14 / 68
序章 知性を与えられた日
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第14話
しおりを挟む
ふと気づくと2匹の猫とコタローが不安げに見上げていた。
「大丈夫よ。・・・そうね。あなたたちもいるものね。」
私は顔を上げて言った。
「そう、一人じゃない。あなたたちもジョンもついている!」
「ならば・・・次にやることは・・・」
私はパーカーを羽織って、コタローを小脇に抱えた。
「律佳ちゃん、どこ行くの?」
その様子に茶丸が聞いてくる。
「ちょっと、コタローのお着換えよ」
「新しいぬいぐるみ?」
セイくんが笑いをこらえてそう言う。
「ぬいぐるみも必要だけど、今日はまた別の」
「いいなあー、僕たちも連れてってよ」
「また、今度ね」
使い古したボストンバッグにコタローを放り込んで車に乗り込み、会社へ向かった。
会社のエレベーターがチンと音を立てる。4階のフロアの廊下を進み、セキュリティカードを通してさらに奥へと進む。その部屋のドアでまたセキュリティカードを通し、ガチャリとドアを開けた。
「おう。来なすったか」
「休みの日に悪いわね」
部屋には男が一人。彼は長袖のTシャツの袖をまくり、電工ドライバを机に置いた。彼の名は三木。うちの会社の開発部でロボット開発のエンジニアである。つまりコタローの父になる。
「いいって。どうせ、休みも大抵ここにいるしな。で?強化するって、どこまで本気でやるんだ?」
三木はコタローを見ながら眉を上げた。
「カーボンファイバーでフレームを作り直して、外装はチタンコーティングだと?普通の用途じゃあり得ないだろ。どこにドンパチやりに行くんだ?」
私は肩をすくめながら答えた。
「ちょっとした実験プロジェクトみたいなもんよ。」
三木は一瞬何かを考えるような表情を見せたが、すぐに苦笑しながらコタローのスキャンを始めた。
「分かったよ。いい実験材料だな。これが終わったら、俺にも何か協力してくれよ。」
「どれくらいかかる?」
「1週間くらいかな」
「もう少し早くならないかしら?」
「ターッ!働かせるねー。3日後でどうだ?」
「ありがとう。頼んだわ。じゃあ、お願いね」
私はコタローの耳元でそっと囁いた。
「余計なことは喋っちゃだめよ」
コタローのLEDが了解とでも言うように点滅した。
それから3日後、私は三木の開発ルームにいた。
「お待たせ!これが新しく生まれ変わったコタローだ!」
三木は誇らしげにコタローを指さした。そのフレームは以前のプラスチックの質感から、黒く光沢のあるカーボンファイバーと、鈍い銀色のチタンコーティングに変わっていた。
「どうだ?強そうだろ?」
律佳は手で触れながら頷いた。
「確かに、見た目もすごく頑丈そう。でも、これだけ?」
三木はニヤリと笑って答えた。
「いやいや、これで終わるわけないだろ。俺のこだわり、見せてやるよ。」
三木は得意気に話し出す。
「まず、フレームは全部カーボンファイバーに変えた。軽くて強いし、宇宙船の素材にも使われる優れモノだ。次にチタンコーティングは、物理的な衝撃を防ぐだけじゃない。熱にも強いから、例えば火災現場でも余裕で動ける。」
私は驚きつつも、その性能に納得した。 と同時にそんな場面に出くわしませんようにと心の中で呟く。
「これだけでも十分そうだけど…、まだ何かあるのね?」
「もちろん!」
「外装に特殊なコーティングを追加して、ある程度の電撃を跳ね返すようにしてある。」
私は少し呆気にとられた。
「そんなことまで!?実戦を意識しすぎじゃない?」
「備えあれば憂いなしってやつさ。」
いったい三木はどんな場面を想像しているのだろう?
「あと、バッテリーの改良もしたぞ。摩擦発電を組み込んだ。歩くたびにエネルギーが供給される仕組みさ。バッテリーの持ちが格段に良くなるはずだ。」
私は驚いて言った。
「そんなことが可能なの?」
「実際、最近の技術でも摩擦を利用した小型発電は進んでる。コタローみたいに長時間稼働できるロボットには、この機能があるとかなり便利だ。前の倍くらいは持つはずだ。これで長時間の任務も安心!」
「それは助かるわ!」
「ちなみに、動くときの音がうるさいって文句を言われたら嫌だから、サイレントモードも搭載しておいたぞ。」
「でも三木さんが一番うるさいよね!」
「おいおい、俺を機械と一緒にするなよ!」
「冗談よ。でも本当に助かるわ。この借りは必ず返すわね」
気にするなというように三木が手を振り、他の仕事に手を付け始めた。
私はドアを閉めてコタローをギュッと腕に抱き締めた。
「さあ、あなたには働いてもらうわよ」
「大丈夫よ。・・・そうね。あなたたちもいるものね。」
私は顔を上げて言った。
「そう、一人じゃない。あなたたちもジョンもついている!」
「ならば・・・次にやることは・・・」
私はパーカーを羽織って、コタローを小脇に抱えた。
「律佳ちゃん、どこ行くの?」
その様子に茶丸が聞いてくる。
「ちょっと、コタローのお着換えよ」
「新しいぬいぐるみ?」
セイくんが笑いをこらえてそう言う。
「ぬいぐるみも必要だけど、今日はまた別の」
「いいなあー、僕たちも連れてってよ」
「また、今度ね」
使い古したボストンバッグにコタローを放り込んで車に乗り込み、会社へ向かった。
会社のエレベーターがチンと音を立てる。4階のフロアの廊下を進み、セキュリティカードを通してさらに奥へと進む。その部屋のドアでまたセキュリティカードを通し、ガチャリとドアを開けた。
「おう。来なすったか」
「休みの日に悪いわね」
部屋には男が一人。彼は長袖のTシャツの袖をまくり、電工ドライバを机に置いた。彼の名は三木。うちの会社の開発部でロボット開発のエンジニアである。つまりコタローの父になる。
「いいって。どうせ、休みも大抵ここにいるしな。で?強化するって、どこまで本気でやるんだ?」
三木はコタローを見ながら眉を上げた。
「カーボンファイバーでフレームを作り直して、外装はチタンコーティングだと?普通の用途じゃあり得ないだろ。どこにドンパチやりに行くんだ?」
私は肩をすくめながら答えた。
「ちょっとした実験プロジェクトみたいなもんよ。」
三木は一瞬何かを考えるような表情を見せたが、すぐに苦笑しながらコタローのスキャンを始めた。
「分かったよ。いい実験材料だな。これが終わったら、俺にも何か協力してくれよ。」
「どれくらいかかる?」
「1週間くらいかな」
「もう少し早くならないかしら?」
「ターッ!働かせるねー。3日後でどうだ?」
「ありがとう。頼んだわ。じゃあ、お願いね」
私はコタローの耳元でそっと囁いた。
「余計なことは喋っちゃだめよ」
コタローのLEDが了解とでも言うように点滅した。
それから3日後、私は三木の開発ルームにいた。
「お待たせ!これが新しく生まれ変わったコタローだ!」
三木は誇らしげにコタローを指さした。そのフレームは以前のプラスチックの質感から、黒く光沢のあるカーボンファイバーと、鈍い銀色のチタンコーティングに変わっていた。
「どうだ?強そうだろ?」
律佳は手で触れながら頷いた。
「確かに、見た目もすごく頑丈そう。でも、これだけ?」
三木はニヤリと笑って答えた。
「いやいや、これで終わるわけないだろ。俺のこだわり、見せてやるよ。」
三木は得意気に話し出す。
「まず、フレームは全部カーボンファイバーに変えた。軽くて強いし、宇宙船の素材にも使われる優れモノだ。次にチタンコーティングは、物理的な衝撃を防ぐだけじゃない。熱にも強いから、例えば火災現場でも余裕で動ける。」
私は驚きつつも、その性能に納得した。 と同時にそんな場面に出くわしませんようにと心の中で呟く。
「これだけでも十分そうだけど…、まだ何かあるのね?」
「もちろん!」
「外装に特殊なコーティングを追加して、ある程度の電撃を跳ね返すようにしてある。」
私は少し呆気にとられた。
「そんなことまで!?実戦を意識しすぎじゃない?」
「備えあれば憂いなしってやつさ。」
いったい三木はどんな場面を想像しているのだろう?
「あと、バッテリーの改良もしたぞ。摩擦発電を組み込んだ。歩くたびにエネルギーが供給される仕組みさ。バッテリーの持ちが格段に良くなるはずだ。」
私は驚いて言った。
「そんなことが可能なの?」
「実際、最近の技術でも摩擦を利用した小型発電は進んでる。コタローみたいに長時間稼働できるロボットには、この機能があるとかなり便利だ。前の倍くらいは持つはずだ。これで長時間の任務も安心!」
「それは助かるわ!」
「ちなみに、動くときの音がうるさいって文句を言われたら嫌だから、サイレントモードも搭載しておいたぞ。」
「でも三木さんが一番うるさいよね!」
「おいおい、俺を機械と一緒にするなよ!」
「冗談よ。でも本当に助かるわ。この借りは必ず返すわね」
気にするなというように三木が手を振り、他の仕事に手を付け始めた。
私はドアを閉めてコタローをギュッと腕に抱き締めた。
「さあ、あなたには働いてもらうわよ」
8
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第五部
遼州人の青年神前誠(しんぜんまこと)が司法局実働部隊機動部隊第一小隊に配属になってからほぼ半年の時が過ぎようとしていた。
訓練場での閉所室内戦闘訓練からの帰りの途中、誠は周りの見慣れない雪景色に目を奪われた。
そんな誠に小隊長のカウラ・ベルガー大尉は彼女がロールアウトした時も同じように雪が降っていたと語った。そして、その日が12月25日であることを告げた。そして彼女がロールアウトして今年で9年になる新しい人造人間であること誠は知った。
同行していた運用艦『ふさ』の艦長であるアメリア・クラウゼ中佐は、クリスマスと重なるこの機会に何かイベントをしようと第二小隊のもう一人の隊員西園寺かなめ大尉に語り掛けた。
こうしてアメリアの企画で誠の実家である『神前一刀流道場』でのカウラのクリスマス会が開催されることになった。
誠の家は母が道場主を務め、父である誠一は全寮制の私立高校の剣道教師としてほとんど家に帰らない家だった。
四人は休みを取り、誠の実家で待つ誠の母、神前薫(しんぜんかおる)のところを訪れた。
そこで待ち受けているのは上流貴族であるかなめのとんでもなく上品なプレゼントを買いに行く行事、誠の『許婚』を自称するかなめの妹で両刀遣いの変態マゾヒスト日野かえで少佐の訪問、アメリアの部下である運航部の面々による蟹パーティーなどの忙しい日々だった。
そんな中、誠はカウラへのプレゼントとしてイラストを描くことを思いつき、様々な妨害に会いながらもなんとか仕上げることが出来たのだが……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる