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推し活満喫編

黒髪の少年② グラナダ視点

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少年を追わせた兵たちを前に私は理不尽な怒りをぶつけていた。

「捕まえられなかっただと?訓練された兵士が寄ってたかって只人の少年一人捕まえられなかったと申すか!」
「ははっ!面目次第もございません。」
「し、しかしですね、あの少年は短距離とはいえ転移の魔法持ちでして寸でのところで必ずその場から消えるのです」
「少年を捕まえるには抗魔法アンチマジックスキルをもつ魔術師を同行させねば不可能かと」


報告を受ける私のもとに大隊長のグレゴリーが血相を変えてかけ寄ってきた。

「転移魔法ですと?それは、それは一体どなたなのですか?そのものは私の、私の救世主殿に違いありませぬ。」

救世主?どういうことだ。私は続きを促す。

「はっ!私が巨大な獅子ウガルムの凶行に命を落とさんとしたその時、私の背後に誰かが現れ一瞬で安全な場所に転移したのです。ですが振り返ったその場には誰の姿も無く、そして奴の爪撃 に吹き飛ばされた右腕の断面にくうから湧き出た白金に輝く溶液が降りかかると…おお…腕が…欠損した腕が、もとに戻ったのです!何もなかったかのように!衣類までもがすべて!」

その時を思い出し感極まったのか徐々に近づいてくる。近い、近いぞ!
そのうえ興奮のあまり私の胸倉をつかんでいることに気づいているのか?こいつは!

しかし…欠損部位の再生だと…酸に溶け皮下がむき出しになった私の顔を再生してみせたあの光と同様のものか…
その時冷静さを取り戻したグレゴリーが聞き捨てならないことを言い出した。

「黒髪の少年ですか…ふむ…巡回に向かう道中でみかけたやもしれませぬ。」

「何⁉いつのことだ?何をみたのだ?」

「騎馬隊の巡回路と町へとのびる道が交わるT路の角に時々黒髪の少年が」
「その少年はそこで何をしておるのだ」
「私もちらりとしか見えてはおりませぬが…木と木の間に身を隠し…ただ見ているだけではないかと」
「ふむ…」
木の陰から騎馬隊を見ていただと?なにかの訴えでもあるのか?騎馬隊への志願か?




「……なぜだか不思議とあの少年は奥方様を思い起こさせまする…いつも演習場や兵舎の壁にしがみつきながら閣下を見つめていた奥方様と、木々の間から覗き見るようにその幹にしがみついている少年の姿が妙に重なって…似ても似つかぬ容姿なのにおかしなものですな。ハハハ」


笑い事ではないわーーーーーーーーー!!

「馬鹿者っ!なぜそれを早く言わぬ!アデルを捜索させていることはお前も知っていただろうが!!」
「えっ、いやしかし勝手にそう思っただけのことですし、奥方様とは無関係かと」
「関係あるか無いかは私が判断する!皆もよく聞け!アデルに関係するかもしれぬことはすべてどんなことも逐一私に聞かせるのだ!いいかっグレゴリー、その件は後ほど詳しく報告せよ!この災害の後処理が済み次第…その少年を探しに行く!町にいるなら見つかるのはすぐであろう。総員よいな!」




アデル待っていろ。今度こそ、今度こそお前を見つけ出し…もう二度と離しはしない!





  
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