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4羽 冒険都市エングリアにて

①親友の未来のために出来ること

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冒険都市エングリア──。
フェリシア神国において首都フェリシアに次ぐ大規模な町で、銀色狼と空駒鳥のつがいにとって馴染みのある身近な町であるフランの約2倍程の人口を持つ。
その最大の特徴は、冒険都市と名が付くように冒険者ギルドの本部があることだろうか。
首都フェリシアとフランにもギルドの支部はあるのだが、このエングリアの本部に集まってくる依頼の数は圧倒的に多く、時には他国からの依頼も舞い込むこともあり、冒険者達の主な活動拠点となっていた。
他には印刷技術がフェリシア神国の中でも最も高く、出版社や本屋が多い町としても有名だ。
石畳で舗装された大通りには馬車が行き交い、通りを歩く人達も冒険者らしき装備に身を包んだ人か、もしくは地元の人だと思われるエングリア地方伝統とされるチェック柄の服を着た人が多かった。
リーネが通りすがる人たちのチェックファッションに目をハートにし、嬉しそうにライキを見上げて言った。
「ねぇねぇ、エングリアの人たちがよく着てるチェックの生地、可愛いね!
ルウナとヒルデさんのお土産にいいと思わない?」
「うん、用事が済んだら観光してから帰るから、その時に買ってやれば良いんじゃないか?
というか、リーネもチェック、似合うと思うぞ?」
「えへへへ・・・そうかなぁ?
それなら自分用にも空色のタータンチェックの生地を買ちゃおうかな?
それでディアンドルを作ったら絶対可愛いよね♥」
「うん、でも空駒鳥さん?
あんまり可愛い格好をしてると、銀色狼のエッチなスイッチがすぐに入ってひん剥かれて食べられるから気をつけろよ?(笑)」
「・・・銀色狼くんは私が見慣れた格好をしててもすぐにエッチなスイッチが入っちゃうくせに・・・。」
「だってリーネは何時いつでも可愛いし♥」
「も、もう・・・!
褒めたって何も出ないよ?」
「そんなことないぞ?
可愛いっていっぱい言ったらリーネは機嫌が良くなるからな。」
『ご機嫌なら、足を縛ってから素股させてくれるかもしれないしな?』
後半はそっと彼女の耳元で囁く。
するとリーネは驚くと同時に火がつきそうなくらい顔を赤く染めた。
「そっ、そんなの駄目!!
足を縛・・・」
言いかけて恥ずかしくなり、キョロキョロ辺りを見渡して誰も聴いていないことを確認してから、続きは声を潜めてライキの耳元へ届くように背伸びして耳打ちするリーネ。
『足を縛るって、M字に開いた状態ででしょ!?
そんなことをしたら、あ、アソコが丸見えになっちゃうし、そ、そ、そんなの、恥ずかし過ぎて絶対無理っ!!』
熟したさくらんぼみたいに真っ赤になって、目をギュッ!と閉じたリーネが汗をいっぱい飛ばしながら抗議するのが可愛くて、ライキはクツクツと笑った。
『やらしいな、リーネ。
俺、M字で縛るなんて言ってないけど?
もしかしたらそういう願望があるとか・・・?』
『ち、ち、ち・・・違うもん!
ライキの意地悪・・・!
とにかく、あ、足は、ハードルが高すぎて無理!!』
リーネは赤い顔のまま眉を吊り上げてプイッ!とソッポを向いた。
「ちぇっ、足はまだ無理か・・・それなら・・・。」
何かリーネに許してもらえそうなさらなるプレイはないものかと考えながら町並みを見渡していると、ふと面白い店が目に入った。
(おっ・・・あの店、いいものが置いてある。)
「ならあれはどうだ?」
「えっ?」
ライキは近くにあるある様々な魔獣の絵が描かれた看板のある店を指差した。
そこは冒険都市ならではの遊び心が満載の、魔獣のコスプレ衣装の専門店だった。
角イノシシやら雷羊やら竜巻うさぎの着ぐるみや、耳や角のついたカチューシャ、そして更には何故か色んなデザインの首輪も並んでいた。
ライキはその中からショーウインドウに並べられた首輪を指差して、ニヤリと笑ってみせた。
「くっ、首輪!!?」
ビックリして軽く飛び上がり、裏返った声を上げてしまうリーネ。
「そう。」
「く、首輪で何をするの・・・!?」
リーネは滝のように汗を流しながら引き気味でライキに尋ねた。
『リーネがこの首輪をつけて俺のペットになるプレイだよ。
よつん這いになって、フェラしてもらえたら最高だな♥』
再び声を潜めて耳打ちするライキ。
「ライキの変態!!信じらんない!!」
リーネは声を潜めるのも忘れてまくし立てつつ、その首輪をつけられてよつん這いにされ、首輪に繋いだ紐を引っ張られ、口角を上げて色っぽく微笑むライキにフェラを強要されるところを想像し、更に顔を真っ赤に染めて、モゾッと太ももを擦り合わせた。
そしてそれを見逃さなかったライキ。
『なんだ、やっぱりリーネは変態だな♡
・・・今日の用事が済んだら買いに来ような♥』
と耳元で囁やき、その華奢な肩に手を置いた。
『へ、変態じゃないもん・・・!
でもライキがうんと可愛がってくれるなら・・・少しくらい飼われても、いい・・・かな・・・なんて・・・。』
リーネが真っ赤になってモジモジしながら目を逸らした。
ライキはそんな彼女を見てドッキーーーン!と鼓動が跳ね上がり、真っ赤になってゴクッと生唾を飲み込んだ。
『やべっ・・・その顔でそのセリフは反則だろ・・・!
くっそ・・・勃っちまった・・・・・。
今からユデイのこの原稿を出版社に届けに行かないといけないのに、これ・・・収まるかな・・・?』
ライキは親友の原稿の入った封筒で下半身を隠しつつ汗を飛ばした。
『・・ホント、銀色狼くんってばすぐにエッチなスイッチが入るんだから・・・。』
リーネはまだ赤い顔のままでジト目になり、そう呟いた。
『い、今のは仕方ないだろ?』
二人がそんな感じで真っ赤になってもじもじソワソワしていると、通りすがりの恋人達が振り返って噂話を始めた。
「ねぇねぇ今の二人って、ニュースペーパーのネーザ村の観光案内記事に大きく載ってた”銀色狼と空駒鳥のつがい”じゃない?」
「あの女神フェリシア様の寵愛を受けてるっていう?
この町に向かってるって話は本当だったんだな!」
「本当に美男美女のつがいなのね!
ウフフ、ふたりともあんなに赤くなっちゃって初々しいわね!
一体何の話をしているのかしらね?」
「さぁ・・・。
通り過ぎるときに首輪がどうのとか変態だとか言ってるのが聴こえたけど、気のせいだよな?
女神様の特別なつがいっていうくらいだから、きっと清い交際をしてるだろうし。」
「当たり前でしょ?
あんな可愛いつがいがそんなハードなプレイをするわけがないじゃない!
きっとまだキスで精一杯の初々しい関係なのよ♡」
そんな会話が聴こえてきて、二人は何だが申し訳ない気持ちになり、互いに冷や汗をかきながらコソコソと話した。
「・・・私達、世間の人達にそんな清い交際をしてると思われてるんだ・・・。
何だが騙してるみたいで気が引けるね・・・。」
「マジで首輪プレイの話をしてたのにな・・・。」
そんなことを話しているうちに、ユデイに頼まれていた原稿の届け先の出版社に辿り着いた。
「冒険出版・・・ここだ。」

「き、君たちは・・・銀色狼と空駒鳥のつがいじゃないか・・・!!」
ユデイから聞いていた編集部を直接訪ねると、対応に出た年の頃20代後半くらいの男性編集者がそう言って目を見開き驚いた。
「えっ、あっ、はい。」
「いやぁ!ネーザ村での君たちの記事を見たよ!
虹色の羊を作ったのは彼女だろう?
凄いね!」
「あっ、いえ、フェリシア様のお力あっての効果ですから・・・!」
隣のリーネがあわあわと恐縮した。
「いやー本当に美男美女のつがいなんだね!
本物に逢えて嬉しいよ!
それで、そんな君たちがうちになんの用だい?
うちは冒険をテーマにしたエッチな小説やイラストを載せた青年向け雑誌”冒険王”を発行している部なんだけど・・・。
あ、自己紹介が遅れました。
僕はニール・エディターと言います。」
彼はそう言うと一枚の名刺を取り出してライキに渡した。
「あの、こちらの部で新人賞の受付をしていますよね?
その賞に向けて俺の親友が描いた原稿を代理で届けに来たんです。
これなんですけど・・・。」
ライキはそう言うと手に持っていた封筒から中身を取り出してニールと名乗った彼に渡した。
”ハシバミの剣士と薄紅の薔薇”というタイトルの描かれた30枚ほどの紙束を、一枚一枚食い入るように見ていくニール。
「凄い・・・イラストに文字でセリフをつけて物語を表現しているんだね・・・!
まだ若干のつたなさはあるものの、絵がとても上手くて魅力的だ・・・!
特に女の子の裸はリアリティがありつつも程々にディフォルメがされて綺麗だし、つがいの規約を守りながらもエッチなプレイに勤しむ様子がとても丁寧に描かれていて興奮する・・・。
巡礼の旅をするつがいのドキドキ感やシチュエーションも良いスパイスになっているね!
こんな原稿は今までになかった・・・。
こいつは逸材だ!!」
ニールはユデイの実力の高さに大層驚き、目を見開いた。
(やっぱりユデイは凄かった!)
ライキは嬉しく思い、声を弾ませてニールに尋ねた。
「じゃあユデイは入選ですか!?
冒険王に掲載されますか!?」
「あぁ!入選は間違いないよ!
だけど、掲載となると今すぐには無理だね。
流石に未成年が描いたものとしては過激すぎて載せられないからね。
だから冒険王に載るのは彼が成人してからになると思うけど、それまでデビューに向けて作画をもっと洗練するためのアドバイスをしたり、連載に向けてのプロットを作って行ったりのやり取りをしたいんだ。
でも彼が住んでいるのはフォレストサイドだからね・・・。
まだ未成年だし、ご両親の意向もあるだろうけど・・・彼にエングリアに移住してもらうことは出来ないだろうか?」
「・・・あの、エングリアに移住しないと、ユデイは仕事が出来ませんか?」
ライキが眉をひそめてニールに尋ねた。
「・・・まぁうちにフランやフェリシア在住の作家さんもいるにはいるんだけど、どうしても郵便配達での原稿のやり取りに時間がかかるからね。
伝書鳩も原稿の重さは運べないから、遠方に住んでいる作家さんは連載を持てないんだ。
だけどユデイくんは大型新人となるだろうから、デビューしたなら是非毎月連載をして欲しいんだ!
そのためにはエングリアに住んでもらわないと厳しいね。
勿論我社と契約してもらえれば、住処はこちらで用意するし、空き時間に他の作家のアシスタント業務をしてもらうことになるけど、生活費だって保証するよ!」
それを聞いてリーネは表情を曇らせ、考え込むように口元に手を当てながらニールに尋ねた。
「あの・・・ユデイにはつがいがいるんです。
私の親友の子なんですけど・・・その子とユデイ、将来を約束していて・・・。
きっとユデイがこちらと契約してエングリアに住むことになったら、どうしたいのかは本人に訊いてみないとわからないですけど、もしかしたらユデイについて一緒にエングリアで暮らしたいって望むかもしれないです・・・。
もしそうなったとき、それは・・・可能ですか?」
「あぁ、彼に提供する部屋に彼女が一緒に住んで貰うぶんには構わないよ。
その子の生活費まではうちでは出せないけれどね。
でもエングリアは都会だから働き口は沢山あるから、ユデイくんがデビューして原稿料が入ってくるまでは、彼女が自分に必要なお金をアルバイトして稼ぐこともできると思うよ。」
「・・・そうですか・・・。
ありがとうございます・・・。」
リーネはそれだけ答えると影を落として俯いてしまった。
(リーネが沈むのも仕方がない・・・。
ユデイの実力が認められたのは喜ばしいことだが、大切な親友がフォレストサイド村からいなくなってしまうかもしれないんだ・・・。
俺だって、ユデイがフォレストサイドからいなくなったら寂しい・・・。
でも、あいつの夢も応援してやりたい・・・。)
ライキはリーネを心配そうに見ると、その手をそっと繋いだ。
リーネがライキを見上げる。
「・・・お話はわかりました。
でもこれは、ユデイの人生を左右するとても大事な話です・・・。
なので、一度本人と直接会って話をして貰えますか?
俺の力ならユデイをエングリアまで連れてこられますから。
俺たちのエングリアでの用事が終わってからになりますけど・・・。」
「あっ!そうか。
銀色狼くんは女神フェリシア様の寵愛の力で空を飛んで移動ができるんだよね!
そういうことならユデイくんと一緒にそのつがいの女の子も連れてくるといいよ。
これからのことをみんなでよく話し合って、お互いにとって一番良い形で一緒に仕事が出来たらと思っているからね!
そうユデイくんに伝えてくれるかな?」

冒険出版を出た二人は、丁度お昼時だったので、町の中央にある大きな公園のベンチに座り、エングリアの名物料理フィッシュアンドチップスを食べていた。
このフィッシュアンドチップスは、リーネが前々から楽しみにしていた美味しいと評判の専門店のもので、二人で30分程並んでやっと買えたのだが、それを目の前にしても、先程の出版社での出来事をまだ引きずっているのか、あまり食が進まないようだった。
「リーネ、食わないのか?
この後冒険者ギルドに行くんだし、しっかり食っといたほうがいいぞ?」
「うん・・・。
でも・・・もしルウナがフォレストサイドから居なくなっちゃったらと思うと・・・。
・・・ライキは寂しくないの?
ユデイがフォレストサイドから居なくなっちゃうかもしれないんだよ?」
「まぁ・・・寂しいけどな・・・。
・・・あいつがそう決めたのなら俺はそれを応援する。
でも、あいつがフォレストサイドに居たいっていうなら、フォレストサイドに居ながら仕事が出来るように俺が手伝えることがあると思うんだ。」
「フォレストサイドに居ながら仕事ができる方法?」
リーネがライキの言葉に希望を見出して顔を上げた。
「うん。
要は郵便の問題を解決すれば良いんだろ?
それなら狩人の使役魔獣が使えないかなって。」
「使役魔獣?」
「うん。
毎年新年にやってる狩人の会合に来てるおっちゃんたちがいるだろ?
あのおっちゃんたちはそれぞれ遠い町や村から集まって来てるけど、全員が馬車や馬や徒歩で来ているわけじゃないんだ。
あの人たちくらいのベテランだと、大体”風狼ふうろう”とかの足の早い魔獣を使役していて、それでフォレストサイド村まで来ているんだ。
馬よりずっと早く着くらしいぞ?
兄貴もフォレストサイドでは手に入りにくい新鮮な魚介を安定して確保する目的で、”水蛇みずへび”を使役しているし、父さんは仕事で遠くに行くときのために、魔獣最速と言われる”疾風馬はやてうま”と、緊急時に村人を守る盾として、最強の防御力を誇る”金剛鳥こんごうちょう”を使役している。」
「へぇ・・・そうなんだ!
ライキは魔獣を使役していないの?」
「うん。
魔獣が使役できるのって中級狩人以上なんだけど、俺昨年秋に中級になったばかりだし、まだ必要性を感じてなかったからしてなかったんだ。
でも重いものを早く遠くへ運べる鳥が使役できれば、フォレストサイドからエングリアまで数時間で原稿を届ける事が出来ると思うんだ。
それをユデイの仕事に活用出来れば良いんだが、一つ問題があって・・・。」
「問題?」
「うん。
魔獣を使役するときは、相手を力でねじ伏せてから自分の血を吸わせた特殊な魔石を魔獣に取り付けるんだけど、その時ねじ伏せた血の相手にしか魔獣は従わないんだ。
俺が使役してもその魔獣はユデイのために働いてはくれないってことだ。
だから、ユデイ本人にねじ伏せて貰うしかないんだが、一般人のユデイには無理だ。
そこをどうにか出来ないかなと思ってるんだが・・・。
リーネ、何か良いアイディアはないか?」
ライキの問いかけに、リーネは首をひねりながら答えた。
「うーん・・・。
ライキがユデイの姿になって魔獣をねじ伏せて、事前にユデイから血を貰って魔石に吸わせておいて、それを魔獣に取り付けたらどうかな?」
「いや、俺とユデイだと背はそれ程変わらないけど、体格と顔は結構違うし、変装するには無理があるだろ。」
ライキが自分がユデイの格好をした姿を脳内で想像して苦笑いした。
「あ、えっとね。
光の魔法で”ミラージュ”っていうのがあるの。
対象に幻覚を見せる魔法なんだけど、それを魔獣にかければライキの姿をユデイに見せることもできる筈だよ?
まだ私の戦闘経験が足りないから使えないけど、もう少し経験を積んでレベルアップすればね、使えるようになるってフェリシア様が言ってたの。
だからフォレストサイドに戻るまでに頑張って私がレベルアップすれば、実現可能だと思う。
あまり頭のいい魔獣には効かないと思うけど・・・。」
「マジで!
リーネ!その魔法は使えるぞ!
魔法が効きやすい単細胞、なおかつ力持ちで、移動力の高い魔獣か・・・。
西の森に出るワイルドホークとか良いかもしれないな・・・。
まずはユデイとルウナをニールさんに合わせて話をしてみて、ユデイがどうしたいか・・・その答えにもよるけど、俺達からフォレストサイドに居ながら仕事が出来る可能性を提案出来るだけで状況は随分違うと思う!
だから元気出せよ!」
ライキはそう明るく言うとリーネの頭を優しく撫でた。
「うん!そうだね・・・!
ありがとう、ライキ!」
リーネは気持ちよさそうに目を細めると、元気を取り戻して花のように微笑んだ。
ライキもホッとして微笑み返す。
リーネは安心したらお腹が空いてきたのか、フィッシュアンドチップスを口にして、
「本当、美味しい♡」
と笑った。
だがすぐに別の問題に思い当たったようで、頬を染めながら戸惑いがちに口を開いた。
「・・・でも・・・ユデイとルウナをニールさんに会わせるためには、おじいちゃんをフォレストサイド村まで連れてきたときのように、二人とロープとかで繋がった状態で、ライキが・・・射精・・・しなきゃならないよね・・・?
それは大丈夫なの?」
ライキはわかってはいたけれど、なるべく目を背けていたかったその問題を、リーネにより心の奥から手繰り寄せられてしまい、みるみる真っ赤に顔を染めて蒸気を立ち昇らせた。
「・・・・・大丈夫なわけないだろ・・・・・。
でも、あれはユデイ本人がちゃんとニールさんから聞くべき話だと思ったし、フォレストサイドからエングリアまで馬車で往復一週間はかかるところを、俺の力を使えば、恥ずかしささえ目を瞑れば日帰りで実現出来るんだ。
ここは恥ずかしくても親友のために力を使うべきだと思う・・・。」
ライキはそう言って赤い顔のまま目を逸らした。
「うん・・・。
ライキはやっぱり優しいね・・・。
私、ライキのそういうところホント大好き・・・。」
リーネはそう頬を染めて囁くように言うと、そっと彼の肩にもたれかかった。
ライキは嬉しくなってそのままはにかみ頬をかいた。
「あっ・・・でもちょっと待って!
さっき言ってた使役魔獣をフォレストサイドに帰ったらすぐに作って、みんなでそれに乗ってエングリアに向かえば良いんじゃない?
ライキの力で向かうよりは時間がかかるけど、それなら日帰りも可能だよね?」
リーネがパッと顔を上げて思いつきを口にした。
「いや、四人も人が乗れるようなでかい魔獣、そういないぞ?
しかもそれを使役するとなると、使役する側も相当強くなければならない。
そんなことが可能な狩人なんて、この世で父さんくらいだろ・・・。」
「あっ・・・そうなんだ・・・。」
残念・・・とため息をつくリーネ。
「つか、「大丈夫なの?」ってリーネ、他人事じゃないぞ・・・?
今度こそリーネにもあの恥ずかしさを共有して貰うからな・・・。」
「えっ・・・そんなの絶対に嫌!
イクのはライキだけでいいわけだし、私の変なところを見せたりしたら、ルウナに引かれちゃうかもしれないじゃない・・・!」
リーネは真っ赤になって汗を飛ばして頭を振った。
「そんなの俺だって・・・つか、男同士のほうがその辺はもっとシビアだぞ?
例外もあるだろうけど、基本男ってのは同性の盛ってるところとか見たくもない生き物だし・・・」
「えっ、そうなの?」
リーネが不思議そうに小首を傾げて尋ねた。
「まぁな。
例えばユデイがルウナにフェラしてもらってるとする。
それのユデイだけを見せられたりしたら、
”うわっ・・・気まず・・・。
ユデイに悪いけど、顔、気持ち悪っ・・・”
って、親友なのに嫌悪感を抱いてしまいかねない・・・。
リーネだって、ユデイのそんなところ、あまり見たくないだろ?」
「・・・う、うん・・・そうだね・・・。」
リーネが冷や汗をかいて苦笑いを浮かべた。
ライキはそうだろうと頷く。
その頃フォレストサイド村では店番をしながらユデイがくしゃみを連発していたのだが、彼らは知る由もなかった。
「それが二人セットなら、行為に充てられてムラムラはするだろうけど、ユデイだけに意識が向かないぶん、ユデイのオトコの部分に対する嫌悪感はかなり緩和される。
リーネならどうだ?
ルウナがユデイとエロいことをしてるのを見たからって、ルウナに引いたりするか?」
「・・・ううん・・・。
ドキドキしちゃうとは思うけど、嫌いになったりしない・・・。
むしろルウナに共感しちゃうかも・・・?」
「だろ?
それはルウナだって同じだろう。
女は同性の性に対して男よりもずっと寛容なんだよ。」
確かに・・・とリーネは頷いた。
「つか、俺一人だけイクところを見せたりしたら、ユデイからの友情も失いかねないし、ルウナからも気持ち悪がられて避けられかねない・・・。
マジで最悪だ・・・。
だからそこはフェアで頼むよ。
まぁ、ユデイは俺の力の発動条件を知ってる訳だから、見ないようにしてくれるかもしれないし・・・。
その辺は、その時のユデイたちの判断に委ねるしかないだろ。」
「・・・・・。」
リーネは自分の感じる様を親友とそのつがいに知られる(かもしれない)ことを承諾したわけではないが、ライキの言い分に納得が出来たので何も言い返せなってしまい、真っ赤になって口元を波打たせてただ俯いた。
「さてと、昼飯も食ったことだし、そろそろ冒険者ギルドに向かおうか?」
ライキが立ち上がり、空になったフィッシュアンドチップスの紙の箱を潰してゴミ箱に捨てながら言った。
「あ、うん!
でも・・・ライキがヴィセルテさんから聞いたナイト家の人・・・冒険者ギルドにいるかもしれないよね・・・?
ちょっと怖いな・・・。」
リーネが不安気に表情を曇らせた。
「・・・それらしい奴がいてもいなくても、リーネは俺の傍にいろ。
大丈夫・・・俺が守るから。」
ライキはリーネの手を取り、彼女の空色の瞳をまっすぐに見つめながら穏やかな口調で、だが真剣な表情で言った。
「うん・・・。
ありがとう、ライキ・・・。」
リーネは頬を染めてライキの腕にギュッと掴まった。
そして、二人は冒険者ギルドのある通りに向かって歩みを進めるのだった──。
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