111 / 149
第三章 ウェルカムキャンプ編
108
しおりを挟む
貴族院は5年制だ。
1学年の教室は6階にあり、学年が上がるごとに教室は下がっていく。7階以上には研究室などがある。1階にはレストランやテラスなどの共用設備がある。
その他の建物として、騎士棟、魔導士棟、文官棟などがある。
俺とアクア先生は、「A」と書かれた扉を開いた。
教室は教師が来るまで歓談する生徒が多かったようで、扉を開けると様々な話声が聞こえてきた。生徒たちは1週間でロリっ娘教師には見慣れたらしく、アクア先生の姿を確認すると静かに席に着こうとした。しかし、その後ろから
現れた俺の姿を確認すると、座ろうとしていた動きをピタリと止めた。
ーーーーーー
Aクラスの生徒、主に女子一同はこの時のことを、「銀色の君が小説の中から飛び出してきたかと思った」と表現しているらしい。
ーーーーーーー
俺は教室に入ると同時に、キルの姿を探した。そして、目的の人物はすぐに見つかった。以前よりも高くなった背。けれども、見慣れた赤い髪に赤い瞳。
キルも俺の姿を確認したようで、大きく目を見開いていた。確かに久しぶりに会うけど、かなり驚いているように思える。まさかジール、伝えていないのか?
俺がすぐにジールに目線を送ると、ジールは口を「サプライズッス!」と動かした。多分、そう言っている。
なるほど。俺はとりあえず、現状を受け入れた。
「はーいみんな、座るですの。1週間遅れなのですが、みんなのクラスメイトを紹介するのですの。推薦枠のアース・ジーマル君ですの。」
いや、先生、みんな立ったままですよ?
まあ、このまま黙っているのもあれだから俺は一礼して自己紹介をすることにした。
「ご紹介にあずかりました、アース・ジーマルと申します。アーキウェル王国初学院に通っていた方は久しぶりですね。私は昨日まで2年間、わけあって領地で療養していました。体調が完全回復しましたので、1週間遅れではありますが貴族院にかようことになりました。私は魔導士志望で、氷属性が得意です。2年ぶりに王都に来て学生生活を送りますので、至らない点があれば何なりとお申し付けください。どうぞ、よろしくお願いします。」
俺の挨拶がおわり、一瞬の間のあと、すぐにアーキウェル王国初学院の卒業生のみんなが赤いマントをなびかせながら駆け寄ってきてくれた。
「アース様、お元気そうで何よりですわ。」
「マーガレット様、お久しぶりです。ご心配をおかけしました。」
「いいえ、とんでもございませんわ。ほら、あなたたちもご挨拶しなさいまし。」
すると、見慣れた2人が前に出てきた。マリア様とムンナ様だ。
「アース様、ご機嫌麗しゅうございますわ!」
「アース様、お久しぶりでございますわ!」
「マリア様、ムンナ様、お久しぶりです。お2人もお元気そうで何よりです。それからマリア様。お礼を言うのが遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。今更ですが、あの時はテレシー侯爵領の皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。」
「い、いいえ、お礼には及びませんわ! 我がテレシ―侯爵家がアース様を含め、キルヴェスター殿下のお役に立てて光栄にございますわ。」
「ありがとうございます。是非今度、何かお礼をさせてください。」
「も、もったいないお言葉いございます。」
俺はそのほか、元同級生みんなと挨拶を済ませた。ちらりとキルたちの方を見ると、キルたちは席に着席しており、なにやら言い争っていた。
俺は、先程会ったオルト様や他国のマントをつけた生徒に軽く挨拶をした後に、キルたちの方へと向かった。
俺がそばまで近づくと、キルたちは言い争いをやめて俺の方を向いた。
………久しぶりのキルだ。やばい、かっこよくなりすぎている。スポーツ少年のあどけなさが残っているものの、爽やかイケメンとなっている。それに、服の上からでも均整の取れた体つきなのがわかる。
「キル、久しぶり! 元気そうだね!」
「………ああ。」
以前の聞き慣れたものよりも、少しだけ低くなっているキルの声。そして、少しだけかすれている。まだ、変声期の途中なのだろう。ちなみに、俺はまだ変声期を迎えていない。
って、え? 久しぶりに、会ったのにそれだけなの?
というか、すぐに目をそらされたんですけど!
久しぶりに会った俺の大切な人は、絶賛思春期真っ只中らしい。
俺はすぐに、同じく久しぶりに会うローウェルに目線を送った。ローウェルは少しだけ首を横に振った。おそらく、今はそれくらいで、ということだろう。
それなら先に、側近のみんなに挨拶をしよう。俺はキルの肩をポンと叩いて、側近のみんなを見渡した。
ローウェルは以前のチャラさはそのままに、少しだけ大人びた雰囲気になっている。いわゆる、やんちゃ風イケメンだ。
キースは、細身ながらキルと同じく服の上からでもわかる均整の取れた体つきをしている。涼しげな眼のクールイケメンだ。黒髪黒目も相まって、懐かしさがこみあげてくる。
「ローウェル、キースも久しぶり。2人も元気そうだね。」
「おう、アース。アースも相変わらず元気そうで、何よりだぜ。」
「ああ、アース。強くなったか?」
「キースはなんというか、よく育ったね。強くなったかどうかは、自分の目で確かめてみるといいよ。模擬戦でもしようか?」
俺がそういうと、キースは不愛想な顔を少しだけ緩めて微笑んだ。
「療養明けの体がなまってなければいいけどな。」
すると、教室の隅から「あのキース様が笑っていますわ」といった類の囁き声が聞こえてきた。
キース………まさかとは思うけど、いつもの不愛想中を崩さずに過ごしてきたわけではないよね?
まあ、今はいいか。キースに限らず、俺達は互いに互いの実力を把握しておく必要があるな。
1学年の教室は6階にあり、学年が上がるごとに教室は下がっていく。7階以上には研究室などがある。1階にはレストランやテラスなどの共用設備がある。
その他の建物として、騎士棟、魔導士棟、文官棟などがある。
俺とアクア先生は、「A」と書かれた扉を開いた。
教室は教師が来るまで歓談する生徒が多かったようで、扉を開けると様々な話声が聞こえてきた。生徒たちは1週間でロリっ娘教師には見慣れたらしく、アクア先生の姿を確認すると静かに席に着こうとした。しかし、その後ろから
現れた俺の姿を確認すると、座ろうとしていた動きをピタリと止めた。
ーーーーーー
Aクラスの生徒、主に女子一同はこの時のことを、「銀色の君が小説の中から飛び出してきたかと思った」と表現しているらしい。
ーーーーーーー
俺は教室に入ると同時に、キルの姿を探した。そして、目的の人物はすぐに見つかった。以前よりも高くなった背。けれども、見慣れた赤い髪に赤い瞳。
キルも俺の姿を確認したようで、大きく目を見開いていた。確かに久しぶりに会うけど、かなり驚いているように思える。まさかジール、伝えていないのか?
俺がすぐにジールに目線を送ると、ジールは口を「サプライズッス!」と動かした。多分、そう言っている。
なるほど。俺はとりあえず、現状を受け入れた。
「はーいみんな、座るですの。1週間遅れなのですが、みんなのクラスメイトを紹介するのですの。推薦枠のアース・ジーマル君ですの。」
いや、先生、みんな立ったままですよ?
まあ、このまま黙っているのもあれだから俺は一礼して自己紹介をすることにした。
「ご紹介にあずかりました、アース・ジーマルと申します。アーキウェル王国初学院に通っていた方は久しぶりですね。私は昨日まで2年間、わけあって領地で療養していました。体調が完全回復しましたので、1週間遅れではありますが貴族院にかようことになりました。私は魔導士志望で、氷属性が得意です。2年ぶりに王都に来て学生生活を送りますので、至らない点があれば何なりとお申し付けください。どうぞ、よろしくお願いします。」
俺の挨拶がおわり、一瞬の間のあと、すぐにアーキウェル王国初学院の卒業生のみんなが赤いマントをなびかせながら駆け寄ってきてくれた。
「アース様、お元気そうで何よりですわ。」
「マーガレット様、お久しぶりです。ご心配をおかけしました。」
「いいえ、とんでもございませんわ。ほら、あなたたちもご挨拶しなさいまし。」
すると、見慣れた2人が前に出てきた。マリア様とムンナ様だ。
「アース様、ご機嫌麗しゅうございますわ!」
「アース様、お久しぶりでございますわ!」
「マリア様、ムンナ様、お久しぶりです。お2人もお元気そうで何よりです。それからマリア様。お礼を言うのが遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。今更ですが、あの時はテレシー侯爵領の皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。」
「い、いいえ、お礼には及びませんわ! 我がテレシ―侯爵家がアース様を含め、キルヴェスター殿下のお役に立てて光栄にございますわ。」
「ありがとうございます。是非今度、何かお礼をさせてください。」
「も、もったいないお言葉いございます。」
俺はそのほか、元同級生みんなと挨拶を済ませた。ちらりとキルたちの方を見ると、キルたちは席に着席しており、なにやら言い争っていた。
俺は、先程会ったオルト様や他国のマントをつけた生徒に軽く挨拶をした後に、キルたちの方へと向かった。
俺がそばまで近づくと、キルたちは言い争いをやめて俺の方を向いた。
………久しぶりのキルだ。やばい、かっこよくなりすぎている。スポーツ少年のあどけなさが残っているものの、爽やかイケメンとなっている。それに、服の上からでも均整の取れた体つきなのがわかる。
「キル、久しぶり! 元気そうだね!」
「………ああ。」
以前の聞き慣れたものよりも、少しだけ低くなっているキルの声。そして、少しだけかすれている。まだ、変声期の途中なのだろう。ちなみに、俺はまだ変声期を迎えていない。
って、え? 久しぶりに、会ったのにそれだけなの?
というか、すぐに目をそらされたんですけど!
久しぶりに会った俺の大切な人は、絶賛思春期真っ只中らしい。
俺はすぐに、同じく久しぶりに会うローウェルに目線を送った。ローウェルは少しだけ首を横に振った。おそらく、今はそれくらいで、ということだろう。
それなら先に、側近のみんなに挨拶をしよう。俺はキルの肩をポンと叩いて、側近のみんなを見渡した。
ローウェルは以前のチャラさはそのままに、少しだけ大人びた雰囲気になっている。いわゆる、やんちゃ風イケメンだ。
キースは、細身ながらキルと同じく服の上からでもわかる均整の取れた体つきをしている。涼しげな眼のクールイケメンだ。黒髪黒目も相まって、懐かしさがこみあげてくる。
「ローウェル、キースも久しぶり。2人も元気そうだね。」
「おう、アース。アースも相変わらず元気そうで、何よりだぜ。」
「ああ、アース。強くなったか?」
「キースはなんというか、よく育ったね。強くなったかどうかは、自分の目で確かめてみるといいよ。模擬戦でもしようか?」
俺がそういうと、キースは不愛想な顔を少しだけ緩めて微笑んだ。
「療養明けの体がなまってなければいいけどな。」
すると、教室の隅から「あのキース様が笑っていますわ」といった類の囁き声が聞こえてきた。
キース………まさかとは思うけど、いつもの不愛想中を崩さずに過ごしてきたわけではないよね?
まあ、今はいいか。キースに限らず、俺達は互いに互いの実力を把握しておく必要があるな。
208
お気に入りに追加
3,571
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
人生イージーモードになるはずだった俺!!
抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。
前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!!
これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。
何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!?
本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる