俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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支援物資の開発

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 会議から数日、国からの要請で正式に支援物資の開発をすることになった。さて、これらの活動が俺にどんなメリットが有るのかと言えば、まあ半分は物件を購入した際の義務なのだが、開発の名目でたくさんの素材を国から提供してもらえることが何よりありがたかった。

 もちろん、その素材を使ったもので商売をすることは許されないが、俺はクラフトすること自体が好きだし、それによりクラフトスキルが高められることは大いに歓迎できるところだ。それに、商売の方のわがままも、少しだけは聞いてもらっている。

「まずは水の問題から取り掛かるか」

 作業台の上に、様々な素材を広げる。魔力を蓄える結晶、水を通すフィルター、そして丈夫で軽量な外装材。これらを組み合わせれば、携帯可能な浄水機能付き水筒が作れるはずだ。

「ここをこうして……この部分はこう……」

 呟きながら、俺は図面を描き始めた。魔力の流れを最適化し、できるだけ小さなエネルギーで大量の水を浄化できるよう、慎重に設計を進める。

 数時間後、ようやく改良版の設計図が完成した。これからは実際に製品を作り上げ、テストを重ねることになる。

「リサ、ちょっと手伝ってくれないか」

 作業場の隅で書類の整理をしていたリサが、俺の呼びかけに顔を上げた。

「はい、何でしょうか」
「この設計図の通りに、素材を組み立ててくれないか。俺は別の部品を作るから」
「わかりました」

 リサは真剣な表情で設計図を確認し、素材を手に取り始めた。彼女の几帳面な性格が、この細かい作業に適していることは間違いない。

 俺は魔力制御装置の製作に取り掛かった。この部品が、水筒の心臓部となる。適切に調整しなければ、浄水能力が発揮できない。

 再び数時間後、ようやく試作品が完成した。シンプルなデザインの水筒だが、内部には複雑な魔力回路が組み込まれている。

「さあ、テストだ」

 俺はわくわくした気持ちを抑えきれず、近くの井戸から汚れた水を汲んできた。その水を試作品に注ぎ込み、魔石から魔力を注ぎ込む。この作業も誰でも簡単にできるようにならなければならない。魔法は術者の脳を介して発動するため、難しいようではあるが本人の慣れ次第で自由度は広がる。だが、魔装置はもう作った回路と構造次第だ。魔法ほど便利に使えるわけじゃない。

 そうしたことに対した不安は、これだけクラフトを繰り返してきた俺の中にもまだ残っている。だが、そんな不安をよそに、水筒の中で魔力が渦を巻き、見る見るうちに水が澄んでいくのが確認できた。数秒後には、まるで清流のような透明な水に変わっていた。意外といけるものだ。というより、最近になって武具以外にも魔法付与スキル『ハイエンチャント』を使う頻度が高くなったからか、想像していた以上の物ができるようになっている。

「ああ、でもまだ完成じゃない。量産できるようにコストダウンしないとな」

 魔石自体も支援物資には含まれる。だが、最小の消費で最大の効果を発揮できるようにする必要もある。運搬を考えても軽量化、コンパクト化が必要なんだ。

 その後の数日間、通常の武具ショップの運営とは別に、俺たちは寝る間も惜しんで改良に取り組んだ。材料の無駄を省き、製造工程を効率化し、それでいて品質も向上させる。これは容易な作業ではなかったが、被災者たちの姿を思い返すと、それが意外なことに俺のモチベーションになっていた。人間、何が仕事の目的になるかはわからないものだ。

 そして、水筒の開発と並行して、もう一つの重要な製品にも着手した。軽量で丈夫な布製防具だ。これこそ俺の本領。素材さえ用意できれば、ほとんど無意識みたいなレベルで製作することができる。問題なのは、クラフトスキルに頼り切りなので、同じ水準を求めると俺にしか作れないということ。
 特殊な布地を使った防具の製作に没頭した。ベストやズボン、時には手袋まで。様々な形状の防具を試作しては改良を重ねた。そして、ついに、水筒と防具、両方の製品がほぼ完成の域に達した。

「よし、明日から、試験地域の避難所に配布するぞ。そこで問題ないと判断されれば、あとは国に納品してようやく仕事完了だ」

 疲れ切った表情で、それでも目を輝かせるリサに向かって俺は言った。

「はい。私が説明を行いますね」

 翌日、俺たちは大量の水筒と防具を荷車に積み込み、避難所に向かった。到着するなり、噂を聞きつけた人々が集まってきた。

 リサが丁寧に製品の説明を始める。その様子を見守りながら、俺は少し離れたところで控えていた。すると、一人の老婆が俺に近づいてきた。

「あんた、この品物を作った人かい?」
「ああ、そうだが」

 老婆は深くお辞儀をした。

「ありがとう。これで孫たちに安全な水を飲ませられる。本当にありがとう」

 国家プロジェクトとしての緊急支援製品の開発が始まって数週間が経った。浄水システムと軽量防具の生産は軌道に乗り、被災地に届けられ始めていた。

「リサ、ちょっといいか」

 作業場の隅で書類を整理していたリサが体をこちらに向けた。

「はい、何でしょうか」
「復興作業の現場に行ってみないか。直接、作業員の声を聞いてみたいんだ」
「たしかに、納品してからというもの、フィードバックを頂いていませんでしたね」
「ああ。復興支援は大事な名目の一つだが、俺としては少しでも良質な魔道具や装備を作れるようになることが目標なんだ。きちんと使われているのかこの目で確かめたい」

 翌朝、俺たちは最も被害の大きかった地区に向かった。そこでは、まだ瓦礫の山が広がり、作業員たちが黙々と片付けを行っていた。

 現場に到着すると、作業の責任者らしき男性が近づいてきた。

「おや、あんたたちは例の支援物資を作ってくれた……」
「はい。今日は作業員の皆さんの声を聞きに」

 責任者は少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔を見せた。

「そりゃあ助かる。みんな! ちょっと休憩だ。この人たちの話を聞いてやってくれ」

 作業員たちが集まってくる。その顔には疲労の色が濃く、中には怪我をしている者もいた。

 リサが率先して声をかける。

「皆さん、日々の作業、本当にお疲れ様です。少しお話を伺えますか?」

 最初は警戒していた作業員たちも、リサの優しい物腰に次第に打ち解けていった。

「実はな、この瓦礫を片付けるのが一苦労でよ。重いし、鋭利だし」
「それに、埃がひどくてな。長時間作業していると、喉がやられちまう」
「あと、地下には有毒ガスが溜まってることもあるんだ。そこに気づかずに入っちまって……」

 次々と声が上がる。俺とリサは真剣な面持ちでメモを取った。

 話を聞き終えた後、俺たちは作業の様子を観察させてもらった。確かに、瓦礫の撤去は危険が伴う。重い石を持ち上げようとして腰を痛める者、鋭利な金属片で手を切る者。そして、マスクを着けていても、細かい埃は容赦なく肺に入り込んでいるようだった。

 工房に戻る道すがら、俺とリサはこの件への対応について意見を交わした。

「瓦礫を安全に扱える強化手袋が必要ですね」
「それと有毒ガスを検知して浄化できるマスクもか」

 フィードバックを貰いに来たつもりが、新しい依頼を請け負ってしまった。それが国からの委託でない限りは俺たちの義務にはならないんだが。なんだ、断りづらいよな。お国さんに伺ってみるか。

「リサはプロジェクトのマネージャーに会う方法って知ってる?」
「正式な手順は把握しておりません。ですが、ツテはあります」

 リサは艶やかな谷間と目尻を輝かせてビシッと返事をする。これはもしかすると、外交的な部分にも使える人材なのかもしれないな。まあ、俺の不埒な偏見でしかないのだが。

「なら、頼むよ」

 俺は国の中心部に乗り込むことにした。
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