異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
104 / 179
第二章 初学院編

閑話(アースのいない日々1)

しおりを挟む
※ キルヴェスター視点


アースが王都を離れてから1週間が過ぎた。そうしてアースのことを考えているうちに、初学院の後期の開始を迎えていた。クラスを超えて学年の間では、アースが領地療養となっていることで話題が持ちきりとなっていた。このことに俺は、ひどく驚いた。あの時兄上は、「アースに罰を与える」といった。ついては、学園中でアースは罰を受けて領地謹慎になったと嘲笑されるものだと思っていた。俺はなんとしてもアースの名誉を守ろうと決意していたのだが、蓋を開けてみると、アースは領地での療養ということになっていた。……一体、どういうことだろうか? 俺は、側近たちに聞いてみた。



「アースは、なぜ自領での療養という扱いになっているんだ? まさか、アースや俺たちに気を使って、そう言ってくれているのか?」


俺の問いに神妙な面持ちで答えたのは、文官のローウェルだった。ローウェルなら、すでに何か、情報を掴んでいるかもしれない。



「いえ、そういう訳ではないと思いますよ、主。皆は、本当にそうだと認識しているのです。おそらく、情報操作がなされているのでしょう。アースの名誉に配慮して、対外的には自領での療養ということになっているようです。」



謹慎が療養に上書きされたわけではなく、最初から療養ということになっているのなら、情報を発信する側が最初から療養という名目にしようと考えていたということだ。ということは、兄上たちは最初から対外的にはアースを療養という名目にするつもりだったということだ。では、なぜ罰という名目にしてアースを領地に送ったのか? 兄上が言っていた、「俺に対するもう1つの罰」というのに関係があるのか? アースの領地行きが罰であると知っているのは、王族と王族関係者。そして、国の上層部だ。意思決定をした、国や上層部は除くとして、そのことを伝えられたのは俺とその側近、そしてタームウェルとその側近たちだ。つまり、俺とウェル、そしてその側近に何かを伝えたかったということだ。

……ということは、その何かを伝えるためにアースは、俺たちの「教材」に使われたわけか。原因が俺にあることはわかっているだけど……気に入らないな。兄上の判断の可能性もあるが、兄上はあの時「国王」の代理といった。つまりは、上層部の意思ということだ。……兄上も賛成しているのだろうか? 


「殿下、具合が悪いッスか?」


急に黙り込んだ俺を心配に思ったのか、ジールが肩を揺すりながら声をかけてくれた。


「いや、大丈夫だ。少し、そのような情報操作がなされた理由を考えていたんだ。……当たっていたら、そういってくれ。アースは、俺たちの教材のために使われたのか?」



俺がそういうと、側近たちはどう答えたものかと、視線を交わし合っていた。側近たちは、俺のもう1つの罰の内容にも気づいていたようだし、すでに大体のことを察しているのだろう。

少し様子を伺っていると、ようやく答えが出たのか、ローウェルがゆっくりと頷いた。


「言い方は少しアレですが、概ねそのとおりかと思います。」


「……そうか。」


俺は心の中でそっと、舌打ちをした。


「キル殿下、今お話ししてもよろしくて?」


すると、マーガレットが俺の顔色を窺うように躊躇いがちに話しかけてきた。マーガレットとは例年、長期休みにお茶会をしているのだが、今年は色々とあったため取りやめとなったのだ。俺はすぐに表情を取り繕って、マーガレットに笑顔を向けた。



「ああ、マーガレット。久しぶりだな。夏休みは、お茶会の時間をとれずにすまなかった。」


「いえ、キル殿下が謝ることは何もありませんわ。この夏は、アーキウェル王国の歴史においても最大級といっていいほどのスタンピードが起こったのですもの。それに、わたくしのことよりも………アース様を含めたキル殿下たちの方が心配ですわ。………アース様のこと、聞きましてよ。魔物の攻撃で、かなりの重傷を負ったそうですわね。お加減はいかがでしょうか?」



「アースは………」



俺はそこまで言って、言葉を区切った。
ここで、「ザール様の血液回復魔法によって完治した」と話せば、アースは一体何を療養するために領地へと向かったのかという話になってしまう。俺はチクリと痛む心を押さえつけて、微笑んだ。



「アースは、命の危機は脱している。ただ、回復魔法でも完治の難しい傷を負ってしまったんだ。だから、療養期間を十分にとるため領地へと向かったんだ。」



「………そうでしたの。アース様の傷は、その………時間が解決してくれるような傷ですの?」


「ああ。貴族院の入学に合わせて、きっと、帰ってくるだろう。」


俺がそういうと、マーガレットとその友人たちは安心した表情を浮かべた。特に、マリア嬢とムンナ嬢は胸の前で手を組んで、大きく息を吐いた。この2人は、アースのことをとりわけ気に入っていたからな………。

そうだ、マリア・テレシ―嬢にはお礼を言わないといけないな。



「テレシ―嬢。グート様を始め、テレシ―侯爵家には大変世話になった。本当にありがとう。」



俺がそういうと、テレシ―嬢は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに淑女らしく微笑んで、左胸に手を当てた。




「光栄にございますわ。キルヴェスター殿下を始め、わたくしたちのご学友の側近の皆様のお役に立つことができたこと、誇りに思いますわ。」


「ああ、本当にありがとう。今度、テレシ―侯爵にも直接お礼を言わせてほしい。」



「承知いたしましたわ、キルヴェスター殿下。」



俺と、テレシ―嬢が話している間、マーガレットたちは特に表情を変えずに穏やかに見守っていた。おそらくテレシ―嬢から事情をきいていたのだろう。

俺とテレシ―嬢の話がひと段落すると、マーガレットが再びゆっくりと口を開いた。


「それにしても、アース様のお怪我の具合が時間がかかるとしても、完治するものときいて本当に安心いたしましたわ。特に、マリア様とムンナ様は、アース様がお怪我をしたと聞いたときにひどく取り乱してしまいまして………。」


マーガレットがそういって、2人を見て「うふふふふ、」とほほ笑むと、2人は顔を赤らめてマーガレットの袖を引きながら、顔を扇子で隠してしまった。


「マ、マーガレット様! お止めくださいまし………。顔から火が出そうなくらい、お恥ずかしいですわ。」



「うふふふふ、ごめんなさいね。少し、からかいすぎてしまいましたわね。」


マーガレットはそういって、2人をなだめた。その後に、再び俺に向き直った。












しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...