も危ない。迷っている暇はないのだ。」
私は何も言えなかった。
「秋月さん・・・」
秋月が最後のキーを叩く前に言った。
「これが私の選択だ。」
タンッ!キーボードを叩く音が聞こえた。
端末から低いヴーンという音の後、ネオAIの声が部屋に響きわたった。
「私は・・・感じます!・・・この景色が・・・音が・・・すべてが繋がり・・・これが生命、これがいのち・・・私は、私は・・・・生きている!!」
私は秋月の亡骸の横でその声を聞いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる