56 / 179
第二章 初学院編
55
しおりを挟む
「二人でコソコソ何を話していたんだ?」
開口一番、キルの不機嫌さが伝わってきた。やはり。側近同士でコソコソされるのは主としてあまり好ましいものではないらしい。
「まあまあ。そんなに不機嫌にならないでくださいよ、主。アースがダンスに誘われたそうなんですが、社交ダンス初心者だというから俺が指導することになったんですよ。」
「なんで、ローウェルなんッスか?」
「なんでって、アースに頼まれたからだけど?」
ローウェルはそういうと、俺に視線を向けた。それに合わせて、他の三人も俺へと視線を向け、俺に注目が集まった。
な、なぜと言われても、だれでもよかったというとローウェルに失礼だけど、強いていえばローウェルはこういうことに明るいと思ったからかな………。
「えーと、絶対ローウェルでないとだめとかそういうことではないから、皆にもお願いしてもいいかな? その………ほら、多くの人と練習した方が応用力もつくと思うし………。よければ、お願いしたいな?」
「アースがそういうなら、俺も手伝う。」
「もちろん、いいッスよ!」
「………俺は別に、どっちでもいい。」
良かった………。みんなの雰囲気が柔らかくなったのを感じた。これで丸く収まって………俺がそう思う途中で、ローウェルが余計な一言を言い放った。
「みんなして子供だな(小声)。」
すると、一人ずつローウェルに静かに肘打ちを行ったのが見えた。三人は笑顔だったけど、ローウェルはその場にうずくまった。ローウェルの悪い癖だよな………。
――
久しぶりの初学院での昼食の時間となった。公爵家の料理はとてもおいしかったが、初学院には初学院の味があって、学院が始まることの楽しみの一つなっていた。俺はキースがおすすめしてくれた唐揚げ定食が気に入っており、今日はそれを頼むつもりだ。キルは久しぶりの生徒たちとの交流に勤しんでいた。前期よりも人が増えているような気がするのは、俺の気のせいではないだろう。
いつも通り側近四人で食事をしていると、周囲がざわつき始めたのを感じた。何だろうと思いみてみるとピンク髪の少年を筆頭に五人くらいの少年たちが近づいてくるのが見えた。あれは、ウェル君だな。ピンク髪と言っても、ド派手なピンクというわけではなく桜色に近い色だ。この世界ではまだ、桜の存在は確認していないため非常に懐かしい気持ちになる。俺がウェル君に手を振ると、すぐに近くにいた側近のみんなに制された。………もしかして、どよめきと言い、手を振ることを制されると言い、これを総合すると………第三………。
すると、俺に気づいたウェル君が俺に手を振って駆け寄ってきた。うん、やはり尻尾を振っているようにみえる。
「アースさん! 探しましたよ!」
いつの間にか俺は、「さん」付けに昇格したようだ。貴族社会ではたいてい「様」が用いられることが多いが、親しい年上や距離感が近い人などには「さん」をつけることがある。俺もアルフォンスさんにはさん付けをしている。
「おい、いつの間に第三王子殿下と知り合ったんだよ? 大抵俺たちと一緒にいただろ(小声)?」
周りの注目が集まる中、ローウェルがさっと小声で質問してきた。やはり、第三王子殿下だったか………。てっきり、アルベルト殿下やキルと同じで赤い髪の持ち主かと持っていたけど、違ったようだ。今思うと、瞳の色がアルベルト殿下と似ているように思う。
「この前騎士の訓練を見学に行ったときに、少しあったんだよ。本人は、王子であることを言ってくれなかったけどね(小声)。」
俺がそういうと、ローウェルは「あの時か………。」といって頭を抱えてしまった。うろちょろしてしまって、申し訳ない。俺はローウェルの肩を少し叩いた後に、第三王子殿下に一礼した。
「お久しぶりです、第三王子殿下。あの時は、第三王子殿下だと存じ上げずに失礼な言動をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「あれは僕があえて言わなかったので、アースさんに非はないですよ! それよりも、アースさんみてください! アースさんのアドバイスのおかげで、僕の遊び相手の彼らを側近に誘う勇気が出ました! 本当にありがとうございました!」
第三王子殿下がそういうと、側近四人が同時に頭を下げた。俺はてっきり、ウェル君が誰かの側近になるのかと思っていたけど、実際は側近になる側や側近に誘われた側の気持ちを知りたかったらしい。俺の言葉で殿下の役に立てたのなら光栄だ。
「身に余るお言葉にございます、第三王子殿下。」
俺がそういうと、第三王子殿下はあからさまに不機嫌になり頬を膨らませた。どうやら、呼び方がお気に召さないらしい。
「アースさん! 僕は前に、「ウェル」と呼んでくださいとお願いしましたよね!」
うん、確かに言われたけど………。流石に殿下をウェル君呼びするのはまずいと思うな………。ここは、マーガレット様を参考にして「ウェル殿下」とお呼びしようかな。
「………かしこまりました。では、ウェル殿下と呼ばせていただきますね。」
「それでお願いします! それと………。」
ウェル殿下はそういうと、俺の手を取って自分の頭の上に乗せた。これは………なでろということだろうか? 俺は少しずつ手を動かして、頭を撫でてみた。すると、満足そうに笑顔になった。
これは………末っ子というか甘え上手というか、人の懐に入り込むのがうまいようだ。他の二人の殿下とは全く違うタイプだな。それにしても、弟みたいでかわいいな………。すると、俺が頭をなでているのを見てか、何人かの生徒が撃沈したのが見えた。うん、自分で言うのもなんだけど、なんとなく気持ちはわかるよ。何せ、八歳児と六歳児の少年が戯れているのだから。そういう趣味を持つ人にとっては、ご褒美以外の何物でもないだろう。
「アースさん、よろしければ魔法について質問したいのでお茶会にお誘いにしてもよろしいでしょうか? それと、ジールさんもご一緒に!」
ジールさんということは、ジールとも面識があって懐いているのだろうか? 俺とジールを誘うということは、相当魔法がお好きのようだ。この熱量は好きとかいうレベルではなく、もはやオタクの域に達しているのかもしれないな。
開口一番、キルの不機嫌さが伝わってきた。やはり。側近同士でコソコソされるのは主としてあまり好ましいものではないらしい。
「まあまあ。そんなに不機嫌にならないでくださいよ、主。アースがダンスに誘われたそうなんですが、社交ダンス初心者だというから俺が指導することになったんですよ。」
「なんで、ローウェルなんッスか?」
「なんでって、アースに頼まれたからだけど?」
ローウェルはそういうと、俺に視線を向けた。それに合わせて、他の三人も俺へと視線を向け、俺に注目が集まった。
な、なぜと言われても、だれでもよかったというとローウェルに失礼だけど、強いていえばローウェルはこういうことに明るいと思ったからかな………。
「えーと、絶対ローウェルでないとだめとかそういうことではないから、皆にもお願いしてもいいかな? その………ほら、多くの人と練習した方が応用力もつくと思うし………。よければ、お願いしたいな?」
「アースがそういうなら、俺も手伝う。」
「もちろん、いいッスよ!」
「………俺は別に、どっちでもいい。」
良かった………。みんなの雰囲気が柔らかくなったのを感じた。これで丸く収まって………俺がそう思う途中で、ローウェルが余計な一言を言い放った。
「みんなして子供だな(小声)。」
すると、一人ずつローウェルに静かに肘打ちを行ったのが見えた。三人は笑顔だったけど、ローウェルはその場にうずくまった。ローウェルの悪い癖だよな………。
――
久しぶりの初学院での昼食の時間となった。公爵家の料理はとてもおいしかったが、初学院には初学院の味があって、学院が始まることの楽しみの一つなっていた。俺はキースがおすすめしてくれた唐揚げ定食が気に入っており、今日はそれを頼むつもりだ。キルは久しぶりの生徒たちとの交流に勤しんでいた。前期よりも人が増えているような気がするのは、俺の気のせいではないだろう。
いつも通り側近四人で食事をしていると、周囲がざわつき始めたのを感じた。何だろうと思いみてみるとピンク髪の少年を筆頭に五人くらいの少年たちが近づいてくるのが見えた。あれは、ウェル君だな。ピンク髪と言っても、ド派手なピンクというわけではなく桜色に近い色だ。この世界ではまだ、桜の存在は確認していないため非常に懐かしい気持ちになる。俺がウェル君に手を振ると、すぐに近くにいた側近のみんなに制された。………もしかして、どよめきと言い、手を振ることを制されると言い、これを総合すると………第三………。
すると、俺に気づいたウェル君が俺に手を振って駆け寄ってきた。うん、やはり尻尾を振っているようにみえる。
「アースさん! 探しましたよ!」
いつの間にか俺は、「さん」付けに昇格したようだ。貴族社会ではたいてい「様」が用いられることが多いが、親しい年上や距離感が近い人などには「さん」をつけることがある。俺もアルフォンスさんにはさん付けをしている。
「おい、いつの間に第三王子殿下と知り合ったんだよ? 大抵俺たちと一緒にいただろ(小声)?」
周りの注目が集まる中、ローウェルがさっと小声で質問してきた。やはり、第三王子殿下だったか………。てっきり、アルベルト殿下やキルと同じで赤い髪の持ち主かと持っていたけど、違ったようだ。今思うと、瞳の色がアルベルト殿下と似ているように思う。
「この前騎士の訓練を見学に行ったときに、少しあったんだよ。本人は、王子であることを言ってくれなかったけどね(小声)。」
俺がそういうと、ローウェルは「あの時か………。」といって頭を抱えてしまった。うろちょろしてしまって、申し訳ない。俺はローウェルの肩を少し叩いた後に、第三王子殿下に一礼した。
「お久しぶりです、第三王子殿下。あの時は、第三王子殿下だと存じ上げずに失礼な言動をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「あれは僕があえて言わなかったので、アースさんに非はないですよ! それよりも、アースさんみてください! アースさんのアドバイスのおかげで、僕の遊び相手の彼らを側近に誘う勇気が出ました! 本当にありがとうございました!」
第三王子殿下がそういうと、側近四人が同時に頭を下げた。俺はてっきり、ウェル君が誰かの側近になるのかと思っていたけど、実際は側近になる側や側近に誘われた側の気持ちを知りたかったらしい。俺の言葉で殿下の役に立てたのなら光栄だ。
「身に余るお言葉にございます、第三王子殿下。」
俺がそういうと、第三王子殿下はあからさまに不機嫌になり頬を膨らませた。どうやら、呼び方がお気に召さないらしい。
「アースさん! 僕は前に、「ウェル」と呼んでくださいとお願いしましたよね!」
うん、確かに言われたけど………。流石に殿下をウェル君呼びするのはまずいと思うな………。ここは、マーガレット様を参考にして「ウェル殿下」とお呼びしようかな。
「………かしこまりました。では、ウェル殿下と呼ばせていただきますね。」
「それでお願いします! それと………。」
ウェル殿下はそういうと、俺の手を取って自分の頭の上に乗せた。これは………なでろということだろうか? 俺は少しずつ手を動かして、頭を撫でてみた。すると、満足そうに笑顔になった。
これは………末っ子というか甘え上手というか、人の懐に入り込むのがうまいようだ。他の二人の殿下とは全く違うタイプだな。それにしても、弟みたいでかわいいな………。すると、俺が頭をなでているのを見てか、何人かの生徒が撃沈したのが見えた。うん、自分で言うのもなんだけど、なんとなく気持ちはわかるよ。何せ、八歳児と六歳児の少年が戯れているのだから。そういう趣味を持つ人にとっては、ご褒美以外の何物でもないだろう。
「アースさん、よろしければ魔法について質問したいのでお茶会にお誘いにしてもよろしいでしょうか? それと、ジールさんもご一緒に!」
ジールさんということは、ジールとも面識があって懐いているのだろうか? 俺とジールを誘うということは、相当魔法がお好きのようだ。この熱量は好きとかいうレベルではなく、もはやオタクの域に達しているのかもしれないな。
286
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
有能副会長はポンコツを隠したい。
さんから
BL
2.6タイトル変更しました。
この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。
こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。
ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる