知性を与えられた猫たちは何を見る?

ChamalSei

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第2章 境界線の向こう側

知性を与えられた猫たちは何を見る? 第27話

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淡く青い光はどこか優しさを感じさせ、窓から入る光と合わさって暖かな安ど感を与えてくれた。静寂の中で、茶丸が三木の足元にすり寄って頭を押し付け、ゴロゴロという音が聞こえてくる。

「三木さん、あなたは以前ネクサーク社にいた時、秋月という男の名を聞いたことは?」

三木が驚いて顔を上げて言う。

「秋月?あのちょっと暗い変わりもんのオッサン?」

「ご存知ですね。」

「私たちの調べでは、どうやら彼はトラグネスに関わっているようです。」

三木だけでなく、私もハッと息を呑む。
そこにセイくんが口を挟んだ。

「ねえ、その名前って・・・僕たちがデータセンターで見つけた名前と同じじゃない?」

茶丸もそれに答える。

「あ、この人が犯人かって言ってたやつ?」

「そうだ。そのIDを調べてわかったのが彼だ」

ジョンが続けた。

「三木さん、私たちはあなたの協力を必要としている。彼の動きや彼の意図など詳細が知りたい。」

三木はどうしようとでも言うかのように私の顔を見た。

慌てて私は目をそらす。
三木はしばらく黙った後、口を開く。

「いったい、トラグネスってのは、何をしようとしてるんだ?俺もさっき、真崎から聞いたばっかりなんだよ。で、聞いたら、あんたらと元は同じ種族だって言うじゃないか。もう少し詳しく説明してくれ。」

ジョンはまるで独り言のように低い声で語り始めた。

「トラグネス…。彼らは過酷な環境で生き残るために冷徹な選択をしてきた。」

「冷徹な選択?」

「彼らは他の星を侵略し、資源を奪い続けている。彼らにとって、目的を達成するために手段を選ぶことは常識であり、他者を犠牲にすることが生き残るための唯一の手段だった。これを見てほしい。」

光の中に、荒廃した砂漠のような星と、緑豊かな星が投影される。

「トラグナーはかつて、このノヴィエラのように豊かだった。しかし、過剰な資源採掘と環境破壊でこうなっていった。彼らは生存のために略奪しか道を見いだせなかった。」

三木が呟いた。

「必然の結果か・・・」

「でも、そこに、倫理とか正義とかは無い気がする…」

私が言うのに対し、ジョンは静かに続けた。

「彼らにとって、それが『正義』なんだ。生存競争が激しい環境では、弱者が生き残るために他者を犠牲にするのは必然で、正義とは、それぞれの環境の中で最も強力な価値観として進化したものだ。」

私はその話を静かに聞き、深く頷いた。確かにジョンの言うとおりだ。一人殺せば殺人者 百万人殺せば英雄、チャップリンが映画の中で描いた言葉を思い出した。正義というものは人間社会で作り出されたその時代、その環境にあったものに過ぎない。そう考えると、私は複雑な気持ちになった。

「過去の環境が、そうさせたのかもしれないのね。」

ジョンはその言葉に静かに頷いた。

「とは言え、自分の星が侵略されるのを黙って見ているわけにはいかないだろう。何としても彼らの動きを阻止せねばならない。」

三木は拳を握りしめた。

「……じゃあ、俺がいた会社も、そいつらの手先ってことか。」

「その可能性が高い。あなたの協力が必要です。」

ジョンが真剣な眼差しで顔を上げ、私の方を向いた。

「いいだろう。やるしかないみたいだな。」

ジョンとの通信の後、私はキッチンで簡単な昼食を作っていた。AIに冷蔵庫にあるものからできるおすすめメニューを聞いたが、どれもパッとしないので、とりあえず、お湯を沸かす。

「それにしても。この間から、何か、変だなとは思っていたけど、まさか、こんな話とはな」

三木がぼやく。
私はレトルトのパスタを皿に盛りつけ、テーブルに運びながら、彼に尋ねた。

「その、秋月って人、どんな人なの?」

「サンキュ。いただきまーす」

早速、ガツガツと食べ始める三木に私は尋ねる。

「うーん、50代くらいのオッサン。無口で何考えてるのか、よくわからなかったな。確か、人工生命とAIの融合みたいなことを研究してたっけ」

「そんな人がなぜ電力会社のデータセンターで・・・」

「うん。・・・怪しいよな」

「ごちそーさーん」と言って、三木は食器をキッチンに持っていき、コタローと遊び始めた。

「へえ?お前、何か変わったじゃん」

「はい。ジョンに更にアップグレードしてもらいました」

「何それ、どうやったわけ?」

「ナノマテリアルです」

「すげえな。ちょっと見せてみろよ。他には、他には?」

「実はソフトウェアも・・・」

私は意外と受け入れの早い三木に安心しつつ、この後、どうすればいいのか考えていた。ジョンから言われたデータセンターでのロボットの暴走、ネクサーク社の調査、そして秋月・・・・。

「どこから手を付けたらいいのかしら?」

コーヒーを両手に、リビングの三木に話しかける。

「まあ、まず、あんたらはデータセンターに行ってみることだな。」

「え?三木は付いて来てくれないの?」

「俺は秋月さん、調べてみるわ。昔の同僚とか辿って。」

「わかったわ」

三木が帰った後、私は2匹とコタローを前にして、聞いてみた。

「今日のあれ。わざとでしょう?」

「何?何のこと?」

「とぼけたって無駄よ。そもそも骨伝導通信は普通なら三木に聞こえるはずがないもの。わざと三木に聞こえるようにして話しかけたのよね?」

「えへへ、わかっちゃった?」

「こういう茶丸のアイディアはさすがだよ」

セイくんが言う。

コタローは

「おかげで三木さんが味方になってくれて、私も心強いです」

と囃し立てる。

「そうね、おかげで助かったわ」

私は彼らを代わる代わる抱き上げて褒めてやった。

「そして、明日はデータセンターね。明日はまたセイくん、頼むわよ」

「任せて」

どんどん心強くなっていくチームに笑顔がこぼれた。
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