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第12話 王都を出発
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「わー! 門のそとはこんな感じなのか」
「やたらと広いな。舗装もされてない空き地みたいなもんだけど」
冒険者登録を終えて馬車に乗り王都の街門をなぜか敬礼されながら通り抜けるとそこはもうだだっ広い広場だった。
「王都に入るために並んでいる人たちと、それを目当てにした商売人がうじゃうじゃいるな」
「出ていく方はそんなに混みあってないけど、溜まってるのは仲間が門を通り抜けるのを待ってる感じの人かな」
「馬車に乗ってるのは行商人とかだろうから出たら止まらずそのまま旅立っていく感じだな」
「あ、バス停みたいのがあるね。乗る人が集まってる」
「乗合馬車か。ちょっとお金のある人と遠くまで行く人かな。あと荷物の多い人」
「トラ様、タツ様、ここから南に向かう街道を通りますね。ちょっと揺れますからご注意を」
「エドさん、もっとくだけて」
「えっと、わかったぜ」
「無茶言うなよ」
「だってあんまり丁寧だと普通じゃないと思われるじゃん」
「王族マークでかでかと張り付けた豪華な馬車で言葉づかいだけ変えてもムリだと思うぞ」
「んーそっか。じゃあいいや」
「大体エドさんなんて王城のなかでも特に王族の生活スペースの警備するような特別な警備隊の隊長だぞ。俺たちに付けてくれるくらい信頼されてるし、もともと相当な身分のはずだ。絶対くだけた言葉づかいなんてしたことなさそうだろ」
「そうだよね。ちょっとおもしろいからからかってみただけだよ」
「王族のハラスメントえげつねえな」
「え? エドさんいやだったら言ってね」
「めっそうもございません」
「言えるわけねえだろ……」
ん? いまなんか見えたような?
「あれ? なんかいま飛んでなかった?」
「ん? ああ、あれは護衛の影だな」
「なにそれ? かげ?」
「忍者みたいなもんだ」
「ニンジャ?! そんなのいたの?!」
「周りに危険がないか偵察して報告してるんだ」
「報告? だれに?」
「エドさんにだよ」
「なにそれすごい! エドさんいまのかげ?なんて言ってたの?」
「前方二千歩ほどのところに盗賊が隠れていましたので排除したとのことです」
「ほえぇすごい。影さんに会ってみたいな」
「影は護衛対象に姿を見られるのを恥と考えていますので、できればそっとしてやってください」
「そうなんだ。わかった。お礼にケーキあげたら喜んでくれるかな?」
「たぶん喜んでくれるぞ」
「そうしよう」
そのあとも特になにごともなく――たぶん影がなんかしてくれたんだと思うけど――今日泊まる予定の町に着いた。
「着いたー」
「門番に敬礼されたな」
「そだね」
「……まあ気にしてないんならいいんだけど」
「おいしい屋台はあるかなー」
「この町の周辺は農業が盛んらしいな」
「へー」
「だからこの町は農産物の市場がすごいらしいぞ」
「つまり食べ物が安くてうまい?」
「まあたぶんそうだな」
「よし買い食いしよう。味見しないと」
「はいはい」
「おじさーん、これなに?」
「おうらっしゃい、ティレムサテュヴァとグルジャヴァティェサプルシェントの団子入りスープだぞ」
「ティレ……ってなんだっけ?」
「鳥肉と果物団子のスープだな」
「鳥肉ってあの脚六本あるやつ?」
「おおそうだ。それを挽き潰したやつだ」
「挽肉スープか。味は?」
「塩と薬草が入ってる。うまいぞ」
「匂いはおいしそうだよね。これ食べてみようよ」
辰巳がちらっとエドさんを見るとエドさんがかすかにうなづいた。
「いまのなに?」
「虎彦、なんでたまに鋭いんだよ」
「たまにってなんだよ」
「まあ一応毒見済みってことを確認しただけだ」
「うぇっ? いつのまに?」
「影が町じゅうに散らばってあらかじめ確認しています」
「え? これ全部食べてるってこと? すげー」
「感心するところそこか」
「トラ様、こちらをどうぞ。タツ様も」
「エドさん、ありがとう。……んーんもっちゃ団子がもっちゃもっちゃしてる」
「スープの味はさっぱりしてちょっとすうっとしたハーブが効いてる感じでうまいな。団子はあんまり鳥肉のスープに合ってないな。甘みが絡んでしつこい」
「鳥肉といっしょにしてもち入り鳥肉団子にしたら食べやすくなるかも」
「まあこれはこれで好きな人もいるかもしれないけどな。でもやっぱこの団子はデザートで別に食べたいな」
「きなこかけたい」
「あるのか? まあちょっと甘みおさえたほうがいいよな」
「なるほど。坊主たち、ちょっとこれかけてみろ」
「なにそれ? 緑の粉?」
「薬草を乾燥させて挽いたものだ」
「ちょっと失礼します」
エドさんが受け取ってペロリした。
「ケモネゥミの粉末ですね。大丈夫です」
「どれどれ? む、苦い」
「なんか抹茶みたいだな」
「団子にまぶすといい感じでおいしくなる」
「おおすごく印象が変わるな。これはデザートとして結構好きだ」
「そうかそうか。ちょっとお高いからたくさんは出せないが、今度からメニューに採用してみよう」
「たまに食べたいかも」
「じゃあ買いだめしとくか?」
「いいね! じゃあ団子と緑の粉、えーと、いっぱいください!」
「おうわかった。すぐにはできないからあとでまた来てくれ。坊主たちがその辺回ってくるころにはできてるはずだ」
「この人たち大雑把だなあ。とりあえず金貨一枚分でお願いします」
「あいよ。まいどあり」
「やたらと広いな。舗装もされてない空き地みたいなもんだけど」
冒険者登録を終えて馬車に乗り王都の街門をなぜか敬礼されながら通り抜けるとそこはもうだだっ広い広場だった。
「王都に入るために並んでいる人たちと、それを目当てにした商売人がうじゃうじゃいるな」
「出ていく方はそんなに混みあってないけど、溜まってるのは仲間が門を通り抜けるのを待ってる感じの人かな」
「馬車に乗ってるのは行商人とかだろうから出たら止まらずそのまま旅立っていく感じだな」
「あ、バス停みたいのがあるね。乗る人が集まってる」
「乗合馬車か。ちょっとお金のある人と遠くまで行く人かな。あと荷物の多い人」
「トラ様、タツ様、ここから南に向かう街道を通りますね。ちょっと揺れますからご注意を」
「エドさん、もっとくだけて」
「えっと、わかったぜ」
「無茶言うなよ」
「だってあんまり丁寧だと普通じゃないと思われるじゃん」
「王族マークでかでかと張り付けた豪華な馬車で言葉づかいだけ変えてもムリだと思うぞ」
「んーそっか。じゃあいいや」
「大体エドさんなんて王城のなかでも特に王族の生活スペースの警備するような特別な警備隊の隊長だぞ。俺たちに付けてくれるくらい信頼されてるし、もともと相当な身分のはずだ。絶対くだけた言葉づかいなんてしたことなさそうだろ」
「そうだよね。ちょっとおもしろいからからかってみただけだよ」
「王族のハラスメントえげつねえな」
「え? エドさんいやだったら言ってね」
「めっそうもございません」
「言えるわけねえだろ……」
ん? いまなんか見えたような?
「あれ? なんかいま飛んでなかった?」
「ん? ああ、あれは護衛の影だな」
「なにそれ? かげ?」
「忍者みたいなもんだ」
「ニンジャ?! そんなのいたの?!」
「周りに危険がないか偵察して報告してるんだ」
「報告? だれに?」
「エドさんにだよ」
「なにそれすごい! エドさんいまのかげ?なんて言ってたの?」
「前方二千歩ほどのところに盗賊が隠れていましたので排除したとのことです」
「ほえぇすごい。影さんに会ってみたいな」
「影は護衛対象に姿を見られるのを恥と考えていますので、できればそっとしてやってください」
「そうなんだ。わかった。お礼にケーキあげたら喜んでくれるかな?」
「たぶん喜んでくれるぞ」
「そうしよう」
そのあとも特になにごともなく――たぶん影がなんかしてくれたんだと思うけど――今日泊まる予定の町に着いた。
「着いたー」
「門番に敬礼されたな」
「そだね」
「……まあ気にしてないんならいいんだけど」
「おいしい屋台はあるかなー」
「この町の周辺は農業が盛んらしいな」
「へー」
「だからこの町は農産物の市場がすごいらしいぞ」
「つまり食べ物が安くてうまい?」
「まあたぶんそうだな」
「よし買い食いしよう。味見しないと」
「はいはい」
「おじさーん、これなに?」
「おうらっしゃい、ティレムサテュヴァとグルジャヴァティェサプルシェントの団子入りスープだぞ」
「ティレ……ってなんだっけ?」
「鳥肉と果物団子のスープだな」
「鳥肉ってあの脚六本あるやつ?」
「おおそうだ。それを挽き潰したやつだ」
「挽肉スープか。味は?」
「塩と薬草が入ってる。うまいぞ」
「匂いはおいしそうだよね。これ食べてみようよ」
辰巳がちらっとエドさんを見るとエドさんがかすかにうなづいた。
「いまのなに?」
「虎彦、なんでたまに鋭いんだよ」
「たまにってなんだよ」
「まあ一応毒見済みってことを確認しただけだ」
「うぇっ? いつのまに?」
「影が町じゅうに散らばってあらかじめ確認しています」
「え? これ全部食べてるってこと? すげー」
「感心するところそこか」
「トラ様、こちらをどうぞ。タツ様も」
「エドさん、ありがとう。……んーんもっちゃ団子がもっちゃもっちゃしてる」
「スープの味はさっぱりしてちょっとすうっとしたハーブが効いてる感じでうまいな。団子はあんまり鳥肉のスープに合ってないな。甘みが絡んでしつこい」
「鳥肉といっしょにしてもち入り鳥肉団子にしたら食べやすくなるかも」
「まあこれはこれで好きな人もいるかもしれないけどな。でもやっぱこの団子はデザートで別に食べたいな」
「きなこかけたい」
「あるのか? まあちょっと甘みおさえたほうがいいよな」
「なるほど。坊主たち、ちょっとこれかけてみろ」
「なにそれ? 緑の粉?」
「薬草を乾燥させて挽いたものだ」
「ちょっと失礼します」
エドさんが受け取ってペロリした。
「ケモネゥミの粉末ですね。大丈夫です」
「どれどれ? む、苦い」
「なんか抹茶みたいだな」
「団子にまぶすといい感じでおいしくなる」
「おおすごく印象が変わるな。これはデザートとして結構好きだ」
「そうかそうか。ちょっとお高いからたくさんは出せないが、今度からメニューに採用してみよう」
「たまに食べたいかも」
「じゃあ買いだめしとくか?」
「いいね! じゃあ団子と緑の粉、えーと、いっぱいください!」
「おうわかった。すぐにはできないからあとでまた来てくれ。坊主たちがその辺回ってくるころにはできてるはずだ」
「この人たち大雑把だなあ。とりあえず金貨一枚分でお願いします」
「あいよ。まいどあり」
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