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第二章 初学院編
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筆者より
予告なくお盆休みをいただいてしまい、申し訳ございませんでした!
今後とも、愛読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ーー
「お前を罰という形にして、王都から話した理由は大きく2つある。1つめは、お前が召喚したという角の生えた男のことだ。聞いた話によると、お前の意志に関わらず自由に行動できるそうだな?」
「………はい、そのとおりです。」
「人格にも難があり、見慣れない武器を携えているとも聞いている。それをきいた頭の固い者たちが、その不安要素のことを危険視しているということだ。自由に消えることのできる得体のしれない者が、王都に野放しにされると考える小心者がいるのだ。そのことについては、理解できるな?」
確かにそのとおりだ。あの鬼人が何を考え、思っているのか俺にはまだわからない。自由に現れ消えることを生かして、王都で悪さをすることもあるかもしれない。俺にはまだ、あの鬼人の手綱を握ることが出来ていない。ということで俺は今、アルベルト殿下が無視できない人たちから危険人物とされているということだ。
俺はゆっくりと頷いた。
「召喚魔法については、わからないことばかりだ。小心者と言うのは、未知のものを殊に恐れるものだ。………すまないな。」
「殿下が謝ることはなにもございませんよ。未知を恐れて対策するというのは、慎重な判断が必要な上層部の皆さんにとって当然のことだと思います。私を庇うことで、殿下やキルのお立場が悪くならないか、ということが心配です。」
俺がそういうと、アルベルト殿下は優しい目つきでふっと笑った。
「相変わらず、自分のことより他人の心配をする奴だな。………だからこそ、アース。領地での3年間で、あの得体のしれない者の手綱を握って見せろ。召喚魔法使いは、世界に2人しかいない希少な人材だ。頭の固い小心者どもも、アースが手綱を握っているとわかれば、召喚魔法の希少さや有用さから何も言わなくなるだろう。………難しいか? 難しいなら、謹慎を伸ばすこともできるが?」
アルベルト殿下はそういうと、不敵に笑って見せた。俺のことを試しているのか、それとも、側近ならこれくらいやってみろというエールなのか、どちらにしろ俺の答えは一択だ。
「お心遣いありがとうございます。ただ、3年間で十分ですので辞退させていただきます。」
俺はにっこりと笑って、アルベルト殿下に返した。それを受けてアルベルト殿下は、満足そうにうなずいた。
「それでいい。次に2つめの理由だ。こっちの方が問題なんだが、結論から言うと帝国の目からお前のことを隠したいからだ。帝国は優秀な人材を見つけては、貴族院への推薦状を送りつけ人材確保に努めている。だからこそ、騎士・魔導士共に最強の不動の地位を築いているのだ。アース、お前は「悪魔の呪い」の原因究明に貢献し、推薦状も得ていることから帝国に関心を持たれている。だが、それだけでは帝国にとっては推薦状を贈った者のうちの一人にすぎない。しかし、アースにはさらに付加価値が付くことになった。それが、召喚魔法だ。今まで世界に一人だった召喚魔法の使い手である皇帝陛下は、突如現れた2人目の召喚魔法使いに何を思うだろうか?」
確かにその通りだ。大帝国の皇帝陛下のことだ。世界に1人という名誉を守るために、俺のことを消そうとするかもしれない。それとも、人材確保に積極的な国だから俺のことをなんとしても帝国に引き込もうとするかもしれない。どちらにしても、穏やかにこの国で過ごすことは難しそうだ。
「………私は殺されるのでしょうか?」
「ないとは言えないが、まずないだろうな。皇帝陛下は同類を見つけたと喜ぶタイプの方だと思うぞ。ただし、熱烈に喜ぶだろうがな。お前を帝国に引き込む手段としては、帝国の貴族院に入学させるという方法が1番穏便で簡単だ。その後、王族の側近にするなり婚約者を見繕うなりすればいいからな。」
なるほど、ということは「貴族院まで」という期間の設定の意図は………。
「よくわかりました。貴族院の入学まで表に出ないことで、アーキウェル王国の貴族院に入学するまで逃げ切るということですね。」
「ああ、そのとおりだ。国としても、貴重な召喚魔法に加え、同じく貴重な水回復魔法の使い手をやすやすと他国に奪われるわけにはいかないのだ。頭の固い連中も、そのことがわからないほど愚かではない。それから、領地での謹慎の理由についてだが、理由はほかにある。貴族院では大きな行事として夏の交流戦や冬の文化祭がある。開催地は各国が持ち回りでやっているため、他国の者がこの国に大量に訪れることもあるんだ。直近でいうと、冬の文化祭が我が国で行われる。情報を流れないようにすることはまず不可能なため、お前のこと少しでも貴族社会から切り離すために領地で謹慎をしてもらうことにした。………いろいろ言ったが、こちらの事情であることには変わりない。本当に、すまないな。」
「謝ることは何もありません。むしろ、感謝したいくらいですよ。私としても、この国の貴族院にかよい、主と仲間たちと一緒に学園生活を送ることが望みです。貴族は情報社会ですから、あまり人とかかわらない方が良いでしょう。」
無事にこの国の貴族院に入学できるまで、隠居というわけだ。………だけど、それだったら、わざわざ罰という形をとらなくてもよかったのではないだろうか? 普通に、療養のためではいけなかったのだろうか?
「罰の形にしたのは………これも、王族の理由となってしまうが、キルの成長につなげるためだ。自分の行いがどのような結果をもたらすのか、先を見据えて行動してほしいということを教えるために罰の形をとらせてもらった。アースにとっては、罰という汚名を着せられ、不本意だと思う。本当に申し訳ない。ただ、対外的には領地での療養ということにしているということだけは補足させてほしい。本当に申し訳ない。」
相変わらず考えを読まれてしまったが、アルベルト殿下はそういうと、痛々しげな表情で俺のことを見つめた。
予告なくお盆休みをいただいてしまい、申し訳ございませんでした!
今後とも、愛読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ーー
「お前を罰という形にして、王都から話した理由は大きく2つある。1つめは、お前が召喚したという角の生えた男のことだ。聞いた話によると、お前の意志に関わらず自由に行動できるそうだな?」
「………はい、そのとおりです。」
「人格にも難があり、見慣れない武器を携えているとも聞いている。それをきいた頭の固い者たちが、その不安要素のことを危険視しているということだ。自由に消えることのできる得体のしれない者が、王都に野放しにされると考える小心者がいるのだ。そのことについては、理解できるな?」
確かにそのとおりだ。あの鬼人が何を考え、思っているのか俺にはまだわからない。自由に現れ消えることを生かして、王都で悪さをすることもあるかもしれない。俺にはまだ、あの鬼人の手綱を握ることが出来ていない。ということで俺は今、アルベルト殿下が無視できない人たちから危険人物とされているということだ。
俺はゆっくりと頷いた。
「召喚魔法については、わからないことばかりだ。小心者と言うのは、未知のものを殊に恐れるものだ。………すまないな。」
「殿下が謝ることはなにもございませんよ。未知を恐れて対策するというのは、慎重な判断が必要な上層部の皆さんにとって当然のことだと思います。私を庇うことで、殿下やキルのお立場が悪くならないか、ということが心配です。」
俺がそういうと、アルベルト殿下は優しい目つきでふっと笑った。
「相変わらず、自分のことより他人の心配をする奴だな。………だからこそ、アース。領地での3年間で、あの得体のしれない者の手綱を握って見せろ。召喚魔法使いは、世界に2人しかいない希少な人材だ。頭の固い小心者どもも、アースが手綱を握っているとわかれば、召喚魔法の希少さや有用さから何も言わなくなるだろう。………難しいか? 難しいなら、謹慎を伸ばすこともできるが?」
アルベルト殿下はそういうと、不敵に笑って見せた。俺のことを試しているのか、それとも、側近ならこれくらいやってみろというエールなのか、どちらにしろ俺の答えは一択だ。
「お心遣いありがとうございます。ただ、3年間で十分ですので辞退させていただきます。」
俺はにっこりと笑って、アルベルト殿下に返した。それを受けてアルベルト殿下は、満足そうにうなずいた。
「それでいい。次に2つめの理由だ。こっちの方が問題なんだが、結論から言うと帝国の目からお前のことを隠したいからだ。帝国は優秀な人材を見つけては、貴族院への推薦状を送りつけ人材確保に努めている。だからこそ、騎士・魔導士共に最強の不動の地位を築いているのだ。アース、お前は「悪魔の呪い」の原因究明に貢献し、推薦状も得ていることから帝国に関心を持たれている。だが、それだけでは帝国にとっては推薦状を贈った者のうちの一人にすぎない。しかし、アースにはさらに付加価値が付くことになった。それが、召喚魔法だ。今まで世界に一人だった召喚魔法の使い手である皇帝陛下は、突如現れた2人目の召喚魔法使いに何を思うだろうか?」
確かにその通りだ。大帝国の皇帝陛下のことだ。世界に1人という名誉を守るために、俺のことを消そうとするかもしれない。それとも、人材確保に積極的な国だから俺のことをなんとしても帝国に引き込もうとするかもしれない。どちらにしても、穏やかにこの国で過ごすことは難しそうだ。
「………私は殺されるのでしょうか?」
「ないとは言えないが、まずないだろうな。皇帝陛下は同類を見つけたと喜ぶタイプの方だと思うぞ。ただし、熱烈に喜ぶだろうがな。お前を帝国に引き込む手段としては、帝国の貴族院に入学させるという方法が1番穏便で簡単だ。その後、王族の側近にするなり婚約者を見繕うなりすればいいからな。」
なるほど、ということは「貴族院まで」という期間の設定の意図は………。
「よくわかりました。貴族院の入学まで表に出ないことで、アーキウェル王国の貴族院に入学するまで逃げ切るということですね。」
「ああ、そのとおりだ。国としても、貴重な召喚魔法に加え、同じく貴重な水回復魔法の使い手をやすやすと他国に奪われるわけにはいかないのだ。頭の固い連中も、そのことがわからないほど愚かではない。それから、領地での謹慎の理由についてだが、理由はほかにある。貴族院では大きな行事として夏の交流戦や冬の文化祭がある。開催地は各国が持ち回りでやっているため、他国の者がこの国に大量に訪れることもあるんだ。直近でいうと、冬の文化祭が我が国で行われる。情報を流れないようにすることはまず不可能なため、お前のこと少しでも貴族社会から切り離すために領地で謹慎をしてもらうことにした。………いろいろ言ったが、こちらの事情であることには変わりない。本当に、すまないな。」
「謝ることは何もありません。むしろ、感謝したいくらいですよ。私としても、この国の貴族院にかよい、主と仲間たちと一緒に学園生活を送ることが望みです。貴族は情報社会ですから、あまり人とかかわらない方が良いでしょう。」
無事にこの国の貴族院に入学できるまで、隠居というわけだ。………だけど、それだったら、わざわざ罰という形をとらなくてもよかったのではないだろうか? 普通に、療養のためではいけなかったのだろうか?
「罰の形にしたのは………これも、王族の理由となってしまうが、キルの成長につなげるためだ。自分の行いがどのような結果をもたらすのか、先を見据えて行動してほしいということを教えるために罰の形をとらせてもらった。アースにとっては、罰という汚名を着せられ、不本意だと思う。本当に申し訳ない。ただ、対外的には領地での療養ということにしているということだけは補足させてほしい。本当に申し訳ない。」
相変わらず考えを読まれてしまったが、アルベルト殿下はそういうと、痛々しげな表情で俺のことを見つめた。
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