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第11話 旅立ち
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モブに馬と馬車の説明を受けて餌や備品の入った魔法袋を受け取った。
モブって存在が薄いというかたまに見えなくなるときがあるよね。
あれで次期王様として大丈夫なのかちょっと不安になる。
「さあて出発だ!」
「おはよ。朝ごはんまだだろ。落ち着け」
「朝ごはんなにかな?」
「料理長がお弁当も作るって言ってたぞ」
「マジで? やったー!」
「とりあえず顔を洗って着替えてこい」
「んう。そっか」
なんか準備万端な気がしてたけど、気のせいだった。
「よし。朝ごはんはいつもどおりうまかった。身支度はオッケー。荷物は馬車に積んでもらった。挨拶は昨日済ませた。完ぺきでは?」
「一か月分の食糧は収納したし、地図は確認したし、連絡手段も確保したし、関所や各町に通達も出したし、経路に護衛も配備したし、冒険者組合に根回しもしたし、えーっと……」
「辰巳? 行こう?」
「あ、ああ。……そうだな。なんとかなる。なんとかする。行くぞ」
「おー」
辰巳もぼおっとすることあるんだな。緊張してるのか?
オレがついてるから安心だぞ!
*****
「トラ様、冒険者組合に到着しました」
「エドさん、もうちょっとくだけた感じにして」
「おう、着いたぜ」
「変わりすぎ」
「虎彦、遊んでないで行くぞ」
「待って、いっしょに入ろう」
「よし、せーのっ」
「たのもーう!」
「え? そういう感じ?」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
「あれ? なんで?」
「あ、ちょ(もっと自然な感じでお願いします)」
「え、ごほん、あー冒険者組合のご利用は初めてでしょうか?」
「初めてです! 登録しに来ました!」
「それではあちらのお部屋でお話を聞かせてください」
「あれ? 窓口に並ぶんじゃないの?」
「あ、あのう、特別にお部屋をご用意しましたので」
「えー。そうなんだ」
「あ、あっちの窓口が空いてるぞ(そこをなんとか)」
「えあ、ああ、そうですね、そちらへどうぞ(念のため人払いしといてよかった)」
「なんか窓口に並ぶと冒険者って感じするね」
「並んでないけどな」
「いらっしゃいませ。冒険者のご登録ですね」
「はい。二人お願いします」
「では認証情報を登録しますので、こちらの箱に指を入れてください。ちょっとチクッとしますが、安全ですのでご安心ください。安全です」
なにやらいびつな形をした箱(?)が出てきた。生体認証? 血液とか採られるのかな? 意外とハイテクだね。
「お、俺が先にやろうか」
「いいよ」
辰巳が恐るおそる指を入れる。
「うわ、確かにチクッとして一瞬血が抜き取られたような感じがする。そしてペロッと生ぬるいものに舐められたような感じもする」
「もう抜いていいですよ。カードができるまでに数分かかりますので、このままお待ちください。待ち時間に冒険者組合のルール等をご説明しますね。」
すると箱のなかからかすかな音が聞こえてくる。
カチャッ……ペタペタペタ……プシューッ……ぴちゃっぴちゃっぬちょっ……どるるるるるるぅむ……ガッシャンどぅむっ……パチンッ……コンコンプヒィーッきるきる……ドガーン!……サッ…サッ…サッ……ズザッ……ぷるるん!
「な……なんですか、この、音? なにが入ってるんですか?」
「あ、気にしないでください。入ってるとか、なかみとか、そういう考えかたは危険です。むかしこの機械のなかみが気になってなかを覗いてみた人がいるらしいんですが……」
「え、ええ。なにか入ってたんでしょうか?」
「その人は、なにかと目が合ったとつぶやきながらどこかに走り去ったまま二度と戻ってこなかったそうです」
「……なにが、入ってるんでしょうか?」
「これは機械です。カードに情報を登録する機械」
「あ、……機械。……目が合った? いや、なかの人なんていない。これは機械」
「そうです。考えてはいけません。思わずこの世の深いところに触れてしまうと帰ってこられなくなるかもしれませんから」
プシューッ……ぬるっ
「あ、カードが出てきましたね。タツ様、冒険者組合ランクは83からスタートです」
「83がなんなのかわからん……」
「通常下っ端は1からスタートですが、事情により高ランクからのスタートです。現存する最高ランクは127ですね」
「次オレがやる!」
「おまえこの流れで恐れを知らないな……」
「うおっ気持ち悪い! なにこれ!」
カチャッ……ペタペタペタ……キーッキーッ……プシューッ……ぴちゃっぴちゃっぬちょっ……どるるるるるるるるぅむ……ガッシャンひょいっ……パチンッ……コンコンプヒィーッきりきり……ドーン!……サッ…サッ…サッ……ズザザッ……ぷるるるん!
「さっきとちょっと違うね」
「同じに聞こえるけど」
「ナニカが能力値等を照合する際に近いものほど似た音になるという研究結果があります」
「わりと研究されてるんだね」
「気になりますからね」
プシューッ……ぬるっ
「トラ様、冒険者組合ランクは同じく83からスタートです」
「同じだね。なんで?」
「大人の事情ですね」
「へー」
「あーそこは気にしなくて大丈夫だ。たぶん旅が楽になるだけのはずだぞ」
「そうですね。ランクによって優遇措置がありますから、各地で提示するといいことがあると思いますよ」
「そうなんだ。じゃあいいや」
「ところで冒険者組合のルール説明してないよね」
「大抵この奇怪……機械が気になって話ができませんね」
というわけで説明をしてもらった。
辰巳がちゃんと聞いてたはず。
モブって存在が薄いというかたまに見えなくなるときがあるよね。
あれで次期王様として大丈夫なのかちょっと不安になる。
「さあて出発だ!」
「おはよ。朝ごはんまだだろ。落ち着け」
「朝ごはんなにかな?」
「料理長がお弁当も作るって言ってたぞ」
「マジで? やったー!」
「とりあえず顔を洗って着替えてこい」
「んう。そっか」
なんか準備万端な気がしてたけど、気のせいだった。
「よし。朝ごはんはいつもどおりうまかった。身支度はオッケー。荷物は馬車に積んでもらった。挨拶は昨日済ませた。完ぺきでは?」
「一か月分の食糧は収納したし、地図は確認したし、連絡手段も確保したし、関所や各町に通達も出したし、経路に護衛も配備したし、冒険者組合に根回しもしたし、えーっと……」
「辰巳? 行こう?」
「あ、ああ。……そうだな。なんとかなる。なんとかする。行くぞ」
「おー」
辰巳もぼおっとすることあるんだな。緊張してるのか?
オレがついてるから安心だぞ!
*****
「トラ様、冒険者組合に到着しました」
「エドさん、もうちょっとくだけた感じにして」
「おう、着いたぜ」
「変わりすぎ」
「虎彦、遊んでないで行くぞ」
「待って、いっしょに入ろう」
「よし、せーのっ」
「たのもーう!」
「え? そういう感じ?」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
「あれ? なんで?」
「あ、ちょ(もっと自然な感じでお願いします)」
「え、ごほん、あー冒険者組合のご利用は初めてでしょうか?」
「初めてです! 登録しに来ました!」
「それではあちらのお部屋でお話を聞かせてください」
「あれ? 窓口に並ぶんじゃないの?」
「あ、あのう、特別にお部屋をご用意しましたので」
「えー。そうなんだ」
「あ、あっちの窓口が空いてるぞ(そこをなんとか)」
「えあ、ああ、そうですね、そちらへどうぞ(念のため人払いしといてよかった)」
「なんか窓口に並ぶと冒険者って感じするね」
「並んでないけどな」
「いらっしゃいませ。冒険者のご登録ですね」
「はい。二人お願いします」
「では認証情報を登録しますので、こちらの箱に指を入れてください。ちょっとチクッとしますが、安全ですのでご安心ください。安全です」
なにやらいびつな形をした箱(?)が出てきた。生体認証? 血液とか採られるのかな? 意外とハイテクだね。
「お、俺が先にやろうか」
「いいよ」
辰巳が恐るおそる指を入れる。
「うわ、確かにチクッとして一瞬血が抜き取られたような感じがする。そしてペロッと生ぬるいものに舐められたような感じもする」
「もう抜いていいですよ。カードができるまでに数分かかりますので、このままお待ちください。待ち時間に冒険者組合のルール等をご説明しますね。」
すると箱のなかからかすかな音が聞こえてくる。
カチャッ……ペタペタペタ……プシューッ……ぴちゃっぴちゃっぬちょっ……どるるるるるるぅむ……ガッシャンどぅむっ……パチンッ……コンコンプヒィーッきるきる……ドガーン!……サッ…サッ…サッ……ズザッ……ぷるるん!
「な……なんですか、この、音? なにが入ってるんですか?」
「あ、気にしないでください。入ってるとか、なかみとか、そういう考えかたは危険です。むかしこの機械のなかみが気になってなかを覗いてみた人がいるらしいんですが……」
「え、ええ。なにか入ってたんでしょうか?」
「その人は、なにかと目が合ったとつぶやきながらどこかに走り去ったまま二度と戻ってこなかったそうです」
「……なにが、入ってるんでしょうか?」
「これは機械です。カードに情報を登録する機械」
「あ、……機械。……目が合った? いや、なかの人なんていない。これは機械」
「そうです。考えてはいけません。思わずこの世の深いところに触れてしまうと帰ってこられなくなるかもしれませんから」
プシューッ……ぬるっ
「あ、カードが出てきましたね。タツ様、冒険者組合ランクは83からスタートです」
「83がなんなのかわからん……」
「通常下っ端は1からスタートですが、事情により高ランクからのスタートです。現存する最高ランクは127ですね」
「次オレがやる!」
「おまえこの流れで恐れを知らないな……」
「うおっ気持ち悪い! なにこれ!」
カチャッ……ペタペタペタ……キーッキーッ……プシューッ……ぴちゃっぴちゃっぬちょっ……どるるるるるるるるぅむ……ガッシャンひょいっ……パチンッ……コンコンプヒィーッきりきり……ドーン!……サッ…サッ…サッ……ズザザッ……ぷるるるん!
「さっきとちょっと違うね」
「同じに聞こえるけど」
「ナニカが能力値等を照合する際に近いものほど似た音になるという研究結果があります」
「わりと研究されてるんだね」
「気になりますからね」
プシューッ……ぬるっ
「トラ様、冒険者組合ランクは同じく83からスタートです」
「同じだね。なんで?」
「大人の事情ですね」
「へー」
「あーそこは気にしなくて大丈夫だ。たぶん旅が楽になるだけのはずだぞ」
「そうですね。ランクによって優遇措置がありますから、各地で提示するといいことがあると思いますよ」
「そうなんだ。じゃあいいや」
「ところで冒険者組合のルール説明してないよね」
「大抵この奇怪……機械が気になって話ができませんね」
というわけで説明をしてもらった。
辰巳がちゃんと聞いてたはず。
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