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第2章
第18話 商人って…
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GURRR…
動けない陸草鰐に近づいていくと、陸草鰐は低く唸りながらギョロリとした目でこちらを見て来た。
いきなり奇襲されて、動けなくされてしまったんだ。恨み言の一つでも言いたいのかもしれない。
何か喋って居たとしても、理解できないから知らないんだけどね。
「兄さん…こんなに近づいて大丈夫なん…あれは…」
後ろからシーホが話しかけてくる。
陸草鰐の見た目は完全に怪物だから、近寄るだけでも怖いのは分かる。
それに、今までは陸草鰐で見えなかったが、側面に回ってきたことで、燃えて黒焦げになった荷馬車だったものや、踏み潰された積荷の箱や中身が見えてきたのもありそうだ。
残骸の周辺には、いくつもの赤い血溜まりが残っているのも見えている…
どれだけの人が、このワニに殺されたんだろうか…
こんなのを見たら、不安になるなってのが無理だろう。
「毒液に触らなければ、動けなくしてあるから問題ないと思うよ。…間違っても触るなよ?俺以外だと触れるだけで溶けるからな!」
優子の手から降りたしろまが、不用意に触りに行きかけていたので、注意するために少し大きめの声を出した。
ちゃんと聞こえたようで、しろまは少し飛び上がったように見えた後、優子のもとに飛ぶようにして戻って行った。
「まったく、何回言っても触ろうとするのは何なんだ…」
間違って毒液の檻に触れるかもしれないことを考えると、さっさと収納してしまった方が良さそうだ。
「みんな、少し近寄らないでね。片付けてしまうから。」
優子達を下がらせてから、動けない陸草鰐に左手を触れて収納。同時に毒液の檻も解呪してしまう。
この陸草鰐は襲ってきたわけじゃないが…こいつがいると、色々困るんだよね…これも運命と諦めて貰うしかない。
「一瞬…ですね…」
シーホはストレージリングの性能に驚いているようだが、こちらも早く慣れて欲しいものだ…
『情報提示。防御結界が解呪されました。』
ナビさんに言われて振り向くと、濃い青色の球体がその色を薄くしながら消えていくのが見えた。
陸草鰐が居なくなったのが分かったからなのか、それとも時間切れか…
出てきたのは、他の残骸とかしている馬車と違い、無傷の大きな荷馬車が2台。
幌がかかっているため、何が積まれているのかまでは分からないし、まだ人の姿は見えない。
「…誰も居ないのか…?」
生き残りがいるなら出てくるだろうけど…どんな奴かは分からないから、一応警戒しておく。
警戒しながら荷馬車を見ていると、幌がバサッと動いて何かが出てくるような気がした。
「全員、俺の後ろへ。相手が何者かわからないから、ここからは名前を出すんじゃないぞ?」
生き残りが善人とは限らない。
もしかしたら盗賊とかがワニより先に襲っていて、そいつらが隠れている可能性もあるからね。
何にせよ、下手に名前を覚えられて、後で目をつけられるのは避けたい。
幌から顔を出したのは、灰色の髪色の人種の男?だった。
彼はキョロキョロと周りを見渡すと、こちらに気がついたようだ。
荷馬車から完全に出た男は、こちらに向かって歩いてくる。
少し猫背で、キョロキョロと周りを見ながら歩いている男には、あまりいい印象は受けなかった。
こちらに歩いてくる男の服装は、村人と同じような一枚布を体に巻きつけただけのようで、パッと見には、剣なんかの武器になりそうなものを持っているようには見えない。
(ナビさん、あいつは?何者だ?)
『情報提示。種族名、人種。個体名、テッテリード。職業、テルテット商会荷馬車運輸隊隊員。年齢、17。身長…』
(ナビさん、そんなに細かくなくていいから。)
相変わらずの詳細報告。ナビさんの融通の利かなさは変わらないが、またテルテット商会か…
村で会った、あの商人と同じところならもしかすると…
「おいそこのお前!来るのが遅いんだよ!?なんでもっと早く助けに来ないんだ!?大切な荷物に被害が出ただろうが!?
見ろよ!馬も居なくなっちまったし!護衛も全滅しちまった!!
金を出してやってるっていうのに、冒険者ってのは役立たずばかりだ!!お前!この損失、どうしてくれるんだよ!?」
この商会には、こんな奴しか居ないんだろうか?
案の定、お礼ではなく文句を言って来やがった…
口振りは俺を誰かと間違えているのか、一切こちらに気を使うそぶりを見せないが、それにしても…
なんだこいつ?
優子やシーホも呆気にとられて固まっているようで、俺の後ろからは何も聞こえてこなかった。
動けない陸草鰐に近づいていくと、陸草鰐は低く唸りながらギョロリとした目でこちらを見て来た。
いきなり奇襲されて、動けなくされてしまったんだ。恨み言の一つでも言いたいのかもしれない。
何か喋って居たとしても、理解できないから知らないんだけどね。
「兄さん…こんなに近づいて大丈夫なん…あれは…」
後ろからシーホが話しかけてくる。
陸草鰐の見た目は完全に怪物だから、近寄るだけでも怖いのは分かる。
それに、今までは陸草鰐で見えなかったが、側面に回ってきたことで、燃えて黒焦げになった荷馬車だったものや、踏み潰された積荷の箱や中身が見えてきたのもありそうだ。
残骸の周辺には、いくつもの赤い血溜まりが残っているのも見えている…
どれだけの人が、このワニに殺されたんだろうか…
こんなのを見たら、不安になるなってのが無理だろう。
「毒液に触らなければ、動けなくしてあるから問題ないと思うよ。…間違っても触るなよ?俺以外だと触れるだけで溶けるからな!」
優子の手から降りたしろまが、不用意に触りに行きかけていたので、注意するために少し大きめの声を出した。
ちゃんと聞こえたようで、しろまは少し飛び上がったように見えた後、優子のもとに飛ぶようにして戻って行った。
「まったく、何回言っても触ろうとするのは何なんだ…」
間違って毒液の檻に触れるかもしれないことを考えると、さっさと収納してしまった方が良さそうだ。
「みんな、少し近寄らないでね。片付けてしまうから。」
優子達を下がらせてから、動けない陸草鰐に左手を触れて収納。同時に毒液の檻も解呪してしまう。
この陸草鰐は襲ってきたわけじゃないが…こいつがいると、色々困るんだよね…これも運命と諦めて貰うしかない。
「一瞬…ですね…」
シーホはストレージリングの性能に驚いているようだが、こちらも早く慣れて欲しいものだ…
『情報提示。防御結界が解呪されました。』
ナビさんに言われて振り向くと、濃い青色の球体がその色を薄くしながら消えていくのが見えた。
陸草鰐が居なくなったのが分かったからなのか、それとも時間切れか…
出てきたのは、他の残骸とかしている馬車と違い、無傷の大きな荷馬車が2台。
幌がかかっているため、何が積まれているのかまでは分からないし、まだ人の姿は見えない。
「…誰も居ないのか…?」
生き残りがいるなら出てくるだろうけど…どんな奴かは分からないから、一応警戒しておく。
警戒しながら荷馬車を見ていると、幌がバサッと動いて何かが出てくるような気がした。
「全員、俺の後ろへ。相手が何者かわからないから、ここからは名前を出すんじゃないぞ?」
生き残りが善人とは限らない。
もしかしたら盗賊とかがワニより先に襲っていて、そいつらが隠れている可能性もあるからね。
何にせよ、下手に名前を覚えられて、後で目をつけられるのは避けたい。
幌から顔を出したのは、灰色の髪色の人種の男?だった。
彼はキョロキョロと周りを見渡すと、こちらに気がついたようだ。
荷馬車から完全に出た男は、こちらに向かって歩いてくる。
少し猫背で、キョロキョロと周りを見ながら歩いている男には、あまりいい印象は受けなかった。
こちらに歩いてくる男の服装は、村人と同じような一枚布を体に巻きつけただけのようで、パッと見には、剣なんかの武器になりそうなものを持っているようには見えない。
(ナビさん、あいつは?何者だ?)
『情報提示。種族名、人種。個体名、テッテリード。職業、テルテット商会荷馬車運輸隊隊員。年齢、17。身長…』
(ナビさん、そんなに細かくなくていいから。)
相変わらずの詳細報告。ナビさんの融通の利かなさは変わらないが、またテルテット商会か…
村で会った、あの商人と同じところならもしかすると…
「おいそこのお前!来るのが遅いんだよ!?なんでもっと早く助けに来ないんだ!?大切な荷物に被害が出ただろうが!?
見ろよ!馬も居なくなっちまったし!護衛も全滅しちまった!!
金を出してやってるっていうのに、冒険者ってのは役立たずばかりだ!!お前!この損失、どうしてくれるんだよ!?」
この商会には、こんな奴しか居ないんだろうか?
案の定、お礼ではなく文句を言って来やがった…
口振りは俺を誰かと間違えているのか、一切こちらに気を使うそぶりを見せないが、それにしても…
なんだこいつ?
優子やシーホも呆気にとられて固まっているようで、俺の後ろからは何も聞こえてこなかった。
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