上 下
115 / 149
第三章 ウェルカムキャンプ編

112

しおりを挟む
俺たちは、あらゆる視線を集めながら1階へと戻った。
そして、俺は隠すことが何もないと言わんばかりに堂々と、阿修羅丸を抱いて元の席に座った。

「さて、アース。確認だが、従魔法の才能に目覚めたというわけではないよな?」


「うん、もちろん。俺の属性に変わりはないよ。」


「ということは、今抱えているその面妖な生物はまさか………あの時の角の生えた御仁か?」


「そのとおり! この姿の名前は、阿修羅丸。あの姿では目立つと思って、普段はこのチャーミングな姿でいてもらっているよ。」


「「「「あの姿では目立つと思って、この姿になったのか(ッスか)?」」」」




おー、すごい! ハモったぞ! さすがは、幼馴染の主従関係だ。
だけど、何が疑問なのだろうか? あと、面妖な姿とは果たして誉め言葉だっただろうか?



「えーと、そのとおりだけど何か変かな?」



俺がそういうと、キルたちは何やら視線を交わし合って、微妙な表情で首を横に振った。

うーん。キルたちには、このチャーミングな姿がイマイチ伝わらなかったようだ。まあ、一緒にいればきっと伝わるだろう。
今はとりあえず挨拶をしよう。


「阿修羅丸。まずは、間接的な主であるキルを紹介するよ。キルはこの国の第二王子で、俺達の主でもあるよ。」



俺がそう紹介すると、先程の一件で不貞腐れていた阿修羅丸は、キルに流し目を送った。



「あ、阿修羅丸殿、お久しぶりです。改めて、あの時は救っていただきありがとうございます。」



「うん? あー、あの時の泣き虫役立たず似非赤王子か。」



その瞬間、キルの爽やかな笑みがピキッと固まった。
いや、待て待て待て。何だ、その失礼な呼び方は。まさかとは思うが、あの時も同じ王なことを言っていたわけではないよな?



「ちょっと、阿修羅丸! 何て失礼な呼び方をしているんだよ! まさかとは思うけど、3年前も同じような呼び方をしたわけではないよね?」


「あー、したんじゃねーか? よく覚えてねーな。」



すかさずキルの方を向くと、固まった笑顔のまま首を横に振った。


「え、似非赤王子は初めて言われた………。」


「おい、阿修羅丸! キルは、似非王子ではなくて本物の王子だよ! それに、役立たずでも泣き虫でもないよ!」


「いやー、あん時は役立たずで泣き虫だったぜ? そっちの木属性とチャラ男の方がよっぽど役に立ってたな。黒い騎士の方は、あんまり印象にねーな。というか、あん時いたか?」




「木属性って………でも、褒められたッス。」
「チャ、チャラ男………。」
「………。」



ジールは、褒められてうれしそうで、ローウェルは顔を引きつらせていた。キースはいつもの不愛想な顔がさらに、険しくなっている。きっと、ムカついているのだろう。
それにしても、呼び方があまりにもひどい。あの時の印象が強いようだけど、もう3年もたっているのだ。ここは、召喚主としてしっかりと注意をしなければならない。


「阿修羅丸。あの時から、もう3年もたっているんだ。普通に、名前で呼んでくれないかな? ………そうしないと、今日から晩御飯はキュウリ1本にするよ。」

「はぁーーー!? ふざけるな! 俺はペットじゃねーんだぞ! ………名前で呼べと言われても、こいつらの名前なんか知らねーよ。」


「あー、なるほど。つまり、名前を教えればちゃんと呼ぶっていうこと?」


「それはわからねーな。俺のハイセンスなあだ名で呼ぶかもしれないな?」



俺は半目で阿修羅丸を見た後、改めて4人の名前を教えた。
後日、注意深く観察していると、4人の呼び方は以下のとおりで落ち着いたらしい。


キル:赤髪
ジール:木人(ぼくじん)
ローウェル:チャラ介
キース:鉄仮面




「それにしても、従魔を貴族院内に放しておくのはまずいかな?」



俺の問いに答えてくれたのは、ローウェルだった。
放し飼いがまずければ、阿修羅丸の行動が制限されることになる。あまり、フラストレーションを溜めたくないんだけどな。


「うーん、どうだろうな。別に構わないと思うが………。とりあえず、阿修羅丸がアースの従魔だと認知されるように、しばらくの間連れ歩いておけばいいんじゃないか?」


「なるほどね。じゃあ、しばらくは抱っこするか肩にのせておくことにするよ。」


「………お、おう。」






ーー



明けましておめでとうございます。
読者の皆様。
昨年は、本当にありがとうございました。
皆様のおかげで、楽しく連載を続けられました。
今年も何卒、よろしくお願いします。


しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

処理中です...