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第三章 ウェルカムキャンプ編
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俺のいない3年の間、キルを見てきた側近のジールはどう判断するのだろうか。ずっと近くで、無理をしている主を見てきたのだ。「お前がそれを言うな」と言われてもおかしくはない。
しかし、ジールはスッと顔を上げて、穏やかな表情で首を横に振った。
「俺には、殿下がアースにどのような言葉を返すかはわからないッス。もしかすると、今の状況では、アースにきつい言葉をかけるかもしれない……。だけど、アースの言葉を聞かないということは無いと思うッス。なぜなら、6歳の時、殿下にとって1番欲しい言葉をかけたのがアースだったから。」
改めてそう言われると、なんだかむず痒いな………。
うん、ジールがそういってくれるなら自信をもってキルに言葉をかけよう。
「うん、ありがとう。ジール、3年の間でさらにかっこよくなったね。」
「そ、そうっスか? アースに言われると、なんだか照れるッスね………。さ、行くッスよ。」
ジールはそういうと、頭を掻きながら前へと歩き出した。
ーー
それから、職員室に着くと、ジールは「先に行ってるッス!」といって、教室へと向かっていった。
俺は職員室の扉を開いた。ジールによると、俺達1-Aのクラス担任は、アクアという名前、女性の先生らしい。どんな人かとジールに聞くと、「………見ればわかるッス!」と、
一瞬間をおいて明るく答えた。
さてと、職員室を見渡すと老若男女様々な先生がいるけど………うん、わかった。
俺は、その女性の元へと迷わずに向かった。
「すみません、アクア先生でいらっしゃいますか。」
「? そうだけど、あなたはどなたかしら?」
「1-Aクラスへの入学生のアース・ジーマルと申します。わけあって、1週間遅れで王都へと到着しました。」
俺がそういうと、その女性は大きな目を何度かパチパチさせた後に、ポンッと手をたたいた。
「君がアース・ジーマルくんね! ようこそ、アーキウェル貴族院へなの! それにしても、どうして私があなたの担任だとわかったかしら?」
その外見です………とは言わずに、俺はとりあえず微笑んでおいた。
このアクア先生を一言でいうと、ロリっ娘だ。薄い金色の髪をツインテールにして、ゆるふわのドレスを着ている。初学院生と言われてもなんら不思議ではない。
俺も彼女が先生であると知らなければ、どこかの令嬢が王都観光中に貴族院へと迷い込んだと思っただろう。
「先程、友人に先生をことを教えてもらったのです。とてもかわいらしい先生が、担任だと。」
「まあ、お上手ですの。あなたのことは聞いているの。最近までずっと、領地で療養していたのでしょう? もう体調は大丈夫なの?」
「ええ、どこも悪いところはありません。」
「なら、いいですの。ではこれから、教室に向かって、あなたには挨拶をしてもらいますの。初学院の知り合いが大半でしょうが、他国の生徒もいますの。だから、しっかりと自己紹介してほしいですの。」
「承知しました。1点確認なのですが、席は自由席でしょうか?」
「いいえ、指定席ですの。あなたの席はキルヴェスター殿下の後ろの席ですの。」
そうか………キルの後ろの席か。
初学院のころも、キルの後ろの席だったからすごく懐かしい気分になるな。俺は思わず、顔をほころばせてしまった。
そうして、俺とロリっ娘もといアクア先生は教室へと向かった。
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