異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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夏休み開始三日目。俺は両親からの許可を受けて、バルザンス公爵邸へとやってきた。公爵邸ではカーナイト様とジール、そして多くの使用人の皆様がお出迎えをしてくれた。公爵様は外務大臣のため他国に出張中で、公爵夫人様は王城で社交を行っているそうだ。前公爵夫人については特に情報がない。そして、もう一人、サール様も笑顔でお出迎えをしてくれた。………魔導士団長のお仕事はどうしたのだろうか?


挨拶も終わり通されたのは別館だった。ここで合宿のように生活するらしい。合宿と言っても貴族でしかも公爵家だから、個室はかなり広く広いお風呂までついていた。一流の高級ホテルで合宿なんて、テンションが爆上がりだ。リビングに入るとそこには当たり前のようにローウェルが座っていて、何かの資料を読み込んでいた。前から住んでいるのかと思わせるような馴染みっぷりである。



「よう、アース。お茶でも飲むか?」


「やあ、ローウェル………。すごく馴染んでいるね。」


「うん? まあ、子供のころからよく来ていたからな。それに、俺は夏休みの初日からここにきているからわからないことがあったら、何でも聞いてくれて構わないぜ。」



初日から? とんでもなく気合が入っているみたいだ。でもまあ、子供のころから来ているということはそんなものなのかな。



「わかった。その時はよろしくね。」


「ああ、任せとけ! ジールと二人でいるのにも少し飽きてきたところだったから、アースが来てくれて楽しくなりそうだ。」


「失礼っスね! 飽きたなら、散歩でもしてくるといいんじゃないッスか?」


「俺にもこの夏休みの間にいろいろやることがあるんだよ。例えば、これとかな。」




ローウェルはそういうと、分厚い資料をポンッと叩いた。貴族とは言え、八歳児が読む量ではないと思うけど何の資料なんだろ? 俺は気になって、その資料を覗き込んだ。そこには、魔物の大量発生、通称スタンピードについて書かれていた。前回出現した魔物の種類や数、そして被害規模などが書かれていた。

魔物の大量発生がどこで起こるのかというと、それは魔物の森だ。この魔物森では数十年に一度のペースで魔物が活性化し、大量になだれ込んでくるのだ。魔物の森と接しているのは俺たちのいるアーキウェル王国と隣国のアイバーン帝国だ。そしてさらにアーキウェル王国の中でも魔物の森との境界位置しているのが、ジーマル辺境伯家だ。ジーマル家の役割は魔物討伐の最前線ということになる。俺は今まで病弱ゆえにその役割から遠ざけられてきたが、今はもうそうはいっていられず俺にも十分に関係のあることだ。

だけど、ローウェルがこれを読んでいるということはスタンピードが近いということなのだろうか?



「もしかして、近いうちにこのスタンピードが起こるの?」


俺がそういうと、ローウェルはいつもの軽やかな笑顔から真剣な表情へと変わった。ローウェルのこのような表情を見るのは、キルの件以来かもしれない。



「近い内と言っても、数年先だろう。早くても、五年以上はかかると思う。だけど、その頃になると主も公務を任される年になるだろう。その時に俺たち側近が何も知りませんでは、話にならないからな。訓練で忙しいアースたちに代わって、俺が予習しているというわけだな。」



普段チャラそうに見えるけど、ローウェルは本当にまじめで先々のことまで考えている。ローウェルがいるから、俺たちは安心して訓練に集中できていると言っても過言ではない。



「五年後か………。その頃には、脆弱とか貧弱とか言われないようになっていないとね。それと、ローウェルは縁の下の力持ちって感じでかっこいいね。」



俺がそういうと、ローウェルは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてきょとんとしていた。え、なにかおかしなことを言ったかな………。俺は不安になって、ジールの方を向いた。ジールは何やらにやにやしていた、なんだろう?



「あー、そういうことか。俺にも………あーそういう気持ちになるみたいだな。アースはあれだな、色々と言葉には気を付けた方が良いぜ。」


「え、ごめん………何か不快にさせてしまったかな?」


「いいや、まったく。ただ、まあ変な気持ちにはなるな。………いいから、訓練行って来いよ。ジールは後で殴るからな。」


「何も言ってないッスよ! とんだとばっちりッスね………まったく。じゃあアース、今日は自主練ッスけど張り切っていくッスよ!」




変な気持ちとはどういう気持ちなんだろう? まあ、聞いても教えてくれなそうだから、不快にさせていないならそういうことにしておこう。








――







その夜、俺たちは三人で夕食をとった後、各自好きなタイミングで入浴をしてそれから自由時間となる。俺たちの個室には専属のメイドが配備されていて、身の回りのお世話をしてくれる。俺は早速風呂に入ることにして、ゆったりとくつろいだ。各部屋にこんな大きい風呂があると思うと、財力が………など下世話なことを考えてしまう。


風呂から上がりリビングに戻ると、バスローブ姿で眼鏡をかけているローウェルが資料を再び読んでいた。

やばっ、イケメンの不意のこういう姿にはドキッとしてしまうな………。それにしても八歳児とは思えないような雰囲気を醸し出している。


「ようアース、上がったか。………何だよ、そんなに見つめて?」


「え、いやー、なんか様になっているなと思ってさ。夜になると、普段とは違う雰囲気になる人いるよね。例えば髪を下ろしたり、眼鏡をかけたりとかさ。ローウェルは大人っぽくなるね。」


「………それに対して、俺はどう返せばいいんだよ?」


「そ、そうだよね! 変なこといったよね、ごめん。」




すると、ジールが髪をかき上げながらリビングに入ってきた。

うわっ、髪がずぶ濡れなんですけど………。風呂上がりの人って妙に色気があるから一瞬ドキッとしたけど、流石に少年が過ぎる。きっと、ほっとけば乾くとか思っているんだろう。だけど、いくら夏とはいえ風邪をひいたらどうするんだよ………。

俺はメイドにタオルをとってきてもらい、ソファーで冷たいお茶を飲んでいるジールを捕まえた。そして、タオルで髪の水分を取りまくった。



「ちょっちょっ、なんッスか! 髪なんてほっとけば乾くッスから!」


「風邪ひいたらどうするんだよ、まさか冬も自然乾燥しているわけじゃないよね? あと、自然乾燥は頭皮に悪いから、年を取ってから後悔しないためにもしっかり乾かすように。」


そう言いながら、手を止めずにいるとジールは俺からタオルをもぎ取り勢いよく立ち上がった。



「か、乾かしてくるッスからもうしないでほしいッスよ! 母上みたいなことを言わないでほしいッス!」


ジールはそういうと、自室へと戻っていった。きっと髪を乾かしてくるのだろうと信じているけど………。またやってしまった。つい、保護者目線というか大人目線みたいなものが出てしまうんだよな………。少年の羞恥心を刺激してしまうようだ。




「………ローウェル、もしかして俺っておせっかいかな?」


「うーん、まあ面白いからいいんじゃないか? 主にも効くようだしな。」



他人事だと思って面白がっているな。俺からみればローウェルも充分少年なんだけど? ………少し仕返しをしてみようか。


「それなら明日から、ローウェルの髪は俺が乾かしてあげようか?」


「………やめてくれ。色々とまずいし、おかしくなりそうだ。」




俺はいったい何だと思われているのだろうか? そこのところを、この合宿中に詰めていこうと思う。


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