俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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新たな開発

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 荷車を引いて国の中心部へと向かう道中、周囲の景色が徐々に変化していくのが目に入った。郊外の復興が遅れている地域とは打って変わって、中心部は活気に満ちていた。

 街路樹が整然と並び、その緑が目に優しい。道路は舗装され、馬車や人々が行き交う。建物は瓦礫の痕跡もなく、むしろ魔王討伐以前よりも立派になっているように見える。魔力で光る街灯が並び、夜でも明るい街並みを作り出しているのだろう。

 道行く人々の服装も豪華だ。魔石を使った装飾品を身につけている者も多く、その光沢が目を引く。露店では高級な食材や珍しい魔導具が売られており、買い物客で賑わっていた。

「随分と違うな……」

 俺は思わず呟いた。リサも同じように周囲を見回している。その表情からは何も読み取れないが、僅かに握りしめた拳に、何かを感じ取っているのが分かった。家族の境遇を考えると、何か思うところがあったのかもしれない。

 国の中枢機関が集まる広場に到着すると、そこには巨大な魔力結晶で装飾された噴水が鎮座していた。その周りを囲むように、重厚な石造りの建物が立ち並んでいる。

「評議会の議長様が執務される建物ですね」

 リサが小声で言った。俺は黙って頷いた。魔王討伐後、新たに設立された評議会。その議長が実質的な国王として君臨しているのは周知の事実だ。もっとも、形式上は旧王家の末裔が国家元首の座に就いているらしいが。

「あそこです」

 リサが指さす先には、『復興支援局』と書かれた看板が掲げられた建物があった。

(官僚か……)

 俺は心の中で呟いた。魔王討伐後の混乱期に台頭してきた新しい支配階級。彼らの中には、魔法使いや技術者として頭角を現した者も多いという。

 中に入ると、忙しなく動き回る職員たちの姿が目に入る。魔導通信機を使って各地の状況を確認したり、魔法で投影された地図を囲んで会議をしたりと、ここでは最先端の魔導技術が駆使されているようだった。

「あの、カリエル・ノヴァー様はいらっしゃいますでしょうか」

 受付でリサが尋ねる。カリエル・ノヴァー。その人が俺たちの担当のプロジェクトマネージャーらしい。

「カリエル様でしたら、只今会議中ですが……少々お待ちいただけますか?」

 受付係が言うと、俺たちは待合室へと案内された。

 しばらくすると、一人の男性が現れた。鋭い眼光と整った顔立ち、そして威厳のある立ち振る舞い。間違いなく、要職に就いている人物だろう。

「カリエル・ノヴァーだ。君たちが例の支援物資を作ってくれたロアンとリサだね」
「はい、そうです」

 俺が答えると、カリエルは満足げに頷いた。

「素晴らしい仕事をしてくれている。感謝しているよ」

 カリエルの言葉に、俺は少し気恥ずかしさを感じた。しかし、ここで躊躇っている場合ではない。

「実は、新たな支援物資の案件について相談があって」

 俺は現場で聞いた作業員たちの声を伝え、強化手袋と有毒ガス対策マスクの開発案を説明した。

 カリエルは真剣な表情で聞き入っていたが、途中で眉をひそめた。

「確かに、それらは必要なものだ。しかし……」

 彼は少し言葉を濁した。

「現在の予算では、新たな開発案件を追加するのは難しい。それに、そこまでの高度な魔導具を大量生産するのは……」

 俺は焦りを感じた。このまま断られてしまえば、現場の人々の期待に応えられない。

「コストの問題なら、なんとか抑えられると思います。それに、量産方法も……」

 俺の言葉を遮るように、カリエルが手を上げた。

「わかった。君たちの熱意は伝わってきた。こうしよう。まずは試作品を作ってもらおう。その性能と、量産の可能性を見極めてから、正式な案件として検討しよう」

 俺とリサは顔を見合わせた。これは予想外の展開だった。

「ありがとうございます。ですが、試作品を作るための素材と……」
「ああ、そうだったな。試作用の素材と、少額だが開発資金は提供しよう。ただし、これは特別措置だ。結果次第では全てなかったことになる可能性もある」

 カリエルの言葉に、俺は深く頭を下げた。

「ありがとうございます。必ず期待に応えてみせます」

 素材と資金を受け取り、俺たちは意気揚々と工房へと戻った。しかし、喜びもつかの間、新たな問題に直面することになる。

 工房に着くと、すでに多くの注文が溜まっていた。通常の武具の注文に加え、支援物資の追加生産の依頼まで入っている。

「これがなぁ……」

 俺の嘆息に、リサが困惑した表情でこちらを見る。

「どうしましょう、ロアンさん。このままでは注文をこなしきれません」

 そう、今の人員では全ての仕事をこなすのは不可能なのだ。かといって、ただ人を増やせばいいわけでもない。高度な技術を要する仕事だからだ。

「人手不足か……」

 俺は深いため息をついた。わかってはいたことだが、この問題を解決しなければ、せっかくのチャンスが台無しになる。

 腹を括って、人材確保に乗り出すしかないか。
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