上 下
32 / 57
7羽 スイズリー山脈の風の使い

②老いた狩人と希望の風

しおりを挟む
スイズリー村─。
銀色狼の父ゲイルの故郷であり、フォレストサイド村から北へ徒歩で2~3週間はかかる距離にある険しい山脈の間にある、人口30人ほどのほぼ集落といってもいい規模の小さな村である。
銀色狼は空駒鳥を連れて約5年ぶりに来るスイズリー村を上空から見下ろしたのち、シュン!と村の中央にある広場のヘイズ・ハント像の前に降り立った。
早朝6時という時間だけに村の外を彷徨いている者はいなかったが、田舎暮らしの特性故に既に起きている村人が大半なのか、広場近くの民家から朝食の支度をしているであろう物音と煙突から登る煙が見えた。
「ここがスイズリー村・・・。」
リーネが始めて来る村を見渡した。
石畳で固められた広場周辺には花で彩られた石造りの可愛い家が数軒立ち並び、牛や羊、山羊などの家畜小屋からその鳴き声が聴こえた。
「あっ、これがヘイズ・ハントさんの像だね!
この人がライキの遠いご先祖様で、私の遠いご先祖様のお仲間でもあった人・・・。
うふふ!本当に変なポーズ!
ライキの言った通り、髪が長くて、顔つきもちょっとハイドさんに似てるね!」
リーネが降り立った場所の近くにあった腕と足を<>の形に曲げて立ち、その指先を頭の先に置いた間の抜けたポーズのヘイズ・ハント像を見てクスクスと笑った。
「だろ?
この像を見に来る観光客のお陰で、この過疎化しつつある村も何とか維持出来てるんんだって。
でも観光客がこの山の上まで来るのが大変だから、山麓の村イターリナか、いっそのこと首都フェリシアに像を移したらどうなんだと声も上がっているそうだけど、”ヘイズ・ハントの故郷でもない場所に像を移すだなんて有り得ない”、”そんなことをされたら村がなくなってしまう"と村長さんやじーちゃん達が反対してるんだって。」
ライキがそう像について説明をした。
「そっか・・・。
私もヘイズ・ハントさんの像と故郷ふるさと、はずっとここに残して欲しいな・・・。
だって、この国の英雄とこの像と土地を通して繋がることで、沢山の希望と元気が貰える気がするもの!」
「そうだろそうだろ?
嬢ちゃんはいいことを言うのぉ!」
リーネの言葉に対してライキよりも先にそう返したその声の主は、ライキにとって非常に懐かしい相手・・・ザイン・ハントその人だった。
ザインは折れた左足を包帯でグルグルに固めた状態で松葉杖を付き、こちらへ向かって来ていた。
ザインは白髪も少し混ざっているのか、ライキよりも白っぽい銀髪を短く刈り上げており、明るくひょうきんな顔つきをした初老の男だった。
その左手の薬指には、金色の祝福の指輪が輝いていた。
「じーちゃん!」
ライキはびっくりして慌ててザインに駆け寄ると、その身体を支えた。
「骨折してるんだろ!?
態々出迎えに出てこなくても良かったのに!」
「いやぁ、足以外は別に元気だし、あんまりじっとしてばかりいると身体が鈍ってしまうからのぉ!
カッカッカッ!」
そう笑うザインの後ろからは彼を追うように妻シルビアがこちらに駆けて来ていた。
「ザインーーー!
診療所の先生が骨がある程度固まるまでは安静にしてろって言ったろう!?
勝手に出歩いてるんじゃないよ!
ったくもう!」
シルビアはザインを支えているライキの姿にすぐに気がつくと、目を見開いて嬉しそうに声を上げた。
「あらぁ!ライキかい!
こないだ会ったときはまだ子供で可愛かったのに、背なんかザインより大きくなって・・・すっかりいい若者じゃないか!」
「ばーちゃん!」
シルビアはライキが前に会ったときより少し老け、皺は年齢なりに刻まれてはいたが、かつては宝石に例えられたというその凛々しい美しさを充分に残した魅力のある初老の婦人だった。
彼女は元々髪の色素が薄いのか、ザインと同じような髪色をしていた。
そして、彼女の左手の薬指にもザインと対になる金色の指輪が輝いていた。
リーネはシルビアの顔を見て、ゲイルはシルビア譲りの顔立ちで、ライキもその系統を継いでいるのだと納得した。
「ザインってば、耳が良いからすぐにあんた達の声に気がついて、迎えに出るってあたしが止めるのも聞かずに行っちゃったんだよ!
全治2ヶ月の骨折をしているのに馬鹿だよねぇ!」
シルビアはそう自分の夫を笑い飛ばしてからリーネに視線を移し、優しく話しかけた。
「あんたがライキのつがいのリーネちゃんだね!
この村には教会は無いけどさ、イターリナから定期的に教会のニュースペーパーを届けてもらっているから、リーネちゃんのこともそれを見て知っていたけれど・・・本当に可愛い子でびっくりしたよ!
ライキがいつもありがとね!」
「えっ?いえっ!そんな!
私の方こそライキとおじさんとおばさん、お兄さん夫婦にはいつもお世話になってます!
私、フォレストサイド村で薬師をしてますリーネ・ファーマシー、通り名は空駒鳥です!
ザインさんのお怪我が治るまでの間、お世話になりますね!
これっ、私の作った桃ジャムとクッキーです!
召し上がってください!」
リーネは緊張して汗を飛ばしながらも自己紹介し、手土産を渡して頭を下げた。
「あらぁ!
手土産まで態々ありがとうね!
美味しそうなジャムとクッキーだこと!
そんなに緊張しなくていいよ!
あんたは近い未来ライキのお嫁さんになるんだし、あたし達の家族同然なんだからさ!
こちらこそ、お世話になるね!
みんな、家に戻って朝ごはんにしよう!
ゲイルから今日来ることは訊いていたから、あんた達のぶんも用意してあるよ!
まぁこんな山の上だから大したご馳走でもないけどさ!」

そうしてザインとシルビアの暮らす、”ヘイズ・ハント子孫の家”と表札がかけられた花で彩られた石造りの家に通された二人は、リビングで朝食のプレートを目の前に座っていた。
その朝食は客人を意識してか、普段この夫婦が食べている朝食よりも少し品数が多く豪華なものであり、プレートにはじゃが芋を細切りにしてパンケーキのように丸く焼いたもの、それに目玉焼きとグリーンサラダが添えられており、他にはドライフルーツとナッツが入ったシリアル、そしてチーズとハム、それにグラスに入った牛乳が添えられていた。
「わぁ・・・!
すっごく美味しそう♥」
リーネが目を輝かせて喜んだ。
「うん!美味そうだ!
ばーちゃんの朝食マジ久しぶり!」
「普段はあたしとこの人だけだから、火を使わずに済むパンとチーズとハムで手早く済ませちゃったりもするけど、今日は特別だよ!
さぁ、召し上がれ!」
「「いただきます!」」
二人は元気に手を合わせ、朝食に手を付け始めた。
そして、食べながら近況などをお互いに軽く報告したが、ライキは普段積極的に話題を振ってくるザインの口数が少なく、時々表情を落とすことが気になっていた。
(怪我のせいかな・・・。
じーちゃんのこんな感じ、初めてだ・・・。
最初迎えに出てきてくれた時はいつもと変わらない様子だったからホッとしたけど・・・。)
「・・・じーちゃん、かなりの高さから落とされたんだろう?
それで足の骨折だけで済んでて流石だって父さんも言ってたよ。」
ライキが祖父に優しくそう話しかけると、ザインは暗く表情を陰らせ俯きながら言った。
「・・・まぁな。
これだけで済んだのは、わしの使役魔獣のワイバーン・・・ウィンディのお蔭だ。
ウィンディは自分も羽根をやられて落下しておるのに、危うく岩山に叩きつけられる所だったわしに気がついて、無理をして軌道を変え助けてくれた。
お蔭でわしは森の方に飛ばされ、木の枝で衝撃を幾らか吸収されてから茂みの上に着地出来たから、あの高さから落ちても足が折れるだけで済んだんだ・・・。
だがその為にウィンディは受け身を取れず、落下の衝撃をモロに受けて重症になってしまった・・・。」
(・・・成程・・・。
それでじーちゃんは気を落としているのか・・・。)
ライキは納得すると、祖父の使役魔獣のワイバーンの姿を思い出した。
「そうか・・・・・。
ウィンディって結構おばあちゃんだったよな?
俺も昔背に乗せてもらったことがあるけど、優しい目をしてた・・・。
・・・まだ息はあるのか・・・?」
「・・・。
死んではおらんが・・・羽根だけでなく相当酷く身体を打ち付けておるし、あれも高齢で傷の治りも遅いから、また飛べるようになるかどうか・・・。
リーネちゃん、済まないが、ウィンディを先に見てやってくれんかの?
それで・・・もしもう二度とあいつが空を飛ぶことが叶わないのなら・・・・・・」
ザインは呟くように何かを言いかけて、打ち消すかのように頭を振った。
リーネはその先を訊かなくても想像がついたのか、最後の部分は聴こえなかったフリをして席を立った。
「は、はい!
すぐに診てきます!」
「あぁ、いいんじゃよ!食事の後で・・・」
ザインが汗を飛ばしながらリーネを引き止めた。
「いえ!
後は食後の珈琲だけでしたし・・・私も気になるからすぐに診て来ます!
あの・・・ウィンディさんはどちらに?」
リーネの問いかけにシルビアが反応して席を立った。
「あぁ、案内するよ!
ホントに無理を言ってすまないねぇ・・・」
二人はリビングを出て勝手口から外へ出て行った。
そして、リビングに残されたザインとライキだったが、ザインは影を落としたままでライキに向けて言った。
「・・・ライキ。
帰ったらハイドに伝えてほしいことがある。」
「兄貴に・・・?」
ライキが怪訝そうに眉を寄せた。
「・・・・・わしのために狩人に戻ってくれないかと。
そしてわしはもう狩人を引退する。」
「!!」
ライキはザインの言葉に目を見開き言葉を失った。
「・・・認めたくはないが、わかるんだ・・・。
わしはもう、昔のようには動けない。
かつてはレベル限界点の100に到達し、歴代ハント家の中でもかなり優秀な方だという自信もあった。
だが、今のわしは・・・息子にはとうに追い抜かれ、まだ16の孫のライキとサシで勝負しても勝てるかどうかというところまで老化で衰えてしまった・・・。
今回だって、相手が未知の魔獣であろうと、全盛期のわしならもっと戦えたし、ウィンディにあんな無理をさせることもなかったんだ・・・。
今はまだ普段出てくるハイクラス魔獣程度なら対応出来ておるが、これから老化が進むにつれ、それもどんどんきつくなってくる・・・。
だが、わしが引退したらスイズリーゲートを守る者がいなくなってしまう。
そうなると、スイズリー村と山麓にあるイターリナだけでなく、近郊にあるフランやオリア村まで魔獣の縄張りになってしまう・・・。
それだけは避けなければならない。
だが、ハント家以外の狩人ではとてもここのゲートの番人は務まらんだろうし・・・。
かといって、魔王の復活が危ぶまれている今、フォレストサイド南の森のゲートが一番危険だし、そっちにハント家の者を置く必要があるのもわかっておる・・・。
フォレストサイド南の森ゲートの番人はライキ、お前がゲイルから継ぐから良いとして・・・スイズリーのほうは後を継ぐ者がおらんのが現状なんだ・・・。
わかるな?
今ハント家の人間を余らせておく余裕はとても無い!」
ザインはそう言うとテーブルに拳を叩きつけた。
「・・・だから兄貴に狩人に戻れと・・・。」
ライキはそれに対して渋い顔をし、俯きながら呟いた。
「・・・そうだ。
ハイドには狩人に戻ってもらって、このスイズリーに移住し、番人を継いで貰いたいんだ!
カミさんと産まれた赤ん坊、そして姑さんも一緒にこの村でその森の青鹿亭とかいうカフェ?・・・とやらをやればいいだろう!
それかハイドがフォレストサイド南の森のゲートの番人を継ぎ、ライキが嬢ちゃんと一緒にスイズリーに移住するかだ!
ゲイルにも昨日そのことを話したが・・・あいつは父親として、ハイドの決めた道を見守ると言いおった!
じゃあこのスイズリーゲートはわしが引退したらどうするんだと言ったら、親父には後10年は頑張ってもらうと抜かしおった!
その頃にはライキが一人で立派にフォレストサイドゲートの番人をやれるようになっているだろうから、俺がサアラとスイズリーに移住してスイズリーゲートの番人を引き継ぐと。
だがその頃にはゲイルも50じゃ!
この村じゃ若いほうだが、それではどのみちこのスイズリーに先がない!
この村には若い風が必要なんじゃ!
未来を呼ぶ新しい風が!
・・・・・それでわしはその不安をゲイルにぶつけてしまい、喧嘩したままフォレストサイドに返してしまった・・・・・。」
ザインはそう言うと拳を膝に下ろし、ぐっと強く握り締めた。
「・・・そうだったんだな・・・。
父さんは特にじーちゃんと喧嘩したとは言ってなかったけど・・・。
でもごめん・・・。
兄貴のことについては俺も父さんと同じ意見だよ。」
「ライキ、お前まで何を言う・・・!」
ザインは声を荒らげて立ち上がろうとするが、足が痛んだのか苦痛に呻くと渋い顔でやむなく席についた。
「スイズリーの後のことを心配するじーちゃんの気持ちは良くわかるよ・・・。
だけど、兄貴は兄貴の大切な人達のことや、狩人の仕事のこと、そして自分の持っている能力ちからの使い道・・・スイズリーの行く末も、全て含めて悩み抜いて、最善の道を選んだんだと思うよ・・・?
それにじーちゃんはまだ60じゃないか。
老化による衰えのことは・・・俺はまだ体験したことがないから想像することしか出来ないけど、じーちゃんは間違いなくこの国で最強のじーちゃんなんだし、まだまだ現役で戦えると思うよ?
父さんが”後10年頑張って貰う”って言ったのは、じーちゃんにその期間無理をさせようとしているんじゃなく、じーちゃんのを理解しているからこその言葉でもあるんじゃないかな?」
「わしの本質だと?」
ザインはまだ怪訝そうに眉をひそめたままで訊き返した。
「うん。
俺は狩りが好きだから、きっと70になっても80になっても・・・例え自分の子や孫より老化による衰えで弱くなって、周りが心配だから引退しろと言っても・・・きっと生涯狩人で居続けると思う。
きっと父さんもそういう人だ。
じーちゃんは今はただ、パートナーのワイバーンが重症で、自分も骨折していて自由に身体が動かないから自信がなくなって、ネガティブなことばかりを考えてしまっているだけで、じーちゃんだってきっとそういう人だと俺は思うけど・・・違うのか?」
「・・・・・狩りが好きな気持ちか・・・・・。
そうか・・・・・。
近頃のわしはスイズリーゲートを守る責務のことばかりを考えて、純粋に狩りを楽しむ気持ちを忘れていたのかもしれん・・・・・。」
ザインはライキの言葉に、今の自分に欠けていた何かがストン・・・と落ちてきたような気がした。
「うん・・・。
世の中には不安なことも沢山あるけど、希望だって沢山あるんだよ。
じーちゃんのワイバーンだって、リーネの力で回復して、また飛べるようになるかも知れない。
じーちゃんだってきっと、身体が元通りに元気になれば、狩りに出たくてウズウズすると思うんだ。
夏になり気温も上がってきたから、スイズリー山脈にもこれからサラマンダーやヘルハウンドなんかがどんどん出てくるだろ?
奴らを如何いかに良い部位を残して狩るか・・・そういうことを考えると楽しいよな?
その楽しみをいくら自分の身内でも、他の狩人に丸々奪われるのは悔しくないか?」
ザインはライキの言うことに共感したのか、黙ってゆっくりと頷いた。
「だろ?
だから今の引退の話は聞かなかったことにする。
でももし今後、じーちゃんが今回みたいに怪我をしたり、何かトラブルがあって上手く戦えなくなったりした時には、家族皆でフォローするよ。
だから、じーちゃんは好きな狩りを気負わずに、気の済むまでしていていいんだよ。
そして、スイズリーの後のことは次の世代に任せればいい。」
「次の世代だと?」
ザインが顔を上げた。
「うん。
兄貴の長男のエルくんが、将来狩人になる道を選ぶかはわからないけど・・・兄貴はあと一人は子供を作るって言ってたし、俺も二人は子供が欲しいんだ。
その子供たちのうちから誰かがきっと、スイズリー村の狩人を継いでくれると思うよ?
もし誰も継ぐつもりがないのなら、俺が責任を持ってスイズリーのことを考えるから安心して欲しい。」
ライキはそう言うと、祖父に向けて腕を差し出した。
祖父はその意図を汲み取り、孫の腕に自らの腕をクロスに当てた。
そして二人は笑い合った。
「怪我が治って◆のグリフォンの問題も解決したら、フォレストサイドに遊びにおいでよ。
エルくんに会わせてやりたい・・・。
すげー可愛いし、命そのものが本当に輝いていて、あの小さな手からは希望を沢山貰えるよ?
それにエルくんは俺のすげー嫌いな奴も可愛いって言うほど、何か・・・天性の人を惹き付けるものを持っていると思うんだよ・・・。
じーちゃんもきっとメロメロになると思うよ(笑)」
「あぁ・・・!
行く・・・。
エルくんに会いに行くよ・・・。」
ザインはライキの優しい言葉にまだ会ったことのない曾孫に思いを馳せると、紺色の瞳に涙を滲ませて言葉を詰まらせながらそう返した。
そこでウィンディの様子を見に行っていたリーネとシルビアが戻ってきてリビングの扉を開け放つと、リーネがキラキラと嬉しそうに瞳を輝かせながら明るい声で言った。
「ザインさん!
ウィンディさん治りますよ!
神秘の薬の力だけじゃなくて、ウィンディさん自身が治りたいという気持ちが強いのかな?
物凄く薬の効き目が早いんです!
下手したらザインさんより早く治っちゃうかも知れませんよ?
うふふ・・・負けていられませんね!」
「いやぁ~!
あたしゃびっくりしたわ!
リーネちゃんの薬の効き目は本当に凄いんだから!
まさにあれは神業だったよ!」
「うふふ!
その通り、神様のお力をお借りしてますからね・・・!
でもこれは私がライキとつがいでいられる時期限定の効き目ですから、普段はここまで効かないことは心に留めておいてくださいね。
薬師としてはそれが少し悔しくもあるんですけど・・・。
でも、お蔭様で助けられる命があるんですから、それを目一杯活用しなくっちゃ!
だからザインさんの骨折も、素早く直しちゃいましょうね!」
「あぁ・・・リーネちゃんの言う通りだ!
わしもウィンディに負けておれんな!
治療を頼むよ!!」
「はい!」
そうして希望を見失っていたザインの瞳に再び光が満ち輝き始め、いつか吹くであろう新しい希望の風を、気負わずありのままで過ごしながら、ゆっくりと待ってみようと思えるようになったのだった。
しおりを挟む

処理中です...