異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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侯爵家に着くと、すぐに応接室に通る運びとなった。しかし、ジールがそれを断った。殿下とその側近の俺たちが、緊急とはいえ、侯爵家嫡男にお会いする格好ではないからだ。そこで、着替えを用意してもらえるように頼んだのだ。殿下は一瞬反対したそうにしてたけど、グッとこらえた様だった。


すぐに着替えのための部屋に通されて、俺達は用意された服に急いで着替えた。そして、グート様が待っておられる応接室に向かった。



「お初にお目にかかります、殿下。テレシ―侯爵家長男のグート・テレシ―と申します。」

「お初にお目にかかる。アーキウェル王国第二王子のキルヴェスター・アーキウェルだ。この度は、急な面会依頼を出してしまい申しわけなかった。迅速な対応に感謝する。」

二人は緊急とは分かっていても、しっかりと初対面の挨拶を交わした。形式を重視するのが貴族なのだ。
殿下は初学院生のため、まだ公的には社交界デビューをしていない。そのため、年が離れている貴族とはほとんどが初対面なのだ。
グート様は文官とのことで、落ち着いた雰囲気を放っている。

「いえ、とんでもございません。………緊急の用事とのことですが、どのようなご用件でしょうか?」

グート様は、神妙な面持ちでそう切り出した。しかし、その視線は主によって抱かれて微動だにしないアースと、見たことのない服装に剣を携え、額から角を生やしたあいつに視線が釘付けだ。説明しなくても、大体の察しはついているのだろう。

「ああ。そのことだが、俺達はここにいるアースを回復させるために一刻も早く王都に戻らなければならない。そこで、馬を用意してはくれないだろうか? 走るのでは間に合わないのだ。」


「走ってとは、もしかしてここまで走ってこられたのですか?  先ほどお召し替えをしたと伺っておりましたが………。」


「ああ、その通りだ。事情については、長くなるため今は話すことができない。だが、落ち着いたら必ず話すと約束する。」

「かしこまりました。馬はすぐにご用意いたします。………ただ、恐れながら一点だけ、質問をよろしいでしょうか?」

グート様は、事情には深く踏み込まないことを選択したようだ。相手が王族の主でかつ緊急とのことでそう判断したのだろう。文官らしく、今は必要のないあいつの情報は得る気がないようだ。だけど、それでも気になっておられるのはやはり………。
主が頷くと、グート様は言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。

「恐れ入ります。殿下が抱いていらっしゃるのは、私の妹のマリアも大変お世話になっているアース様かと存じます。しかし、先程から一切身動きをとっていないように見受けられます。………。その、大変申し上げにくいのですが、アース様を回復させるためということでよろしいのですよね?」

やはりそうだよな………。俺たちはアースの時が止まっている状態だと知っているが、知らない者からすれば主が死体を抱えていると思われても不思議ではない。
グート様の言葉に対して、主は低い声で「どういう意味だ?」と、問い返した。

アースは死んでいるのではないか、という言葉は主が最も言われたくない言葉だろう。主の我慢が限界を迎える前に、ここは文官の俺が会話を引き受けるしかない。
俺は主の肩を引いて、会話に参加した。

「割り込み失礼いたします。カーサード侯爵家次男のローウェル・カーサードと申します。アースが動いていないのは確かですが、生きております。今は特別な力で時が止まっている状態なのです。その経緯については………お知りになりたいですか?」


俺は、教えるつもりはないという副音声をつけて、そう返した。

グート様はその意味に気づいたようで、ゆっくりと首を横に振った。失礼なことはわかっているけど、この世の中には知らなくてもいい情報というのはいくらでもある。文官のグート様ならば理解してくださると信じているが、後でしっかりと謝罪しよう。

「出発は今すぐにいたしますか? もう日が落ちてしまっております。ご宿泊のご用意も致しておりますが、いかがなさいますか?」

「今すぐに王都に向かう………」
「お言葉に甘えて、今夜はここに泊まらせていただきましょう。」

俺は主の言葉を聞こえないふりをして、笑顔でグート様にそう返した。主なら今すぐに王都に向かうと、そういうと思っていたが………。案の定、主は俺のことをにらみつけた。

「おい、ローウェル! アースを早く回復させないといけないのに、何を悠長なことを言っているんだ!」

「………主、確かに主の言いたいことはわかります。ただ、周りをよくご覧ください。俺も、ジールもキースも疲弊しきっています、それに主、あなた自身もです。今晩しっかり休んだ方が、総合的な移動時間は休まずに移動するよりも短くなるでしょう。」

俺がそういうと、主ははっとした表情を浮かべて俺たちを見まわした。大きな傷は負っていないが、俺達の心身は疲れきっている。

「………すまない。だが、俺は………。」

主はそう言いかけると、俯いてしまった。主の言いたいこともわかる。こうしている間にも、アースの時間が動き始めてしまうかもしれない。だから、ここは確かめてみるしかない。俺は、得体のしれないそいつの前に回り込んで、まっすぐ見据えた。

「アースのあの状態はいつまでもつのか、教えてくれませんか?」

俺がそういうと、そいつはからかうような笑みを浮かべた。何を考えていても今は構わないが、情報だけは正確に言ってもらわなければならない。

「そうだなぁ。そいつの魔力が尽きるまでだから、2、3日といったところだなぁ。」

「それは本当でしょうか? アースの命に関わりますので、正確にお願いします。」

「はぁ? 他人の魔力残量を数値化できるわけもないのに、どうやって正確なことを言うんだよ? まあ、2,3日もつことは確かだな。そいつには生きてもらわないと、俺の楽しみがなくなるからなぁ。そんなに不安なら、お前たちの魔力をそいつに分けてやればいいだろぉ? まあ、そんな高等なことをお前らのようなガキにできるわけないけどなぁ?」
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