異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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※引き続き、キルヴェスター視点


そういえば、昼食の時に気になったのだが、アースたち側近が妙に話し込んでいた。側近同士の話を主に共有してくれるかはわからないが、一応聞いてみたい。


「ところでアース、さっきの昼食時間はどんな話をしていたんだ?」



俺がそういうと、アースはスーッと目を細めた。



「ローウェルから面白い話を聞いたんだよね。キルが二年前にであったという、「人を呪うときは自身の髪や爪を相手に送り付けるような少年」の話を………。」



「! あいつ、言うなと言ったのに! いや、違うんだ。それは………。」



ローウェルたちにアースの特徴を聞かれたから、「大切な相手」しか思い浮かばなかった。だけどそれをいうのはさすがに躊躇われたので、咄嗟に印象的だった言葉が出て来てしまったんだ。決して、そんなことをいうつもりはなかったんだ………。



「ごめん、アース………。咄嗟に出てしまって、俺………」


俺がそこまで言うと、アースは急に笑い出した。俺、何かおかしなことを言っただろうか? 失望されてしまったか?



「ふー、笑った笑った。自分で思い返してみても、なかなかの爆弾発言だったね。なんで咄嗟に言ってしまったのかはわからないけど、確かに印象に残る発言だね。」


「………許してくれるのか?」


「うーん、一つ俺の頼みを聞いてくれたら許すよ。」


何を願われても、アースの願いならかなえてあげたい。たとえそれが、アースの恋愛事情についてであっても………。俺はゆっくりと頷いた。



「ありがとう。じゃあ、一つだけ。側近の三人の話す時間をとってほしい。三人は………特にキースは、キルに対して何もできなかったと自分を責めているんだ。だから、キルの口からキルの思いを三人に伝えてあげてほしい。」



え………。キースたちが自分を責めているだと………。俺は、俺は今まで自分のことばかりで、あいつらの気持ちを全く考えていなかった。あれから、俺は一方的に謝罪していただけで、キースたちの気持ちを聞くことはなかった。俺は、ダメな主だな………。



「すまない、何度も迷惑をかけてしまって………。俺の口から伝えるよ。」


「わかった。じゃあ少し待ってて、三人を呼んでくるから。あ、それから………「すまない」より「ありがとう」の方が、俺はうれしいな。多分、他の三人もね。」


アースはそういうと、ザルケを行っている三人を呼びに行った。

俺は、いつかアースにもらったものを返せるときが来るのだろうか? 迷惑をかけてばっかりだよな、俺………。








「じゃあ、俺は先に教室に戻ってるから四人であとからゆっくり来てね。あ、それからみんな着替えは持ってきているよね? 汗が乾かないうちに、ちゃんと着替えてね。じゃあ、また教室で!」




アースは言いたいことを全部言い切ったという顔をして、颯爽と走って行ってしまった。なんというか、視点が保護者視点のような気がするけど………。


俺は、気持ちを切り替えて側近たちに向けて感謝の気持ちを伝えた。三人の存在や言葉が自分にとってどれだけ大切だったのかをーーーー。










――








※アース視点に戻ります



待て待て待て! いろいろありすぎて脳が追い付いていない。整理しよう。


まず、側近組とキルの関係はこれで前よりもずっと良くなるだろう。側近組のわだかまりがなくなってくれるといいな。これに関しては、四人の話し合いがうまく事を願うばかりだ。


問題は、あのタオルと飲み物である。飲み物はあれ、間接キ………。あーーーーーー。

これだから、ノンケは………。

確かに部活とかで飲み物の飲みまわしとかは普通にあったから、キルからしてみればそういう感じだったのだろう。タオルに関しては少し謎だが、まあ似たような感じだろう。

それにしても、間接キ………が気になりすぎて、会話に集中できなかったよ! 教室に戻って、瞑想をして会話の内容を思い出しながら煩悩を消し去ることにしよう。




教室に着くと、俺は朝に座っていた席に座った。今は人はまばらで、各々の昼休みを過ごしているのだろう。昼休み時間が長いところは貴族らしい。うん、昼休みが長いことは素晴らしいことだな。

なんか、眠くなってきたな。午前も色々あったし、ザルケで体力を使い来てしまったから。午後の授業まで少し眠ろうか………。






「アース、アース!」


うっ………、なんか声が聞こえるな………。あ、俺ってば昼寝をかましていたのか。起こしてくれたということは、午後の授業が始まるんだな。俺はゆっくりと目を開けた。

目を開くと、俺の周りにはキルたち四人の姿が見えた。他を見渡してみると、クラスメイトが俺のことを見ていることが分かった。なぜこんなにも注目を集めているのだろうか?


「………アース、無防備すぎだ。」



無防備? 教室で昼寝くらいなんて、普通だと思うけど………。あ、平和な日本では普通ということか。だけど、取られたら困る物は持っていないはずだけど………。あ、腕時計がある。確かに少し不用心すぎたか。



「ごめん、不用心だったね。腕時計がとられないか心配してくれたんだよね。でも、俺、寝起きはいいから触れられたらすぐに気づけるから大丈夫だよ!」



俺がそういうとため息が聞こえてきた。なぜそんなに、残念そうな目で俺のことを見つめているのだろうか? 

目と言えば四人の目元が少し赤いような………。そうか、しっかり話すことができたんだな。四人ともどこか晴れやかな顔つきをしていた。


「みんな………話せたんだね。本当によかったよ。………キース、すっきりした?」


「………ああ、お陰様でな。」



キースはそういうと、窓の方を向いてしまった。照れ隠しの仕方が、本当にキルにそっくりだな。それからみんなは席について、授業の準備を始めた。
少し気になったんだけど、キルの目が他の三人よりも腫れていたような気がする。きっと、三人のことに気づけなかった自分を責めてしまったのだろう。何か声をかけてあげたいけど、四人で戻ってきたということは三人がしっかり励ましてくれたのだろう。俺もささやかながら、何かしたいけど………。

あ、濡れタオルを渡すのはどうだろうか。幸いおしぼりを持っているから、それを渡そう。ここで俺が氷魔法を習っていれば、冷やすことができたんだけどな………。ちょっと、念じてみようか。


おしぼりよ、冷たくなれ!


うーん、気持ち冷たくなった気がするかな?

やはり、無知の状態で魔法を使うことはできないようだ。まあ、仕方ないか。ぬるいけど、これで我慢してもらおう。

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