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第二章 初学院編
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しおりを挟む「その体勢きつくない? ま、まさかキルが人気な理由って、こういう風に人をたらしこんでいるからなの?」
「んなわけないだろ! ………お前の肩がちょうどいい高さだったからだ。」
「それは俺とキルが、頭一つ分背が違うという遠回しな自慢なの? ………俺だって、これから背が伸びるはずだ。兄上くらいにはな! さらに俺はこの腕時計のおかげで、体調を崩すことはそうそうなくなるから、健康優良児になるはずだ!」
その通りだ。これから運動もたくさんできるし、食事もたくさんとれるようになる。まだまだ俺は、発展途上なのだ!
「あーはいはい。ちなみに俺も、茶の淹れ方はわからない。」
「流すなよ! じゃあ、白湯飲む?」
「飲まねーよ。………とりあえず座ろうか。今日の所は、何もなくていいだろ?」
まあ確かに、白湯を飲んでも健康にはなれそうだけど、それと同時にむなしい気持ちになりそうなのでお菓子をつまむことにしようか。
それから俺たちは、無駄に広いサロンの中の二つの椅子に座った。先ほどは急なことでドキドキしたが、まさか身長マウントをとってくるとは思わなかった。いい性格になったものである。
「何か、聞きたいことはあるか?」
「いろいろあるけど、急に思い出せるのは限られてきそうだね………。あ、じゃあこの銀髪は何か特別なのか? 女性陣がわいていた気がするんだけど………。」
「それはたぶん、『銀の薔薇』という恋愛小説の主人公が銀髪だからだ。その本が今、女性の中ではやっているんだ。まあ、銀髪は珍しいし俺もアースのほかにはジーマル辺境伯しか知らないな。」
あー、そういう事情だったのか。確かに小説なら挿絵がない可能性があるし、銀髪と言うだけで、俺がそのモデルみたいになったのだろう。面白そうだから、俺も読んでみたいな。
「なるほどね。じゃあ次に、この深紅の薔薇の刻印についてだけど、キース様が「この刻印をどんな思いで!」と言っていたけど、あれってどういう意味なの?」
「まず薔薇は、アーキウェル王国の紋章だ。王族は生まれるとその瞳の色の薔薇を与えられるんだが、俺と母上は瞳の色が同じだ。つまり、俺が生まれた瞬間に、母上の色を引き継いだことになる。昔はその、あれだったから俺は刻印を使っていなかったんだ。そのことをキースは言ったんだと思う。」
そういうことか………。キルは以前は母親の瞳の色を知らなかったようだけど、キルが使おうとすると周りが色々と言ったのだろう。それにしても、キースも事情を知っているようだな。おそらく彼はキルが前に言っていた、遊び相手の一人なのだろう。
「キースはアースに突っかかっていたが、悪い奴ではないんだ。俺の遊び相手として、幼少のころから知っている。あと二人いて、そいつらも合わせて俺の側近なんだ。だから、明日ちゃんと紹介するな。」
側近仲間か………。側近仲間というのは、友人という認識でいいのだろうか? それとも、前世の会社の同僚という感じだろうか? まあどちらにしても、知り合いが増えるのは大歓迎だ。たくさんの人としゃべって、社会不適合を解消していきたい。
キルの遊び仲間か………、どんな人たちなんだろうな? ただキースについては、仲良くできるかは甚だ疑問である。キースは俺に対してあまりいい感情を持っていないと思う。理由は今のところは、キルに馴れ馴れしくしてしまったことが考えられるけど、その他にも理由があるかもしれない。
「うん、わかった。俺も色々な人とかかわりたいと思っていたから、明日を楽しみにしているよ。」
「ああ。他に聞きたいことはあるか?」
他に思いつくのは………。あ、そういえばみんなの前で時計を見せたときに誰かが、「バルザンス公爵家」と、口に出していたような気がする。この時計とどういう関係なのだろうか?
「この腕時計についてだけど、バルザンス公爵家と何か関係があるの?」
「ああ。それについてはまず、バルザンス公爵家との関係について話そうか。まずバルザンス公爵家は、俺の母上の生家なんだ。現当主は母上の弟が務めている。そして母上の父であり、俺の祖父上である前当主のカーナイト様がその腕時計の作者だ。カーナイト様は天才と称される方で、以前は宮廷魔導士団の団長も務めていらっしゃった。また本人は趣味と言っているが、カーナイト様の制作する腕時計はどれも一級品として知られている。そのカーナイト様に制作を依頼したんだ。」
キルたちの母親は、バルザンス公爵家出身だったのか。歴史の教科書で、公爵家は二つあることは知っていた。それにしても、前当主のカーナイト様はすごい方なんだな。宮廷魔導士団団長を務めたり、趣味で腕時計をつくったりと才能が豊かすぎる。そしてその一級の制作者に、キルは依頼してくれたのか………。キルが依頼したということは、直接バルザンス公爵家に赴いたのだろうか? 何か、言われたりしなかったかな………。
「キル、バルザンス公爵家の方々から何か言われていないか? 辛い状況の中依頼してくれたなら………」
俺が言う途中で、キルはふっと笑った。
「安心してくれ。祖父上を始め、バルザンス公爵家の方々は俺や兄上に、とてもよくしてくれているよ。特にカーナイト様は俺が子供のころから気にかけくださっていたのだが………、俺が素直に受け取ることができなかったんだ。アースと別れた後にそのことをカーナイト様に謝りに行ったら、とても喜んでくださったよ。」
そうか………。親戚の皆さんとも関係が修復できたようでよかった。カーナイト様は孫であるキルやアルベルト殿下のことを大切に思ってくださっているんだな。「娘を殺した、厄介者!」とかそういう風な思考をする人ではなさそうで安心した。
「安心したよ。改めて、この腕時計ありがとう。それにしても、俺があの屋敷を訪れることを予想していたのか? たまたま行ってみようと思ったけど、あのまま訪れていなかったらどうするつもりだったんだ?」
俺がそういうと、キルは何を言っているのかよくわからないとっいた表情をしていた。
あれ? そんなに変なことを聞いたつもりはないんだけど………。
「それは何の話だ? 俺は腕時計の制作を依頼し、そのままアースのいる別荘まで届けてもらうように依頼したのだが………。あの屋敷は母上が王族になった際に、バルザンス公爵家から寄贈されたものだと聞いている。あの夏は特に使用する予定はなかったから、誰もいないはずだが………。いったい誰から受け取ったんだ?」
え? 急にホラーな展開になっているけど、大丈夫だろうか? 誰もいないはずって………いたよ! 一見庭師に見えたけど、実は屋敷の管理人だった人がいたよ! うん? 管理人………? 誰もいないはずなのに、なぜあの人は管理人と言ったのだろうか? 怖い。
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