上 下
138 / 149
第三章 ウェルカムキャンプ編

135

しおりを挟む
「………わかった。」




ローウェルはずるいな。
普段はひょうひょうとした奴だが、こういう大事な話をするときはまじめな顔をする。普段とのギャップからか妙に圧があるというか、首を縦に振ってしまうような力がある。
だけど、俺が返事をしたのは、何も側近の諫言だったからだけではない。ローウェルの言うことが事実だと思ったからだ。
アースが他人から選ばれる可能性……俺が、無意識に、いや意識的に目をそらしてきたことだ。
……そうだ。アースがいつまでも俺の側近でいてくれる保証はどこにもないのだ。主である俺が、アースのことを必要としていると、そう主張していく必要があるんだ。



「はい、じゃあ真面目な話はここまでにしましょう。いい感じに料理も出そろいましたからね。」


「………お前は、本当に切り替えが早いよな。」


「オンとオフの切り替えは大事ですから。それに、これが俺の持ち味です。」


「冷静かつ肝が据わっていて何よりだ。……結構おいしそうにできたな。」


「ええ、そうですね。料理は見た目も重要ですから。」


「本で読んだだけなのにそれらしいことを言うなよ。」



ローウェルは気にしていないとでも言いたげな貴族スマイルで俺のことを見つめた後、わざとらしく俺の後方に視線を向けた。


「あっちの準備も終わったみたいですね。アースの風呂対策にも驚きましたが、ジールも大概常識はずれで頼もしいですね。」


俺はローウェルの視線を追うように後ろを振り返ると、大樹の枝の先に鎮座する立派なログハウスが見えた。
あれは何かというと、考えるまでもなく木属性をもつジールがつくったログハウスだ。樹上につくられているため、地上につくるよりも安全性の高い家となっている。



「由緒あるバルザンス家の次男だからな。ジールの恐ろしいところは、自然にああいうことができることだ。」


「きっと、いい師匠や型破りなライバルがいるのでしょう。」


「ああ、まったくだ。」


「さてと、料理が冷めないうちに食べてしまいましょう。俺、呼んできますね。」


「ああ、頼む……」



その瞬間、強烈な魔力が放たれたのを感じるとともに、大樹を超すほどの巨大な氷柱が目に移り込んだ。
それと同時に、強烈な閃光と共にキースとジールが俺たちの元へと現れた。


「ジール、状況を。」


「了解ッス。」



ジールは一言そういうと、目を閉じて集中し始めた。
近距離の感知を広範囲に広げて、索敵をしているのだ。


「あいつは……間違いない、ナレハテッス。それに、前にいたパワー系のデカブツもいるッス。それから、この森の周囲にB級以下の魔物が急に現れて、今は周りの騎士・魔導士たちが対応しているッス。」


「ナレハテだと……。」



その瞬間、俺の体中を激しく魔力が駆け巡った。
確かに、あの時の俺たちは弱かった。だけど、あいつのせいで、俺達は……アースは。

いや、冷静になれキルヴェスター。怒りに身を任せていては、王族の風上にも置けない。



「急に現れただと……。それはまるで、前にアースを傷つけた透明化の能力を持った蜥蜴のようだな。」


「そいつが、自身だけではなく他のものも透明化できるとしたら不思議ではない。やつも必ず近くにいるはずだ。……しかし、それほどの能力となるともはやA級には収まらないな。」


確かにそのとおりだ。
この2年間の間に、俺達と同じように力をつけていたとしたら……。A級以上の魔物にランクアップしているかもしれない。


「お前たちに命令を下す。俺と共に、アースの援護に向かい、必ずナレハテどもを打ち倒せ。……これは、俺達がケリをつけなければいけないことだ。」


俺がそういうと、3人はすぐさま跪いて恭順の意を示した。
……必ず倒さなければならない。待っていろ、アース。


「俺が「影移動」でまとめてみんなを運びます。みんな、戦闘態勢を維持していろよ。」


「この人数を影移動させるだと? それ程の負荷をかければ、ローウェルが戦えなくなる。」


「いいえ、それでいいんです。魔導士として俺は再スタートを切ったばかりです。A級以上の魔物を相手するには、俺はお荷物です。今回は、最速の移動手段として使い潰してください。」


「……わかった。じゃあ、行くぞ。必ず、ケリをつける。」


しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

処理中です...