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8羽 赤百合と旅蜥蜴と盗賊団

⑱─追記〈銀色狼と空駒鳥のお見舞い/昇格と海獣の噂/餃子パーティー/天馬の噂〉─

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追記➀─<銀色狼と空駒鳥のお見舞い>─

ボラントから帰還した翌日の朝─。
銀色狼と空駒鳥つがいはそれぞれの友人にボラント土産を渡すため、家から近い順でヤコブの武器屋→ユデイの本屋と寄りそれぞれ土産を渡した後、最後にルウナのブディックに足を運んだ。
ルウナは開店準備を手伝って店先の掃き掃除をしており、ライキと並んでこちらへ向かってくるリーネの姿を見つけると、ぱあっと表情を弾ませ、ほうきを壁に立てかけてこちらに駆け寄ってきた。
「リーネ、おかえり!
ライキも、おかえりなさい!
ボラントはどうだった?
危険な目に遭ったりはしなかった?」
ライキはリーネがルウナとハグを交わして今回の冒険の話をしている様子を見ながら、
(女子同士だと再会のハグは普通なんだな。
野郎同士では有り得ない光景だ・・・。)
と、先程のヤコブやユデイと会った時との反応の落差を激しく感じて一人で苦笑いした。
「そっか!
ルウナ達も私達が任務でいない間にエングリアのDemonBeastまで商品を届けに行ってたんだね!
DemonBeastといえば、ライキから盗賊団の被害に遭ったかもしれないって訊いたんだけど、何か変わった様子は無かった?」
とリーネ。
「えっ!?
DemonBeastが!?
あっ、だから店主さんが入院って・・・」 
ルウナは何か心当たりがあるようで、眉を寄せて俯いた。
ルウナの話によると、どうやら彼女が新しい商品を届けに行った際、いつも対応してくれる店主がおらず、代わりに彼の姉が対応してくれたので納品自体は問題無く出来たのだが、その姉に店主のことを訊くと、
「あぁ、あいつ今怪我しちゃってて入院してるのよ。
ても来月の”薔薇の夢”(※ルウナのブランド名)さんの品の受け取り時には退院してると思うからそんなに心配しないで?
これからもよろしく頼むわね!」
と言われ、お見舞いに行こうと入院先を訊いたが、その後ユデイが担当編集であるニール氏と打ち合わせがあったため時間が取れず、結局その日はお見舞いに行けず仕舞いだったらしい。
そこでリーネが、
「それなら、私達近いうちにエングリアにこの間の任務の報告と次の依頼を取りに行くから、その時にDemonBeast店主さんの様子も見に行って、出来そうなら神秘の薬の力で治してくるよ!
ルウナが心配してたことも伝えておくね!」
と言った。
するとルウナが、
「本当!?
それなら後でライキの家へお見舞いのお菓子を買って持っていくから、代わりに渡しておいてくれる?」
と言い、お見舞いとしてフォレストサイド名物のバームクーヘンを託されるのだった。

そしてその数日後─。
ライキとリーネは移動の力を使ってエングリアまで飛び立つと、いつもの公園へと降り、まずはDemonBeastに行ってみた。
するとルウナの話の通り店主の姉が店番をしており、事情を訊くと彼女はこう話した。
「あんた達、あの有名なつがいだよね!
弟があんた達が店に来てくれて、ここの主力商品のあのなりきりセットの販売許可を出してくれたっていつも自慢するの!
こないだ来たブランド”薔薇の夢”の可愛い、あんたの友達だったんだね!
実はうちの弟、ボラント辺境伯様の所だったか、商品を届けに行った帰りに盗賊団に襲われちゃってさぁ。
幸い客に品を届けた後だったから、盗られたのは予備の在庫とその時持ってた売上金だけだったらしいんだけど、シケてるって言って借り物の馬車を奪われた挙句奴らにボコられて森の中に放り出され、途方に暮れてたところをたまたま盗賊団と遭遇せずに済んだ商人の馬車に拾って貰い、その人らがエングリアまで無事に送り届けてくれたんだよ。
でも多数の打撲に骨折までしちゃってたから、エングリアに着くなりすぐに入院することになってさ。
私、普段は旦那の店を手伝ってるんだけど、私がこの店の手伝いで抜けた為にあっちも今人手不足で参っててね。
正直弟が早く退院してくれると助かるんだけどなぁ。
打撲は大分治ったけど、足の骨がまだ繋がらないらしいのよね・・・。」 
「わかりました。
病院の方で許可さえ貰えれば、私の力で骨折はすぐに治せますので、店主さんの入院している病院を教えてもらえますか?」
とリーネ。
「あっ、そうか!
あんた女神様の寵愛を受けた薬師さんで凄い治癒能力を持ってるんだもんね!
ありがとう!
そうしてもらえると助かるよ!」
そうしてライキとリーネは彼女から入院先を訊き、見舞いに向かうのだった。

「銀色狼さんに空駒鳥さんかい!?
見舞いに来てくれたんだね!
でもその格好は一体・・・!?」
DemonBeast店主が見舞いに訪れた二人の格好を見て口をあんぐりと開けた。
というのも、店主の姉から教えてもらった病院に行き、店主の治療について許可を貰おうと思いそのことを受付に伝えたら、すぐに院長室へと通されその院長から、
「銀色狼さんもそうですが、特に空駒鳥さんは優れた治療ができる人としてここの患者さん達の間でも有名ですので、院内の混乱を避けるために、出来れば目立たない服装に着替えてほしいのです。」
と言われ、白衣とナース服を渡された為、そのまま院長室を借りてその衣装へと着替えさせて貰ったのだった。
「ナース服のリーネ何かエロくて最高・・・♡
これにオーガワスプの針構えたら無敵じゃね?」
とハートを撒き散らす銀色狼。
「ら、ライキこそ、白衣も似合ってるね・・・。
聴診器と黒縁眼鏡があればもっと完璧かも・・・♡」
ともじっと内腿をすり合わせる空駒鳥。
「なぁ・・・これ院長さんに頼んで買い取らせて貰おう♥
それでフォレストサイドに帰るとき、お医者さんごっこで飛び立とう・・・♥」
「もぉ・・・ライキのエッチ・・・♥」
互いに見つめ合い、部屋の空気がピンク色に染まり始めたところで、コンコンとノックの音がしたので二人は慌ててパッ!と距離を取る。
「コホン!
そろそろ着替え終わりましたか?」
と眼鏡をクイッと上げながら心なしか頬を染めた院長が言った。
「は、はい・・・。
ところでこの服なのですが・・・」
「あぁ、はい・・・実はここ、壁が薄くてですね・・・。
買取希望とのことで、後で受付に伝えておきますよ・・・。
それにしてもお二人、お熱いですな・・・」
院長に先程までのやり取りが丸聞こえだったことを知り、真っ赤になる銀色狼と空駒鳥のつがいなのだった。

そうして院内に突如現れた若いイケメン医師と可愛いナースの二人は、本人達は無自覚ながらもキラキラとまばゆい光を放っており、院内はざわめき、すれ違う人は皆振り返って二人を見ていたが、銀色狼と空駒鳥がいつもの旅装束ではなくなったためか、本人たちのリアルな知人でも無い限りは彼らであることには気が付かない、または気がついていても確証が持てず、声がかけられないようだった。
だがDemonBeastの店主にはその医師とナースが彼らであることがすぐにわかったようで、包帯でガチガチに固められた足をベットに横たえたまま、驚きから目を見開き、笑顔で二人を出迎えてくれたのだった。
店主の足の骨折は痛々しくはあったが、他に目立った外傷などもなさそうで、二人はホッとした。
ライキは今までの経緯を店主に説明した。
「・・・というわけで院内で目立たないようにとこの格好をしてるんです。
それにしてもこの度は大変でしたね。」
「いやぁまぁ、盗賊団に囲まれた時には死を覚悟したけどね・・・!
でもこうして命は助かったわけだし、僕個人の損害はそこまでじゃなかったから良かったよ。
まぁ借りていた馬車を奪われたから、その賠償金は痛いけどね・・・」
と苦笑する店主。
「師匠・・・ヴィセルテ様が盗賊団の被害を受けた人は教会で申請すれば見舞金が支払われると言っていましたよ?」
とライキ。
「本当かい!?
それはありがたい!
退院したら申請し、馬車の賠償金に当てさせて貰うよ!」
店主は見舞金が貰えると訊いて安堵したようで、表情を緩めた。
「あ、こちら召し上がってください!
こっちはルウナからで、こっちは私達からです。
ルウナ、店主さんが入院されているとお姉さんから訊いて心配していましたよ?
その日はユデイの仕事の打ち合わせがあったからお見舞いに行けなかったそうですけど・・・。」
「そうか・・・薔薇の蕾(※ルウナの通り名)さんにも心配かけちゃったね。
ありがとうと伝えておいてくれよ。」
「はい!」
リーネはそう微笑むとルウナから預かってきたバウムクーヘンの入った紙袋と自分たちが買ってきたフルーツのバスケットをサイドテーブルへと置き、フルーツバスケットの中からりんごを選んで手早く剥き、皿に並べていった。
店主はそのりんごを頬張りながら言った。
「空駒鳥さんから剥いてもらったりんごが食べられるなんて僕はなんて光栄なんだ!
そうそう、今朝ニュースペーパーでボラントの令嬢護衛任務の記事が出てたから早速見たよ!
記事でも書かれてたけど、銀色狼くんがあの憎き盗賊団を捕らえたんだね!
凄いなぁ!
きっとこれからますます君達の人気は上がるだろうね!
姉さんの報告だとなりきりセットの在庫も足りなくなりそうだし、早く追加で生産しないといけないけど、こればかりは姉さんには頼めないからね。
あぁ、早く退院したい・・・!」
と彼は足の包帯を恨めしそうに睨んだ。
「そのことでしたら大丈夫ですよ?
今から私の力で治しますから。
でもこのことは他の患者さんには内緒でお願いしますね?
先程院長さんに店主さんについては私達の知り合いということで、特別に私の力で治療して退院させる許可をいただきましたが、他の患者さんについてはこちらの病院では治せる見込みの無い方の治療にのみ後日私が協力させてもらう事になりましたが、その他の患者さんはこのままうちで診ます、とのことでしたから。」
とリーネ。
「あぁ~、そうしないと他の患者さんも皆空駒鳥さんの所へ殺到して、お医者さんの仕事が無くなってしまうよね。」
と店主が苦笑いして頷いた。
「えぇ、まぁ早く治りたいと望む人は多いでしょうから。
でも私は神様のお力を頂いているので、常識を超えた速度や難しい内容の治療が可能ですけど、いつもエングリアにいるわけではないですし、エングリア程の規模の町の全員の怪我や病を診ることはどう考えても不可能ですから。
院長さんの判断は正しいと思います。」
とリーネは答えながら薬の調合に取り掛かるのだった。

そして出来上がった骨繋ぎの薬をヴェノムクリシュマルドで打ち込むと、店主の足の骨はたちまち繋がった。
だが彼は暫く足を使っていなかったため筋力が衰えておりいきなり普段通りに歩くことは出来なかったが、幸い日常生活においてリハビリが可能な範囲だったので、店に送り届けるまでは銀色狼が肩を貸すことにした。
そして受付にて入院代を精算し、(ついでに銀色狼と空駒鳥の今着ている白衣とナース服の代金も支払って)無事退院を果たすことができたのだった。

追記②─<昇格と海獣の噂>─

DemonBeast店主を店まで送り届けた二人は、帰りの際のお医者さんごっこで使えそうな聴診器と伊達メガネをDemonBeastで購入後、いつもの旅装束に着替え直してから冒険者ギルドへと向かった。
そしてギルド長に今回達成した2つの任務についての報告を行うのだった。
「成る程な。
令嬢護衛任務のほうはフォレストサイド支部から金獅子とドSメイドの再雇用と同時に銀色狼と空駒鳥も追加で雇用されたとの連絡を貰ってる。
その任務は途中盗賊団の妨害を受けたが、白鷺月(8月)8日に無事達成し、報酬も依頼主であるボラント辺境伯様から無事支払われたということで了解した。
そしてもう一つの任務、盗賊団壊滅依頼についてだが、こちらはお前達が令嬢護衛任務でフォレストサイドを発った白鷺月(8月)1日に教会から届け出がなされ、内容をうちで確認してSランク相当の難易度と判定させてもらった。
この任務は直接神使様から銀色狼に依頼されるということだったから、ギルドで依頼書を張り出すなどの冒険者の募集は一切行なわなかった。
こちらの任務も報酬の支払いはうちからではなく教会の方で直接行うということだったが、既に支払いは済んでいるんだな?」
「はい、白鷺月(8月)7日に盗賊団を引き渡した後に確かに受け取りました。」
とライキ。
「よし、それならいいんだ。
それで、先程の銀色狼の報告、そして先日受け取った神使様からの報告により、”金獅子とドSメイド”の金獅子と、先に盗賊団に潜入していた”旅蜥蜴と緑熊(※ヒューの通り名)”も銀色狼に協力し、彼らの協力なしではこの任務は達成出来なかったとのことだったので、銀色狼だけでなく、金獅子、旅蜥蜴、緑熊に対しても、それぞれの働きに応じた点数を付け加えさせてもらうこととするぜ。」
「点数・・・ですか?」
ライキとリーネにとって冒険者に点数があるということは初耳だったため、ライキがギルド長に尋ねた。
「あぁ。
冒険者になって間もないお前らは知らなくてもしょうがねぇか。
実は冒険者には公表されねぇ点数ってのがあってな。
この点数は通常依頼をこなしていく毎に付け加えられ、依頼主の評価が高ければ更にそこに点数が上乗せされる。
逆に任務を失敗したり、途中で正当な理由なく放棄したり、任務中に何かトラブルを起こしたりすると減点されるんだ。
パーティメンバーの平均点数が一定値に達すると、そのパーティーはランクアップが可能ってわけさ。」
「成る程・・・そうだったんですね!」
ライキとリーネは納得し、互いに顔を見合わせて頷いた。
「ああ。
おそらく神使様が今回の働きが冒険者としてのお前らの評価に繋がるようにと、態々手数料を払ってまで冒険者ギルドを通して下さったんだろうよ。
それで、今回のお前らの2つの任務での働き、そしてレベルも銀色狼が55、空駒鳥が30となったことを考慮し、”銀色狼と空駒鳥”はAランクに昇格することとなったぞ!
まぁここだけの話、お前らの今の点数ならSランクにしても良いくらいなんだがよ。
それは嬢ちゃんのレベルがもう少し上がってからのほうが良いだろうということになり、今回のところはAランク止まりとなった。
だがAランクとなると大きい依頼を任される事も多いからよ。
今までは基本的に月に一度は必ず依頼を受けてもらっていたが、これからは3ヶ月に一度依頼を受ければ良くなるし、任務期間や余暇に余裕ができるぞ?
それに伴い冒険者証の書き換えも行っておいたから、後で受付で受け取ってくれ。」
「「わかりました!」」
ライキとリーネは同時に頷いた。
(3ヶ月に一度依頼を引き受けるだけでいいのなら、これからは冒険者の任務以外でリーネと行きたい場所へ行く余裕も出来そうだな・・・!)
ライキはそう思って嬉しそうに表情を緩めた。
「そういえば金獅子とドSメイドの二人は今フォレストサイドにいるんだろう?」
とギルド長が尋ねてきた。
「ええ。
金獅子の奴、今回みたいな遠征任務に出ると移動にお金と時間を取られるから、暫くはフォレストサイドのギルド支部で手頃な仕事を待ってみるつもりだと言ってましたよ?
まぁ逃げ出した家畜の捕獲やら薬草採取やらは騎士である僕の仕事じゃないとか言って、相変わらず仕事の選り好みはしてるみたいですけどね。
でも何かうちの父さんが金獅子に頼みたい仕事があるみたいで、もう少し情報が纏まったら冒険者ギルドを通して正式に依頼すると言っていましたので、”金獅子とドSメイド”の来月のノルマはおそらく心配無いかと思います。
それで、金獅子とモニカさんに何か?」
とライキ。
「いや、それならその疾風しっぷうの銀狼の仕事が終わってからでいいからよ、一度エングリア本部へ来るように二人に伝えてもらえねぇか?
実は”金獅子とドSメイド”の二人も神使様やボラント辺境伯様から受けた評価がかなり良かったもんで、DランクからBランクまで一気に昇格することになったんだよ。
だが昇格手続きばかりはここ本部じゃねぇと行えねぇんだわ。
だがBランクになりゃあDランクの今よりは月一のノルマも様々な事情を考慮してやりやすくなるし、遠征任務や大仕事の後に少しくらい依頼を受けなくても、すぐに冒険者証を取り上げたりはしねぇから、あの二人も今よか楽になると思うぜ?」
とギルド長。
「あ、それで俺達もシルバーファングウルフ退治の後、雨期で依頼を受けられなかった時に待って貰えたんですね?」
「そういうこった。
あの時はお前さん達は既にBランクで、シルバーファングウルフ退治という大仕事の後だったからな。」
「わかりました!
帰ったら金獅子とモニカさんに伝えておきます!」
とライキは笑顔でそう返した。
「助かるぜ!
お前らの要件はこれで済んだわけだが、折角エングリアまで来たんだ。
依頼書を見ていくんだろ?
近頃、東の海に海獣が出るってんで海絡みの依頼が多いんだが、中でもこれなんかオススメだぜ?」
と言って一枚の依頼書を二人に見せるギルド長。
「海の村パトル周辺の海域調査で難易度はAランク。
実はこれ、少し前に難易度Bで張り出してた依頼なんだがよ。
その第一回目の調査の時、見たこともねぇ海獣に襲われて船が半壊。
幸い死者は出なかったが、こりゃあBランク冒険者じゃ手に負えねぇってんで、ランクAに判定が繰り上がったんだ。
船の修復が済む隼月(9月)中旬から第二回目の調査がスタートするらしく、これはその乗組員の募集ってわけだ。
調査期間は半月。
その間は船上で過ごすことになるし、その噂の海獣意外にも、海に住む魔魚・魔生物との戦闘もあるだろう。
よって、水域での戦闘経験がある者、リーチの長い武器や魔法が使える者、治療に長けた者等が特に望ましいそうだ。
その点お前らは文句無しの適任だと思うぜ?
銀色狼はフォレストサイドの森にある水域での戦闘経験もあるだろうし、仮に船が沈んでも空を飛んで行動が取れるし、更にはリーチの長い武器も扱える。
空駒鳥は船医として役立つし、水魔法だって使えるだろう?
船での水は貴重だし、何とかっていう水魔法がありゃあ水中でも息が出来るらしいじゃねぇか。
それがあれば海底調査だって可能だろ?」
「ウォーターバルーンの魔法ですね?
えぇ、覚えたばかりでまだ試したことはありませんが、水で空気を包んだ膜を作る魔法で、一定期間なら水中で呼吸が出来るみたいです。
少人数なら自分以外の人にかけることも可能な筈ですよ。」
とリーネ。
「そいつはすげぇや!
二人共依頼主からしちゃ絶対に欲しい人材だと思うぜ?
どうだ?
やってみる気はねぇか?」
(東の海に出る海獣か・・・。
もしかしたら◆の魔獣かもしれないな・・・。
師匠なら何か知っているかもしれない。
今度空に昇ったときに聞いてみよう。
それにそいつが◆の魔獣じゃないとしても、パトルの村には教会もあるし、隼月(9月)中旬開始の任務なら、俺等の仕事をある程度片付ける期間もあるから丁度良いかもしれないな。
任務期間も半月ならデイブレイクの引き渡しの時期にも間に合うだろうし・・・。)
ライキはそう考えてから答えた。
「えぇ、船旅は初めてだから心配もありますが、俺はやってみたいです。
リーネはどう思う?」
と隣の彼女に尋ねるライキ。
「私もいいと思う!
ライキが一緒なら何処でも楽しいし、船旅なら海の幸もいっぱい食べられるよね?
隼月(9月)中旬ならイクラを持ってるサーモンがいて、イクラ丼を食べれちゃうかもしれないしね!」
ライキはそう言って涎を垂らし、頬を染めるリーネを見て、(可愛いな・・・♡)と思い、でれっと鼻の下を伸ばした。
「うん!
俺もイクラ丼と他のリーネの海鮮料理も色々食ってみたいな!」
「はっはっはっ!
確かに海の幸は最高だよな!
よし、それなら決定でいいか!?
依頼主に銀色狼と空駒鳥が参加希望だと伝えても良いんだな!?」
「「はい!」」
ライキとリーネは同時に笑顔で頷いた。
「了解!
依頼主も喜ぶぜ!
それと、お前らが参加することを依頼書に書き加えてもいいか?
そしたら他の面子も揃え易いかもしれねぇ。
女神様の寵愛を受けしつがいには皆興味津々だし、一緒に仕事をしてぇ奴等は多い筈だからな!」
「えぇ、それは勿論。」
とライキはリーネと頷き合ってからそう答えた。
「ってもAランク以上の冒険者なんぞそんなに多かねぇからな・・・。
国中のギルド支部だけでなく、教会や商業ギルドにも張り紙を出して貰えるよう頼んでみるつもりだが、依頼主が望む人数が集まるかどうか・・・。」
と顎に手を当て考えるギルド長。
「あの、俺からユーリくんとヒューさんに声をかけてみましょうか?
ユーリくんは魔法も使えますし、槍術士だから攻撃リーチもある。
ヒューさんは近接戦闘が中心だけど、気功で遠距離戦にも対応出来るみたいですし、力持ちで体力もあるから、同乗する船乗りさんの仕事も手伝ってくれそうです。
俺達も知り合いがいるほうが心強いですし。」
とライキが提案した。
「盗賊団壊滅任務で一緒だった”旅蜥蜴と緑熊”か・・・。
確かに奴らはAランクだが、今ボラントに居るんだろ?
それに奴らは極力自分たちの足で旅をするのをモットーとしているため馬を持っていない。
パトルまでは距離があり過ぎて、すぐに向かっても任務開始までにパトルに着くのは厳しいんじゃねーのか?」
「それなら大丈夫です。
俺の力なら二人を一気に俺の行ったことのある場所まで連れて行けますから、少なくともボラントからフォレストサイドまでの距離は短縮出来ますよ。」
「お、そうだったな!
それなら奴らも参加可能だな!」
「えぇ、まぁ二人が引き受けてくれるかは聞いてみないとわかりませんが。
ユーリくんとは鳩で文のやり取りが出来ますので、後で手紙を出してみます!
それで参加する気持ちがあるようでしたら俺の力で迎えに行きますよ。」
「了解。
だがフォレストサイドからパトルまで行くのも大変だぜ?
ルートとしては、フランから定期船に乗るか、フラン北の山脈を越えるかのどちらかなんだがよ・・・」
と卓上の地図を指差すギルド長。
「生憎と定期船は海獣の影響で運休してるから無理だな。
だからこの山脈を超えていくしかねぇが、結構険しい山々だぜ?
当然馬も登れねぇし、銀色狼や緑熊ならともかく、空駒鳥と旅蜥蜴の坊っちゃんには厳しいかもしれねぇ・・・。
山越えに10日は要するだろうし、パトルに着く頃にはヘトヘトになっちまうぜ。」
(そうか・・・。
山越えにかかる期間と疲労も考えるとなると、任務開始の半月前にはフォレストサイドを発たないと厳しいな・・・。)
と顎に手を当て考え込むライキだったが、リーネがそんな彼の腕を引いて意見を述べた。
「ねぇ、それなら盗賊団を運んだ時のような小屋をあらかじめ用意しておいて、山脈までは普通に旅して向かって、山脈に着いたらその小屋を出してきて私とユーリ様とヒューさんが中に入って、それをライキの力で浮かばせて空から山脈超えしちゃえばいいんじゃない?
ライキはその方法だとあまり長距離の移動は無理だって言ってたけど、地図で見る限りは山脈の直線距離っておおよそチーロからボラントまでの3倍くらいだし、途中で降りて休憩を挟みつつ進めばなんとかなるかなって思って・・・。
それなら歩いて山越えするみたいに日数もかからないだろうし、みんなが酷く疲れることも無いよね?
ライキは神経を使ってばかりで疲れるかもしれないけど・・・」
「そうか!その手があったな!
リーネ、ナイス!!
よし、その方向で旅の準備を進めてみようか!」
「うん!」
二人は来月から始まる船の旅にワクワクと胸を躍らせながらエングリアで少し買い物した後、すっかりお馴染みとなった金雀枝えにしだ亭の一室を借り、病院で手に入れた白衣とナース服に着替えてお医者さんごっこにて銀色狼の力を発動させ、フォレストサイドへと帰還するのだった。
そして白衣とナース服のままフォレストサイに戻ってきた所を偶然見ていた金獅子に、大層怪訝な顔をされたのは言うまでもないだろう。

追記③─<餃子パーティー>─

銀色狼と空駒鳥がエングリアから帰還した数日後─。
銀色狼と空駒鳥はいつもより早く仕事を終わりにし、ハント家のリビングにて本日17時から行われる餃子パーティーの準備をしていた。
柱時計は約束の時間の30分前を指しており、窓から見える景色は白鷺月(8月)中旬ということもあってまだ日が長く、明るかった。
「今日参加するのは俺達の他にまず兄貴とヒルデ姉さんとエル君。
でも兄貴は森の青鹿亭の夕方からの営業があるからその前には帰るそうだ。
あとは金獅子とモニカさん、ユデイとルウナ、奇跡の退治屋の二人も来てくれるって!
うちの母さんと父さんは仕事が終わり次第合流するし、椅子はこんなもので充分かな?」
「うん、大丈夫だと思う!
あ、でもヒルデさんの席の横はエル君のために広く取ってあげよう!」
「ん、了解。」
「食材の方も用意できたよ!
餃子の皮、ライキに手伝って貰って沢山作ったし、これだけあれば充分だよね?
ライスも多めに炊いて保温釜に入れたし・・・」
テーブルの真ん中にはバーベキューや収穫祭の屋台の時に使う大きな鉄板を置き、空いた空間に挽き肉に刻んだ野菜、数々の調味料、大皿に盛り合わせた野菜サラダ、同じく大皿に盛り合わせたカットフルーツ、ボウルや調理器具、冷やしたお茶やジュースや酒、グラス類に様々な大きさや深さの取り皿が、所狭しと置かれていた。
二人がそれを眺めて笑い合ったところで呼び鈴が鳴った。
「おっ、もう誰か来たかな?」
ライキが玄関に客を迎えに出ると、保存容器を手にしたハイドとエルドを抱っこしたヒルデがいた。
「よぉライキ!
こないだは店に飾る絵をどうもな!
カチッとしたタッチで俺も気に入ったが、客からの評判もすげーいいぜ!」
「それは良かった!
それより兄貴達随分早いな?
開始時間の30分前だしまだ誰も来てないぞ?」
とライキ。
「いや、今日のティータイムは比較的暇だったからよ、ディナーの仕込みを早く済ませることが出来たんだよ。
そしたらクソ親父が他の事は全部やるから早く行ってお前らの準備を手伝ってやれって言うから早めに来てみたんだ。
つーわけで何か手伝うことはねぇか?」
とハイド。
「いや、今丁度準備が終わったところだったから手伝いは大丈夫だよ!
兄貴もヒルデ姉さんもエルくんもどうぞ上がって!」
「ありがとー!
お邪魔します!」
「おう、邪魔するぜ!」
そして森の青鹿亭の若い一家がハント家へと上がった。

「ハイドさん、ヒルデさん、エルくん、いらっしゃい!」
「リーネ、今日は餃子パーティーに呼んでくれてありがとな!
今日のテーマに沿った料理を作ってきたから皆に出してやってくれよ。
こっちがうちで出してるトマトソースのラビオリで、こっちがガロの奥さんのチエリ先輩から教わったエンパナーダっつー野菜を小麦粉の皮で包んで揚げたスベイルの餃子な!」
と容器をリーネに渡すハイド。
「わぁ!どちらも美味しそう!
ありがとうございます!」
リーネはそれを笑顔で受け取った。
「サアラは?
まだ肉屋の方閉められねーの?」
とハイド。
「おばさん、今日はパーティーのために早く閉めるつもりだとは言ってましたけど、この時間だとまだお夕飯の材料とかお惣菜を買うお客さんが来るから忙しいみたいで・・・。」
とリーネ。
「じゃ、俺はそっちを手伝ってくるとするかな。
小鹿ちゃんはエルの成長っぷりをライキとリーネに見せてやってな!」
ハイドはそう言ってニシシ!と笑うと手を振ってリビングを出て行った。
「「エルくんの成長?」」
ライキとリーネが揃ってそう言いエルドに視線を向けると、小さな天使は先程まで寝ていたようだが丁度目を覚まし、瑠璃色の綺麗な瞳でライキとリーネのほうを見てからニコッと微笑んだ。
「きゃーーー♡♥♡
エル君が笑いかけてくれた!!
それに目も開くようになったんだね!」
リーネが頬を染めてエルドに駆け寄った。
「そうなの!
ぼんやりとだけど声のする方をこうして見るようになったよ!
それだけじゃないの。
ほら・・・!」
と言ってエルドの脇を抱えてリーネに渡すヒルデ。
「あっ!
首が座ってる!!
えっ!?
護衛任務に出発したときはまだ座ってなかったよね!?」
リーネは嬉しそうにエルドを抱いてライキにもエルドを渡した。
「ホントだ、すげー!
前より抱きやすくなったな!
こんなに早く座るものなんだ?」
とライキも笑ってぎこちないながらもエルドを抱くが、やはり居心地悪そうに可愛い顔を曇らせてしまったので、慌ててヒルデの元へと返した。
「普通は首座りって3ヶ月くらいだよね?
エルくんは今2ヶ月半くらいだから少し早いんじゃない?」
とリーネ。
「うん、ナスタさんもそう言ってた。
体重ももう7.5kgあるんだよ?
お義母さんに聞いたら、ハイドもライキもそれくらいだったらしいから、血筋なのかもね?
首も座ったしそろそろおんぶして店に出れるかなって思ったらさ、まだ座ってばかりで心配だから、後一ヶ月は店に出るなってハイドと父さんが言うのよね。
確かにあまり早くおんぶしてお店に出ててもお客さんを心配させちゃうし、もう少し休ませてもらうことにしたの。」
とヒルデ。
「それがいいと思います!
お店に人手が足りない時やエル君を見て欲しい時はいつでも言って下さいね!
私達が手伝いますから!」
とリーネ。
「ありがとう!」
ヒルデがそう答えたところで再び呼び鈴が鳴った。
「あ、俺が出るよ!」
ライキが再び客の応対に出ると、玄関先には奇跡の退治屋の二人が立っていた。
「銀色狼!
今日は餃子パーティーに招待してくれてありがとうな!」
とバスター。
「ダルダンテにも餃子があるから作ってきたよ!
ブリックって言って、生卵と鶏肉・・・今回は火炎鶏を使ったんだけど、それにじゃが芋と玉ねぎを合わせて小麦粉の皮で包んで揚げたものなの!
みんなで食べて!」
と笑顔で容器を手渡すミラ。
「へぇ・・・生卵を使うなんて珍しいですね!
美味そうだ。
ありがとうございます!
さ、お二人もどうぞ上がって!
エル君とヒルデ姉さんもう来てますよ?」
ライキが二人をリビングに案内すると、ミラの姿を見たリーネとヒルデが駆け寄って来た。
「ミラさん!お久しぶりです!
お腹の赤ちゃん大きくなりましたね!
今何ヶ月でしたっけ?」
とリーネ。
「今5ヶ月に入った所!
安定期になって悪阻つわりも収まったし、大分楽になった~って思ってたら胎動が始まってさ。
やっとあたしのお腹に小さな命が居るんだなぁって実感が出てきたよ!」
「あははっ!
確かに、胎動が始まるまではお腹にいるって実感が感じられにくいよね!
これからどんどん大きくなるよ?
二人の赤ちゃんに会えるのが楽しみだね!エル!」
とヒルデがエルドに笑いかけると、
「あーうー」
と返事をするエルド。
「ありがとー!
この子が産まれたら一緒に遊ぼうね!エル君!
ところでヒルデ。
あんた、妊娠中体重増え過ぎて先生に怒られたことって無かった?
あたし検診の度に怒られててさぁ。
でもこの餃子パーティーには抗えなくて、また増える!って思いながらもつい来ちゃったけど!」
と笑うミラ。
「あったよー!
あたしの場合妊娠初期に甘いものが我慢出来なくてチョコレートとかクッキーとかついつまんじゃって、そしたらすぐに1週間0.5kgの増加ぶんを超過してて、ナスタさんに大目玉食らったよ・・・。
でもその時にナスタさんに、
「あまり体重が増えすぎると早産や未熟児の原因になるし産むのも大変で、産んだあとは赤ちゃんと羊水、胎盤のぶんを除いて、太った分は贅肉としてきっちり残るよ?
あんたそれでもいいの?
産後体型が変わったからって旦那に女として見られなくなったって主婦を沢山知ってるよ!?」
って言われてさ。
それは嫌だと思って必死に間食を我慢したんだけど、それでもやっぱり増えててね・・・。
それでハイドに相談したら、きっちりヘルシーメニューを作ってくれるようになって、それで何とかベスト体重で出産に挑めたのよ。
お蔭様で産後もすぐに体型が戻ったけど、暫くは旦那に頭が上がりそうもないわ・・・」
(あいつ、小鹿ちゃんが子供産んで子豚ちゃんになるのもそれはそれで縛り甲斐があってたぎるとかとんでもないこと言ってたけど、恥ずかしいからそれは伏せとこう・・・)
と苦笑いするヒルデ。
「そっかぁ!
あんたのとこの旦那、料理好きだからそういうのも楽しいんだろうし、そんなに気にしなくていいんじゃない?
ていうか妻の体重管理に協力してくれるとか羨まし過ぎだし!
うちの旦那なんか子供のためにもっと肉食えって言って女将さんの肉屋で毎日のように色んなお惣菜を買ってくるんだよ?
女将さんのお惣菜すごく美味しいし、目の前に出されるとつい誘惑に負けて食べちゃうあたしも悪いんだけどさ、こっちは検診で怒られるって言ってんのに、無責任にお惣菜を買ってくる方にも責任があると思うんだよね!」
とミラがバスターをジト目で睨んだ。
「で、でもよぉ・・・肉食わねーでちゃんと子供に栄養行くのか心配じゃねえか!」
とバスター。
「何いってんの!
ちゃんと体重管理して立派に産まれて育ってるエル君が目の前にいるでしょうが!」 
ミラがそう言ってエルドを指し示すと、ヒルデがくすくすと笑いながらエルドをバスターに渡した。
「うおっ!
エルド、少し見ねぇうちにデカくなったな!
赤ん坊なのに結構ズッシリとくるぜ!」
とエルドをあやすバスター。
「そうか・・・それでこんなに立派に育つなら、今後無闇矢鱈むやみやたらに肉料理を買ってくるのはやめるぜ・・・。」
「わかってくれたならいいの!」
と笑い合う奇跡の退治屋の二人。
「でもお肉食べ過ぎも太っちゃうから良くないかもしれないけどさ、妊娠中は血液中の鉄分が赤ちゃんに回ってお母さんは貧血になりやすいから、ヘム鉄の含まれる赤身のお肉やお魚もある程度は食べたほうが良いそうだよ?
あたしなんか今のミラさんくらいの時貧血になりかけちゃってさ。
ハイドがレバー料理を作ってくれたりしてたよ。
レバーは妊娠初期には取らないほうがいいらしいんだけど、中期以降なら大丈夫だって言ってさ。
ミラさんは貧血は大丈夫なの?」
「あぁ~貧血かぁ、よく聞くよね。
あたしは今のところ大丈夫みたいだけど、もしかしたらバスターの買ってくる肉料理のお蔭で鉄分が間に合ってたのかもね?
そうかぁ・・・肉を食べなさすぎるのも駄目なんだね。
今後はお肉とお野菜バランス良く取るように気をつけてみるか・・・」
とミラ。
「それじゃあ今日はお肉とお野菜がバランス良く含まれたヘルシーな水餃子も作りましょうか!
私もこの間の任務で2kgも程太っちゃったから体重落としたいし、なるべく水餃子中心で食べよう・・・。」
と後半は皆に聞こえないように小声になるリーネ。
だがライキにはしっかり聞こえていたようで、
(まだ太ったとかって気にしてるんだな・・・。
可愛い・・・・・)
と密かにニヤけていると、また呼び鈴が鳴った。
「今度はユデイとルウナかな?」
ライキがそう言いながら玄関まで応対に出ると、予想通りの二人が玄関先に立っていた。
「よぉライキ!
お前がボラントで買ってきてくれた絵の具、すげー発色が良かったぜ!
サンキュー!大事に使わせて貰うな!
そんで今日は餃子パーティーに呼んでくれてありがとな!
珍しい食い物が食えるって聞いて涎が止まらないぜ!」
とユデイ。
「今晩はライキ。
この間はDemonBeastの店主さんに私からのお見舞いを渡してくれてありがとう!
あの、これ皆さんでどうぞ!
フォレストサイドの餃子、マウルタッシェンはリーネからライキのおばさんが用意するって訊いてたから、ここに来る途中のパン屋さんでアプフェルシュトゥルーデルを買ってきたの。
りんごを小麦を使った生地で包んだお菓子だから、今日のテーマにも沿っているかと思って!」
とルウナが紙袋を手渡した。
「あ、そうか、小麦粉の皮で包む料理ならスイーツもありだよな!
ありがとう、女性陣が喜びそうだ!
二人共どうぞ上がって!」
(あと家族以外で来るのは金獅子とモニカさんだけか・・・。)
ライキがそう思いながら柱時計を見ると、時間は17時10分前を指していた。
そのままユデイ達を案内してリビングに戻ろうとしたら、再び呼び鈴が鳴った。
(おっ!来たか!)
ライキはユデイ達をリビングに通すと玄関に引き返し扉を開けた。
そこには案の定金獅子とドSメイドの二人が並んで立っていた。
金獅子は今日はオフのためか鎧とマントは装着せず、いつも鎧の下に着ている白の騎士服のみの姿で、黒の剣は宿に置いてきたらしく、今日は下げてはいなかった。
一方モニカのほうはリリアナから支給されたものではないいつものメイド服姿に戻っており、手には何やら美味しそうな匂いのする保存容器を持っていた。
「ここがお前の家か・・・。
何やら賑やかだな。
本当に僕が来ても良かったのか?」
レオンは人数が揃ってきて賑わってきたリビングのほうを少し心配そうに見ながらそう言った。
「大丈夫だよ。
皆あんたが来るって知ってるから。
でもユデイとルウナにはこないだのオレンジ・スパの件を謝ってくれよ?
それからリーネだけでなく、今日来ている女性は皆パートナー持ちだから、くれぐれも口説かないように。」
「・・・言われなくてもわかってる・・・。」
と拗ねたように唇を尖らせるレオン。
「うふふっ、レオン様ったら銀色狼さんにその辺りを信頼されて無いからって拗ねちゃって・・・。
それはレオン様の今までの行動を振り返れば仕方のないことですわ。
でも、これから信頼していただけるように精一杯努めればいいのです。
そうすればいつか必ず解っていただけますわ。
まずはきちんと銀色狼さんのお友達に謝りましょうね。
怖いのでしたら私が一緒に謝って差し上げてもいいのですよ?」
レオンはモニカのその提案に頭を振った。
「・・・いや、大丈夫だ。
桃花が一緒に謝っては、相手に僕の気持ちが充分には伝わらないだろう?」
「えぇ・・・そうですわね!
レオン様、成長されましたわ・・・!
これも皆銀色狼さんのお蔭ですわね!」
とライキに笑いかけるモニカ。
「えっ、俺は特に何もしてないですよ?」
ライキはそう言って汗を飛ばした。
「そんなことありませんわ!
貴方がレオン様とお友達になってくださってから、レオン様・・・見違えるほど素直になられましたもの・・・。
私、それがとても嬉しくて・・・」
グスッと涙ぐむモニカ。
「お、おい、そんなことでいちいち涙ぐむなよ・・・!
ったく、近頃のお前は涙脆くて調子が狂うんだよ・・・。
いいからさっさと邪魔するぞ。
こっちだな?」
そう言ってレオンは照れくさそうに耳まで赤く染めながら先に賑やかなリビングの方へと歩いて行った。
「うふふっ、それでは私もお邪魔しますわね。
あ、銀色狼さん。
私の故郷ジャポネのギョーザと、レオン様の故郷アデルバートのペリメニを作ってきましたの。
皆さんで召し上がって下さいな。」
「どちらも美味そうですね!
ありがとうございます!」
ライキはそれを笑顔で受け取るとモニカを案内しつつリビングへと戻った。
すると、先にリビングに入ったレオンとユデイとルウナとの間に気まずい空気が流れていたので、ライキはつかつかとレオンの元へ歩み寄り、無言でその背中をバシッと叩いた。
レオンはライキのほうを振り返り見た。
ライキが、
(ほら、自分の言葉で言うんじゃなかったのか?)
と言わんばかりに自分のほうを見ていたので、レオンは意を決すると、二人に向かって頭を下げた。
「この間のスパでは不快な思いをさせて済まなかった・・・。
もうあのようなことは言わないと誓う。
だから・・・僕がこの場にいることを許してもらえないだろうか・・・?」
ユデイとルウナはキョトンとして互いに顔を見合わせると、柔らかい微笑みをレオンに向けた。
「顔を上げろよ騎士さん。
あんたと友達になったってライキから聞いたときからなんとなく解ってたよ。
あんたが今頑張って心を入れ替えようとしてるってことな。
それなら俺らは歓迎するぜ!
あんたを信じたライキを信じてるからな!
まぁちょっとでもルウナに手を出そうとしたものなら、あんたへの評価を振り出しに戻さざるを得ないけどな?
つーわけでよろしく!」
そう言って腕をレオンに差し出すユデイ。
「ありがとう。
こちらこそよろしく。」
レオンも微笑み、ユデイの腕に自らの腕をコツンとぶつけるのだった。
彼らの和解をリビングにいる面々が微笑ましく見ていると、ハイドの手伝いにより肉屋の営業を無事終えたのか、サアラがハイドと共にお手製マウルタッシェンの入った容器を手に持ってリビングへと入ってきた。
「うちの夫を除いて皆さんお揃いかしら?
ごめんなさい、お待たせしちゃったわね!
丁度17時になったところだし餃子パーティーを始めましょうか!
ライキ、あんたが主催なんだから、あんたが乾杯の音頭を取りなさい。」
サアラに促されてライキはちょっと照れくさそうに前に出て声を上げた。
「皆さん今日は餃子パーティーにお集まりいただきありがとうございました!
皆さん色んな餃子を用意して持ってきてくれましたが、それらの餃子を楽しむのもよし、ここにある食材を使って新しい餃子を作るのもよし。
それぞれ好きに作って食べて飲んで過ごしてください!
それでは飲み物をお手に・・・乾杯!!」
そうしてパーティーは始まり、楽しい時間を過ごす銀色狼と空駒鳥のつがいなのだった。

追記④─<天馬の噂>─

餃子パーティーが開始してから程なくして─。
森の青鹿亭の夜からの営業のために皆に挨拶して店に戻ったハイドと入れ違いに、ライキの父ゲイルこと疾風しっぷうの銀狼が帰宅した。
「あっ!親方お疲れ様です!
親方も一杯どうです?」
酒が入って褐色の肌を赤く染めたバスターがそう言ってゲイルにビールを勧めた。
「バスター、ありがとう。
だが生憎とこの後彼に仕事の話があるから酔い潰れるわけにいかなくてな。」
と言ってゲイルは金獅子のほうを見ると、穏やかにその酒を断った。
レオンはライキから、
「俺の父さんがあんたに頼みたい仕事があるって言ってたから、詳しいことが決まったら話が行くと思う」
と訊いていたため、
(そのことか。)
と思って顔を上げゲイルを見た。
「えーーーっ、親方つまんねぇよぉ!
折角いつもクールな親方のへべれけな姿が見られると思ったのによぉ。
一杯だけでも駄目っすか?」
とバスター。
「すまないな。
今度改めて晩酌に付き合うから今日は勘弁してくれ。」
とゲイル。
「わかりやしたよぉ!
つーか餃子が美味すぎてビールがやたら進むのに、周りは未成年もしくは妊産婦ばっかで酒の相手が居ねぇ!
気さくに付き合ってくれそうなハイドは仕事で帰っちまうし、女将さんは付き合ってくれたけど速攻で酔いつぶれちまったしよぉ。
寂しいよぉ~~~!」
「はいはい、あんたってデカイ図体のくせして一人酒が飲めないさみしんぼだもんねぇ。
よしよし。」
ミラがそう言ってバスターを赤子のようにあやすのを見てあははと笑う素面しらふのメンバー達。
「金獅子くん。
パーティーが終わったらでいい。
少し時間をくれないか?」
ゲイルがレオンに向けてそう言った。
「・・・了解した。」
と頷くレオン。
(あぁ、例の依頼の話が纏まったんだな。
ナイト家の金獅子にしか頼めない仕事だと父さんが言っていたが、一体どんな仕事なんだろう?)
ライキは金獅子に餃子を勧めながらそんなことを思うのだった。

20時半─。
森の青鹿亭のディナーの営業が終わり、ハイドがヒルデとエルドを迎えに来たので、それをきっかけにパーティーはお開きとなった。
リーネと一緒に皆が差し入れを入れてきた容器を洗い、その中に今日作った餃子の余りを詰めたものを土産として手渡すと、二人で手を振り見送った。
そしてハント家に残ったのはライキとリーネ、酔いつぶれてしまい夫ゲイルに寝室に運ばれてすやすやと寝ているサアラ、その寝室から気軽な服装に着替えて戻って来たゲイル、そして仕事の話のためにハント家に残ったレオンとモニカだけとなった。
サアラが寝てしまったため、リーネが一人でここの片付けをしなければならなくて大変そうだと思ったライキは、それを手伝おうと皿をまとめ始めたが、父ゲイルに肩を叩かれその手を止めた。
「これから彼に話をするが、ライキも同席してくれないか?
俺と彼は初対面だからな。
お前が居るほうが彼も話を訊きやすいだろう。」
(それもそうだな・・・。)
ライキは父の言うことに納得し頷いた。
「うん、わかった。」
(でもリーネはやはり大変そうだな・・・。)
そう思ってライキが鍋やらフライパンやらをキッチンへとせっせと運ぶリーネを心配そうに見ると、モニカがそれをスマートに手伝いながらライキとリーネに向けてこう言った。
「私は後からレオン様にお話をお聞きすれば良いので、お片付けは私が手伝いますわ。」
「あ、ありがとうございますモニカさん!
助かります!」
とリーネ。
ライキもモニカに頭を下げると、その足で父とレオンに珈琲を注ぎ、そのカップをソファーに向かい合って座る父とレオンの眼の前のローテーブルに置いた。
そして続けて自分のぶんの珈琲をマイカップに注ぐと、それを持ったまま彼らのサイドに置かれたソファーに腰を掛けた。
ゲイルはレオンに珈琲を勧め、自分も珈琲を一口飲んでから口を開いた。
「俺はフォレストサイド村の魔界ゲートの番人であると同時に、このフェリシア神国中にある全ての魔界ゲートの統括も行っていてな。
先日フランのゲートを任せている番人から、見たことのない魔獣を目撃したとの連絡を受けたんだ。」
レオンとライキは頷いた。
「その魔獣は背に羽根の生えた美しい白馬で、番人の男が近付くとすぐに飛んで逃げていってしまったそうだ。
彼はその後も何度かゲート付近でその白馬を目撃したが、その度にすぐに飛んで逃げていってしまったとのことだった。
俺もその報告を受けてから様子を見に行ったが、やはり俺に気が付くとすぐに逃げられてしまった。
そこで俺の使役魔獣である金剛鳥の背に乗り追いかけてみたが、酷く怯えた様子で高度な風の魔法、光魔法による多彩なカモフラージュを使って必死に逃げようとしていた。
それ以上追い詰めれば警戒して二度とフランのゲート付近には戻って来なくなくなるだろうし、その結果人里に降りるかもしれないと判断したため、その時は大人しく引いたがな。
だがその際にその魔獣の姿を間近で見ることが出来たし、背に羽根を生やした馬の魔獣ということからそうだろうとは思ってはいたが、やはりあれは昔の魔王大戦の頃に存在していたとされる、現在では伝説となってしまった天馬という魔獣で間違い無いだろう。
古代の魔獣に関する書物に書かれていた通りの外見的特徴・・・そして使ってきた魔法属性からも一致するしな。
まだ若い牝馬だからなのかその個体の個性なのかはわからないが、異様に人を恐れているようで、回避にばかりその力を使ってはいたが、本来であればA+クラス魔獣とされる力は持っているだろう。」
「天馬?
僕の先祖のラスター・ナイトが背に乗り天を翔けたとされる、あの天馬か?」
とレオン。
「あぁその天馬だ。
魔王が5英雄により封印されて以降、天馬やグリフォン、レヴィアタン、フェニックス等の様々な魔獣が魔界へと還り下界からその姿を消したというが、近頃魔王の封印が弱まってきているからな。
魔界ゲートから現在では見られなくなった魔獣が再び湧き出して来たとしてもおかしくはない。
今のところあの天馬による人への被害は出ていないが、このまま放置しもっと人の目に触れるようになれば、あの個体が自己防衛のために取った行動により人に危害、もしくは建物に損害を与えるかもしれんし、そうなってしまうと狩人として狩らねばならなくなる。
それにレアな魔獣として報奨金目当ての乱暴な輩に狙われ見世物として捉えられてしまうかもしれん。
A+クラスの魔獣を捉えられる者はそうはいないが、あれはまだ人というものを知らない経験の浅い魔獣だろうし、卑怯な罠を使われればあっさりとかかってしまうこともあり得るからな。
そこで、俺としてはそのようなことになる前にあの天馬を保護し、近くに置いてその生態を観察出来るよう使役がしたいんだ。
だが生憎と俺もライキももう持てる使役魔獣の数が限度に達している。
それに狩人の使役のやり方では、まだ人に危害をもたらしていない天馬を半殺しにし、恐怖により捻じ伏せる事になってしまう・・・。
だがもしかしたらラスター・ナイトの血を引く君ならば、あの天馬と戦わずして手懐けられるのではないかと思ったんだ。
どうだろう?
フランのゲートまで天馬の調査に向かい、使役を試みては貰えないだろうか?
そして無事天馬を使役出来たなら、時々俺かライキにその生態を観察させて欲しい。
それが君に頼みたい仕事の内容だ。」
ゲイルの話を聞き、レオンは暫く考えた後にこう答えた。
「・・・興味深い話だが、僕と桃花には冒険者のノルマがある・・・。
その天馬の調査に向かっている間に登録が抹消されるのではないかと心配だ。
銀色狼の話ではこの間の働きが評価され、Bランクへの昇格が内定しているらしいし、それを失うのは惜しい・・・。」
「あぁ、そのことなら心配ない。
この依頼は冒険者ギルドを通させてもらうから、登録維持のノルマも達成されるし、ラスター・ナイトの血を引く者でなければ果たせない特別な任務だから報酬も弾ませてもらうつもりだ。
それに君が天馬を使役出来れば、魔獣最速の疾風馬はやてうま程の速度ではないにしろ、地形を気にせず空を飛べるから、エングリアの冒険者ギルドまで用事で出向くことも、仕事で遠征し拠点を離れることも、然程苦ではなくなる筈だ。
それにライキに訊いたが、君は将来的にフォレストサイドへの移住を考えているが、住まいが無いために宿暮らしなのだろう?
それでは費用も嵩むだろう。
この任務が達成出来たなら、馬小屋のある空き家に心当たりがあるから大家を紹介するぞ?
大家は君達が現段階で異国民であっても構わないと言ってくれているし、家具も揃っていて契約後すぐに住むことも可能だ。
借家なら宿賃の3分の1程の費用に抑えられるだろうしな。
君達にとって悪い話ではないと思うが・・・どうだろうか?」
ゲイルの提案にレオンは膝に置いた拳をぐっと握った。
「その依頼、やらせてくれ・・・!
その天馬を僕に手懐けられるかはわからないが、やれるだけのことはやってみたい。
だが具体的にどう使役するんだ?
もし天馬が僕に懐いてくれたとしても、背に乗せるのは僕だけで、桃花は乗せてくれないようでは困る。
それにそんなに人を恐れるようでは、用事で町に行った時、町中で待機させることも出来ないだろう?」
それを聞いてゲイルはアイテムボックスからライキにとっては見覚えのある透明な魔石を取り出し、レオンの前に差し出し言った。
「これは狩人が魔獣を使役する際に使う”従属の魔石”というもので、本来であれば俺が認める中級以上の狩人につき2つまでしか支給されないのだが、今回の任務には必要なものだから、例外となるがこれを一つ君にやろう。
これに君の血を吸わせて使役したい対象の身体につければ使役は完了する。
本来なら相手を半殺しにして屈伏させてから魔石を取り付けるが、もしも相手が君に心を許しているのなら、痛みつけずともこの魔石を受け入れてくれるはずだ。
この魔石がついていることで天馬は君の血により行動を縛られると同時に君から加護を受けることになり、使役主の強さに応じて肉体や魔力が強化される。
A+クラスの天馬にラスター・ナイトの末裔である君の加護が加われば、Sクラス相当にはなるだろうな。
そして君から受けた加護が天馬の心の平穏に繋がり、人々に対する怯えも緩和される筈だ。
更にはその魔石を通して君の意志や気持ちが天馬に伝わるようになるから、君の望むことを素直に訊いてくれるようになるぞ。」
「・・・わかった。
だが・・・そんな貴重なものを僕にくれてもいいのか?」
金獅子は不安気に眉を寄せたままゲイルに尋ねた。
「あぁ。
それは元々うちの長男に用意していたぶんの一つだが、あいつが狩人を引退する際に、
「俺には水蛇一匹いればいい。」
と言って返され余っていたものを有効利用させてもらっただけだから気にしなくていい。
君が俺に恩を感じると言うなら、俺が必要な時だけでいいから、君のその腕を貸してはくれないだろうか?
これは今日教会から知らされてばかりでライキにも今初めて話す情報だが、実は年末にグリーンドラゴンとレッドドラゴンの群れがフォレストサイド南の森のゲートから湧き出すと神使様により予知された。
その際は引退したハイドにも手伝って貰ってハント家総出で討伐にかかるつもりだが、相手がドラゴン・・・しかも群れとなると、相当苦しい戦いになると思う。
そこで君が討伐に加わってくれれば俺達もかなり楽になるし大変助かる。
勿論君が討伐した分はきちんとカウントし、正当な報酬を支払わせてもらう。
どうだろう?
引き受けてもらえるだろうか?」
(年末にドラゴンの群れが湧き出るって・・・!?
それじゃあ俺もそれまでにスルキラに行って新しい武器防具を見繕っておいたほうがいいな・・・。
俺には銀色狼シリーズがあるが、俺が人としての生を選ぶならあれはいつか手放さなければならないものだ。
それに頼らず、人の世の武器防具のみでそれに挑みたい。)
とライキは思うのだった。
「・・・わかった。
天馬の使役の件、それに年末のドラゴン討伐の件も引受させてもらおう。」
レオンはそう言うと、ゲイルと握手を交わし、従属の魔石を受け取るのだった。
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