俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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工房の展開と新たな課題

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 工房ができあがったので、俺は商品となる装備を黙々と作り続けていた。ハンマーを振るう音が静かな空間に響き、鍛冶の熱が部屋中に満ちている。手元には、様々な素材が並んでいる。魔物の皮、強化された鋼、そして魔力を帯びた宝石。これらを組み合わせ、一つ一つ丁寧に仕上げていく。

 突如、外から騒がしい声が聞こえてきた。俺は作業の手を止め、耳を澄ます。

「あそこだ! 前に屋台で装備を売ってたやつがショップやってるんだと!」
「前はたしか早々に売り切れてたよな……!?」

 声は次第に大きくなり、工房の前で止まった。俺は眉をひそめながらドアに向かう。開けると、そこには十数人の人だかりができていた。老若男女、様々な人々が期待に満ちた目で俺を見つめている。

 工房をショップとして開放し、看板を引っ提げて開店の報せを売っておいた、その初日のことである。

 まずは一人の若い男性が恐る恐る近づいてきた。腰には小さな短剣が下がっている。装備を見る限りだとビギナーのようだ。

「みんな落ち着いて。せっかく来てくれたんだ、できるだけ対応するよ。順番に説明していくから、買う人は並んでもらいたい」

 そう言うと、人々は素直に一列に並び始めた。俺は深呼吸をして心を落ち着かせ、一人目の客に向き合う。

「それで、何をお探しかな?」

 最初の客は、先ほどの若い男性だった。彼は少し緊張した様子で答える。

「あの、噂では初心者にも使いやすい剣があると聞いたんですが……」

 俺は静かに頷き、工房の奥に向かう。戻ってきたときには、10種類ほどの剣を抱えていた。

「これらは全て初心者向けだよ。扱いやすさと、成長性を重視して作ってある」

 俺は一つ一つの剣を並べていく。それぞれに特徴があり、柄の彫刻や刃の輝き方が微妙に異なっている。

 若い男性は目を輝かせながら、一つの剣を手に取った。その剣は、柄に青い宝石が埋め込まれ、刃には波紋のような模様が刻まれている。

「これ、軽い! でも、なんだか力強さを感じます」
「わかりやすいように柄に能力別の紋様を彫ってある。ここの一覧に『適応型』とある通り、使えば使うほど馴染んでいくうえ、疲れにくい仕掛けが付与してある。E級ダンジョンの入口探索を繰り返す想定で作ったものなんだ」
「で、では、これを!」

 なんだか屋台売りをしていたときの評判が、この期間の中で誇大広告されている気もするが、一本目が簡単に売れてしまった。一人目の客を見送ると、次々と人々が俺の元にやってきた。剣や盾を求める者、軽い鎧を探す者、果ては魔法増幅のアクセサリーを欲しがる者まで。俺は丁寧に一人一人の要望を聞き、最適な装備を提案していく。

 ある中年の女性は、防具を求めてきた。

「私、最近ダンジョン探索を始めたんですけど、やっぱり怖くて……主人の付き合いなので私自身が戦うわけではないのですが、何か安全な装備はありませんか?」

 俺は優しく微笑みかけ、奥から一枚の胸当てを取り出した。それは、一見すると普通の革鎧だったが、表面に微かな魔法陣が刻まれている。

「これはどうでしょう。モンスターから認識されにくい仕掛けが入ってます」
「まあ……これなら安心ね」
「もしもっとサポートが必要なら、アクセサリーでも、もっと高い防具でもあるので。E級での絶対的な安全を求めるなら、魔力障壁つきが一番だけど……さすがに、高いですよ」

 俺の苦笑いに、それでも「検討しておきます」と会釈して、中年女性は購入品を持って去っていた。次にやってきたのは、年配の男性だった。杖を持っているところを見ると、魔法使いのようだ。

「若いの、魔力を増幅するアクセサリーは置いてあるかね? 孫と久しぶりにダンジョンに行くことになってな。いいところを見せてやりたくて」
「なるほど。では、こちらを」

 俺は頷いて、ガラスケースから幾つかのアクセサリーを取り出した。指輪、ネックレス、ブレスレットなど、様々な種類がある。

「これは魔力の指輪です。装着者に魔力をプラスする形で増幅します。こちらのペンダントは、自然魔法の詠唱時間を短縮する効果があります。そして、このブレスレットは魔力の消費を抑える効果があります」

 老魔法使いは目を細めて、それぞれのアクセサリーを細かく観察していく。

「ほう、なかなか良い品じゃないか。どれも欲しくなってしまうな……」
「そうですね。用途に応じて使い分けるのがいいかもしれません。どんな魔法を多用されているんですか?」

 老人は少し考え込んでから答えた。

「最近になって回復魔法を覚えたのでね。それを磨きたい」
「であればブレスレットですかね。回復魔法は魔力を大量に消費すると聞くので」
「いやあ攻撃魔法でモンスターをぶっ飛ばすところも見せたいぞ」
「では、お孫さんとは殲滅を優先で指輪を……」
「いや待て、ううぅ……しかしここで金を使ったら、誕生日のプレゼントが……!」

 会話が想像以上に長引き、「若い頃はのお、魔法学校じゃ学年トップを取ったこともあって……」とか関係ない話まで始めたので、選んでもらいながら並行して別の接客をした。

 日が暮れる頃には、用意していた在庫のほとんどが売れていた。俺は疲れを感じながらも、どこか満足感を覚えていた。これが、俺の選んだ道なのだと、改めて実感する。

 最後の客を見送った後、俺は工房の中を見回した。空になった展示売り分の棚、散らばった工具、そして、まだ作りかけの装備品たち。これらを見て、俺は明日への意欲を感じていた。

 工房の隅には、まだ完成していない特殊な装備がいくつか置かれている。名前づけもしなくては。『影の外套』と名づけたこれは、着用者の姿を周囲の景色に溶け込ませる効果のある外套。『振動感知の靴』は、地面の微細な振動を感知し、落石や崩落の危険を事前に警告する。『多機能バックパック』は、中に入れた物資を魔法的に保存し、重量を軽減する効果がある。

 これらの新しいアイデアを形にしていく過程で、俺は自分のクラフトスキルが日に日に向上しているのを感じていた。かつては思いもつかなかったような複雑な精製陣や、より洗練された素材の組み合わせが、今では自然と頭に浮かんでくる。

 しかし、同時に新たな課題も見えてきた。より高度な装備を作るには、より質の高い素材が必要になる。ダンジョンに素材稼ぎに行くと、必然的に工房を留守にすることになる。想像していたよりも、俺の装備を求めている人が多かった。その期待に応えられなくなるのは、心苦しい。というより、今日の接客で実感した。物を売り始めると、そもそもクラフトする暇がない。

「どうすれば……」
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