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第三章 ウェルカムキャンプ編

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貴族院は5年制だ。
1学年の教室は6階にあり、学年が上がるごとに教室は下がっていく。7階以上には研究室などがある。1階にはレストランやテラスなどの共用設備がある。
その他の建物として、騎士棟、魔導士棟、文官棟などがある。


俺とアクア先生は、「A」と書かれた扉を開いた。
教室は教師が来るまで歓談する生徒が多かったようで、扉を開けると様々な話声が聞こえてきた。生徒たちは1週間でロリっ娘教師には見慣れたらしく、アクア先生の姿を確認すると静かに席に着こうとした。しかし、その後ろから
現れた俺の姿を確認すると、座ろうとしていた動きをピタリと止めた。

ーーーーーー


Aクラスの生徒、主に女子一同はこの時のことを、「銀色の君が小説の中から飛び出してきたかと思った」と表現しているらしい。


ーーーーーーー



俺は教室に入ると同時に、キルの姿を探した。そして、目的の人物はすぐに見つかった。以前よりも高くなった背。けれども、見慣れた赤い髪に赤い瞳。

キルも俺の姿を確認したようで、大きく目を見開いていた。確かに久しぶりに会うけど、かなり驚いているように思える。まさかジール、伝えていないのか?
俺がすぐにジールに目線を送ると、ジールは口を「サプライズッス!」と動かした。多分、そう言っている。

なるほど。俺はとりあえず、現状を受け入れた。



「はーいみんな、座るですの。1週間遅れなのですが、みんなのクラスメイトを紹介するのですの。推薦枠のアース・ジーマル君ですの。」


いや、先生、みんな立ったままですよ?
まあ、このまま黙っているのもあれだから俺は一礼して自己紹介をすることにした。



「ご紹介にあずかりました、アース・ジーマルと申します。アーキウェル王国初学院に通っていた方は久しぶりですね。私は昨日まで2年間、わけあって領地で療養していました。体調が完全回復しましたので、1週間遅れではありますが貴族院にかようことになりました。私は魔導士志望で、氷属性が得意です。2年ぶりに王都に来て学生生活を送りますので、至らない点があれば何なりとお申し付けください。どうぞ、よろしくお願いします。」



俺の挨拶がおわり、一瞬の間のあと、すぐにアーキウェル王国初学院の卒業生のみんなが赤いマントをなびかせながら駆け寄ってきてくれた。



「アース様、お元気そうで何よりですわ。」


「マーガレット様、お久しぶりです。ご心配をおかけしました。」


「いいえ、とんでもございませんわ。ほら、あなたたちもご挨拶しなさいまし。」



すると、見慣れた2人が前に出てきた。マリア様とムンナ様だ。


「アース様、ご機嫌麗しゅうございますわ!」
「アース様、お久しぶりでございますわ!」



「マリア様、ムンナ様、お久しぶりです。お2人もお元気そうで何よりです。それからマリア様。お礼を言うのが遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。今更ですが、あの時はテレシー侯爵領の皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。」


「い、いいえ、お礼には及びませんわ! 我がテレシ―侯爵家がアース様を含め、キルヴェスター殿下のお役に立てて光栄にございますわ。」


「ありがとうございます。是非今度、何かお礼をさせてください。」


「も、もったいないお言葉いございます。」




俺はそのほか、元同級生みんなと挨拶を済ませた。ちらりとキルたちの方を見ると、キルたちは席に着席しており、なにやら言い争っていた。
俺は、先程会ったオルト様や他国のマントをつけた生徒に軽く挨拶をした後に、キルたちの方へと向かった。


俺がそばまで近づくと、キルたちは言い争いをやめて俺の方を向いた。
………久しぶりのキルだ。やばい、かっこよくなりすぎている。スポーツ少年のあどけなさが残っているものの、爽やかイケメンとなっている。それに、服の上からでも均整の取れた体つきなのがわかる。




「キル、久しぶり! 元気そうだね!」

「………ああ。」



以前の聞き慣れたものよりも、少しだけ低くなっているキルの声。そして、少しだけかすれている。まだ、変声期の途中なのだろう。ちなみに、俺はまだ変声期を迎えていない。

って、え? 久しぶりに、会ったのにそれだけなの?
というか、すぐに目をそらされたんですけど!


久しぶりに会った俺の大切な人は、絶賛思春期真っ只中らしい。
俺はすぐに、同じく久しぶりに会うローウェルに目線を送った。ローウェルは少しだけ首を横に振った。おそらく、今はそれくらいで、ということだろう。
それなら先に、側近のみんなに挨拶をしよう。俺はキルの肩をポンと叩いて、側近のみんなを見渡した。

ローウェルは以前のチャラさはそのままに、少しだけ大人びた雰囲気になっている。いわゆる、やんちゃ風イケメンだ。
キースは、細身ながらキルと同じく服の上からでもわかる均整の取れた体つきをしている。涼しげな眼のクールイケメンだ。黒髪黒目も相まって、懐かしさがこみあげてくる。


「ローウェル、キースも久しぶり。2人も元気そうだね。」


「おう、アース。アースも相変わらず元気そうで、何よりだぜ。」
「ああ、アース。強くなったか?」


「キースはなんというか、よく育ったね。強くなったかどうかは、自分の目で確かめてみるといいよ。模擬戦でもしようか?」


俺がそういうと、キースは不愛想な顔を少しだけ緩めて微笑んだ。


「療養明けの体がなまってなければいいけどな。」



すると、教室の隅から「あのキース様が笑っていますわ」といった類の囁き声が聞こえてきた。
キース………まさかとは思うけど、いつもの不愛想中を崩さずに過ごしてきたわけではないよね?
まあ、今はいいか。キースに限らず、俺達は互いに互いの実力を把握しておく必要があるな。
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