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第三章 ウェルカムキャンプ編

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阿修羅丸の言葉を聞いた瞬間、俺の心臓は激しく鼓動した。
確かに、あれほどの強い力を無制限に使えるはずがない。極論を言えば、アース自身が戦う必要はなくなる。
だとすると、何が代償だ? 魔力かアース自身の何かか……。



「まあ、そんな悲壮な顔をするな。召喚魔法は契約で成り立っている。俺からはアースに何も求めていない。まあ、自由に行動させるのと強い敵としか戦わないことを条件にしているけどな。だけど、召喚魔法自体に代償がいるんだ。アースの代償は、睡眠だ。使った力に比例して睡眠時間が増える。今回はざっと……2週間くらいじゃないか? 寝るだけで俺様の力を使えるんだ。お得だろう?」



睡眠……。
確かに、直接的には身体に害がないと思うが……。



「事情は分かったが……ちゃんと起きるんだろうな?」


「知らん。これほどの力を使ったことは今までない。まあ、2週間たってからのお楽しみなわけだ。もし起きなかったら、あれだ。「王子様」がキスすれば起きるんじゃないか? ……いや、アースは男だからお姫様のキスが必要か?」

「……な! ふざけている場合じゃ。」



すると、空間に裂け目ができて大きな魔力反応が現れた。
この魔力は……兄上。


案の定、兄上とその側近が現れた。
側には祖父上様もいる。


俺達は兄上の前に行き跪いた。



「兄上、わざわざ来ていただいて申し訳ないです。」


「いいや、王族のお前に加えて、学園の者たちが危機にさらされていたんだ。俺が来るのは当然だ。
……だが、もう終わったようだな。」


「はい、敵は以前俺たちが交戦した「ナレハテ」の一味でした。」


「ナレハテだと? わかった、事情はまた後で聞く。生徒たちの保護はこちらで進めている。お前たちは戦闘で疲れているだろう? 祖父上に王城まで送ってもらえ。……アースは、気絶しているのか?」



兄上は、俺が腕に抱いているアースを心配そうに見やった。
確かに、身動きもしないため一見すると意識がないように見える。


「いいえ、その……眠っているだけの様です。阿修羅丸の力を使った代償のようで。」


「俺様が倒したんだぜ! もっと褒めろ!」


俺の肩の上でふんぞり返っている阿修羅丸が、誇らしそうにそういった。



「そうか……。代償か、その話も後で詳しく教えてくれ。俺はこの場の指揮を執る。お前たちはゆっくり休んでくれ。……よく頑張ったな。」



綺麗とはいえなくなってしまった俺たちの服と顔の汚れを見て、兄上は俺達を労うように微笑んだ。
そして、俺の頭に手をのせると、すぐに表情を切り替えて場の指揮を行った。




俺達は祖父上のはからいで、王城へと帰還した。
その日は興奮状態も冷めやらなく、あまり眠ることができなかった。
しかし、次の日は父上も含めて今回のことについて報告会が行われた。
今回のウェルカムキャンプが相手側に漏れているのは確実であったが、なぜ漏れたのかは不明のままだった。相手の能力等を総合的に考えると、情報を盗まれてしまった可能性が高い。透明化や高い五感の能力を駆使すれば、情報が盗まれてしまうのも想像できる。

ともあれ、今回の件はひとまず落ち着きを見せた。



俺は未だ眠り続けているアースの部屋を毎日訪れている。
















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